NTTドコモは2月5日、3月に予定されている「LTE-Advanced」の導入を前に、横須賀のR&Dセンターにてメディア向けの技術説明会を開催した。
LTE-Advancedは、現在ドコモが「Xi」のサービス名で展開しているLTEをさらに高速化して提供する次世代の通信規格。現在のLTEでは下り最大150Mbpsとなっている通信速度を、LTE-Advancedでは下り最大225Mbps超まで高速化する予定だ。
LTE-Advancedの実現には複数の要素技術が必要で、現在KDDIが先行して導入している「キャリアアグリゲーション」(CA)もそのひとつ。CAでは異なる周波数帯を同時に利用することで、広い帯域幅を確保し高速化を実現している。ドコモではこのCAに加えて、通常の基地局(マクロセル)のエリア内に、より小さな基地局(スモールセル)を設置し、容量を補完して混雑の緩和を図る「ヘテロジニアスネットワーク/スモールセル」と呼ばれる仕組みを導入する。さらにこれらを、ドコモが2003年から運用している「C-RAN」と呼ばれる基地局の集中制御が可能な設計方法(アーキテクチャ)と組み合わせることで、LTE-Advancedを効果的に展開できる環境を構築中だ。
ドコモではこの環境を「高度化C-RAN」と呼び、技術開発と実証実験を続けてきたが、このほど屋外の商用環境で合計35MHz幅の帯域を用いて、実測値が下り最大240Mbpsに達するデータ通信に成功。技術説明会ではこの実証実験と同環境でのデモンストレーションも披露された。
冒頭、挨拶に立ったNTTドコモ取締役常務執行役員 R&Dイノベーション本部長の尾上誠蔵氏は、「CAもスモールセルも目新しい技術ではないが、それらを組み合わせたところに、新しいフィーチャーが生まれる」とスピーチ。LTE-Advancedの先にある「5G」を見据え、複数のアンテナを使ってスループットを向上させるMIMOの進化版「Massive MIMO」と高度化C-RANを組み合わせることで、さらなる高速化を目指す構想も明らかにされた。
当日はあいにくの雨のため、屋外に設置されたアンテナの直下にテントを設置し、その下にデモ用のモバイルWi-Fiルーターを置いてスループットを計測。テントという障害物に遮られたことで、ベストな環境でのデモは適わなかったが、それでもMAXで235Mbps強、平均220Mbps以上という安定した高速スループットを確認できた。さらにマクロセルとスモールセルを組み合わせたCAを行うことで、スモールセルから次のスモールセルへと移り変わるときに起こる、ハンドオーバー(電波の切り替え)の影響が少ないことを示すデモも披露された。
技術説明を担当したNTTドコモ 無線アクセス開発部長の前原昭宏氏によれば、「高度化C-RANではマクロセルもスモールセルも同時に制御できるため、マクロセルとスモールセルを柔軟に組み合わせたCAが可能になる」とのこと。スモールセルが切り替わる間も、マクロセルとは常につながっているため、ハンドオーバーによる影響を受けにくく、移動しながらでもスムーズな通信ができるという。
ドコモでは3月以降、まず通信が集中する都市部から高度化C-RANによるLTE-Advancedを導入する計画。CAは1.7GHz帯と800MHz帯(東名阪)または1.5GHz帯と2GHz帯の組み合わせでそれぞれ30MHz幅、受信時最大225Mbpsの速度で提供される。
具体的な基地局数については明らかにされなかったっが、すでに発表済みのCategory 6対応モバイルWi-Fiルーター「Wi-Fi STATION HW-02G」と「Wi-Fi STATION L-01G」で利用できるという。ドコモでは今後700MHz帯や、2014年末に新たに割り当てられた3.5GHz帯も積極的に活用していく考えで、「2015年末からは3.5GHz帯を使ってさらなる高速化に取り組む」(尾