“EDGEST”をシャープの記号に――「AQUOS ZETA SH-04F」「AQUOS PAD SH-06F」で目指したもの開発陣に聞くシャープ夏モデル(ドコモ編)(1/3 ページ)

» 2014年05月23日 19時54分 公開
[房野麻子ITmedia]

 シャープはドコモ向けの2014年夏モデルとして、スマートフォンのフラッグシップ機「AQUOS ZETA SH-04F」、7インチタブレット「AQUOS PAD SH-06F」、フィーチャーフォンの「SH-07F」、さらに「Disney Mobile on docomo SH-05F」を投入する。今回、AQUOS ZETAを中心に、ラインアップ全体と各機種のコンセプト、デザインについて開発陣に話を聞いた。

「EDGEST」でブランドイメージの向上を狙う

photo 第一商品企画部 部長 高木健次氏

 今夏のドコモ向けシャープ端末4機種のうち、スマートフォンのAQUOS ZETAと7インチタブレットAQUOS PADの2機種が、3辺狭額縁の「EDGEST」スタイルを採用している。通信システム事業本部 グローバル商品企画センター 第一商品企画部部長の高木氏は、「スクリーンの中から外、外から中への働きかけによって、ユーザーに新しい体験をしてもらうことがEDGESTの世界観です。枠を広げるだけではなく、可能性を広げるという意味もあります」とEDGESTの世界観を説明する。また、店頭に板状のスマートフォンが並ぶ中、ひと目みて分かる違いや新しさが必要だとし、「3辺狭額縁をシャープの記号として押し出し、ブランドイメージの向上を狙います」(高木氏)と語った。

 なお、スマートフォンのブランドがAQUOS PHONEから、液晶テレビなどと同じ「AQUOS」に統一されたことについては、「PHONEの枠からはみだして、スクリーンを通じてユーザーさんに新しい体験をしていただいていこうという思い」を表しているという。

photophoto 「AQUOS ZETA SH-04F」

「AQUOS ZETA SH-04F」の3つのポイント

photo 通信システム事業本部 グローバル商品企画センター 第一商品企画部 主事 三枝氏

 フラッグシップモデル「AQUOS ZETA SH-04F」では「ディスプレイ、カメラ、グリップマジックの3つが重要です」と、通信システム事業本部 グローバル商品企画センター 第一商品企画部 主事の三枝氏は言う。

 ディスプレイは、ドコモの2014年夏スマホでは最大の5.4型で、省電力に優れるIGZO液晶を採用。改良したバックライト「PureLED」を新たに搭載し、鮮やかさが増した。特に赤色が一段と鮮やかになり、旧モデルと並べると違いがはっきり分かる。IGZO液晶は若干白っぽく見えるという意見があるが、今回はLEDバックライトを改良して対処した。

 「IGZOは省電力をアピールしてきましたが、鮮やかさも追求し、もっと色味を出したいと思っていました。今回、黄色の蛍光体をばらし、赤と緑の独立の蛍光体を使うことで三原色をきちんと正確に出すことができるようになり、赤を中心に色味が強くなりました。これは動画も静止画にも対応します」(三枝氏)

photo 従来機種よりも赤を鮮やかに表現できるようになった(画像はシャープのWebサイトから)

 もちろんIGZOは省電力が魅力。ドコモが測定した実使用時間はSH-01Fが約98.9時間だが、SH-04Fでは約101.7時間に向上し、3日……いや4日以上持つ計算だ。また、静止画だけでなく、動画もピンチイン/ピンチアウトが可能になっている。

 カメラでは、人も夜景もきれいに撮れる「NightCatch II」や「リアルタイムHDR」を搭載し、失敗しないカメラを目指した。

 「背景がきれいに撮れるNightCatchが、人物を入れ込んだフラッシュ撮影でもきれいに撮れるようになりました。人物はフラッシュをたいて、背景はフラッシュオフで撮影した画像を合成して、夜景の背景と人物の両方をきれいに撮れます」(三枝氏)

 逆光時の撮影で便利なHDRは、1回の撮影で処理できるリアルタイムHDRに進化。通常、HDRは2枚の写真を撮って合成しているが、リアルタイムHDRでは1枚の中で露出を変えていて撮ることができるようになっている。これによって連写も可能になった。

 「今までは2枚の合成だったので、動いている被写体だと合成ブレがあったのですが、今回は1枚の写真の中で差を見てHDR処理をしているのでズレません。シャッターの長押しで連写もできます」(三枝氏)

 また今回、新たな試みとして、被写体に応じて適切な構図をアドバイスする「フレーミングアドバイザー」を導入した。特に料理と人物についてはオートでガイドが表示され、それに合わせればいいようになっている。

 「一般的にですが、料理は皿が画面から切れるくらい近づいた方がおいしそうに見えるので、そのような構図の提案になっています」(三枝氏)

photo 最適な構図で取れるよう教えてくれる「フレーミングアドバイザー」。緑の枠に合わせると、料理をおいしそうに撮れる

 オートだけでなく、四角い皿に盛られた料理や、定食など複数の料理を撮る際に適したマニュアルモードも用意。「共感を得られるような写真を撮って、会話が深まるといいなという思い」があって搭載したという。写真はSNSに投稿することも多く、コミュニケーションのきっかけになる。投稿する写真に期待通りの反応が得られていないなら、参考にするといいかもしれない。

 SH-04Fには、EDGESTスタイルを意識したカメラ機能もいくつか搭載された。360度のパノラマ写真が撮れる「全天球撮影(Photo Sphere)」はGoogleのカメラアプリだが、標準の「SHカメラ」のメニューから起動でき、「アルバム」アプリで見られる。

 「全天球撮影はEDGESTの世界観にマッチするということで、Googleさんと協議して、SHカメラからの導線を入れさせてもらいました。まるで、その場にいてファインダーから風景を見ているような感覚で見ていただけます」(三枝氏)

 ソフトバンク向け2013年冬モデルの「AQUOS PHONE Xx 302SH」に搭載された「翻訳ファインダー」と、新しい検索アプリ「検索ファインダー」もEDGESTらしい機能としてSH-04Fに搭載された。

 「検索ファインダーは、撮った文字、かざした文字を指でなぞると、OCRで文字を認識して検索し、検索結果がAR(拡張現実)でに見られるというものです。画面を文字から外すと結果は消えますが、ファインダー画面右上のアイコンをタップするとまた表示されて、検索候補にタッチするとWebサイトにジャンプします」(三枝氏)

 SHカメラアプリから「SH SHOW」にアクセスし、カメラ活用アプリをプラグインという形で追加できるのも特徴の1つだ。画質や機能に加え、「楽しむ機能、面白系にチャレンジしているところもアピールしたい」という。

「グリップマジック」が進化

 SH-04Fの3つ目のポイントが「グリップマジック」だ。グリップマジックは2013年冬モデルの「AQUOS PHONE ZETA SH-01F」から搭載された機能で、端末を持つと画面が点灯し、電話がかかってきたときに持つと着信音が小さくなるといった機能があったが、今回は端末を離したときに働く機能も搭載された。

 持ったときのアクションでは、通知があるときにバイブで知らせる「バイブお知らせ」が追加された。ポケットに入れたままでも、グリップセンサーに触れると着信や未読メールがある場合に振動で分かる。また、電話の着信時に、端末を持つまで名前を非表示にする「着信時簡易シークレット」も搭載。端末を机の上に置いているときには名前が表示されず、持って初めて分かる。さらに、音楽などのメディアを利用していて、机に置いたときに音量が自動的に設定した音まで上がるといいう「メディア視聴中音量アップ」も利用できる。

 「前回は、端末を持ったことをきっかけにする動作を訴求していましたが、今回は離すということも検知している点が新しい部分です。グリップセンサーを使ったUIは、ユーザー調査をした結果、さまざまなアイデアが出てきました。さまざまなアクションを便利に使っていただけるのではと思って進化させました」(三枝氏)

 ユーザーからの意見をもとに、細かなところも調整されている。例えば、前モデルでは、電源キーを押して画面を消灯させても、端末を持ち替えるとまた点灯してしまうことがあった。今回は持ち替えても画面が点灯しない。

 「電源キーを押した後、2秒間程度はセンサーに触れても画面は点灯しません。その間はグリップセンサーを無効にしています。例えば、端末を持ち替えてポケットに入れるような操作をしても画面がつきません」(三枝氏)

片手操作をアシストする「ワンハンドアシスト」

 大画面は映像を見るときにはいいのだが、画面操作は指が届きにくいところがある。それに対処するために、画面表示を縮小して左右に寄せ、ストレスなく操作できるようにした機能が「ワンハンドアシスト」だ。

 ロック解除画面やテレビ画面を除く画面で設定でき、ワンハンドアシストを利用すると、画面サイズは4インチ程度に固定される。ディスプレイを消灯するとワンハンドアシストは解除されるが、「電車で手がふさがっているときとか、ちょっとしたときに使ってもらいたい機能」(三枝氏)だ。

photophoto iPhone 5sなどと同様の4インチほどに画面を縮小できる「ワンハンドアシスト」

 また、通知パネルでWi-Fiやマナーモードなどの機能をオン/オフできるボタンは、これまで並び替えができるだけだったが、今回からは追加や削除もできるようになった。初心者にも使いやすくシンプルメニューにも対応。表示される機能が必要最低限に絞られ、分かりやすくなる。

 「文字入力や画面スクロールのチューニングも従来から継続しています。5.4インチと大画面で、大画面を求める方にはもちろん買っていただきたいですが、大画面はちょっと、と思っている方にも、ワンハンドアシストやグリップマジックを活用すると快適に使えます。映像を見るときは大画面をそのまま、でも操作しやすいという形をアピールしたいと思っています」(三枝氏)

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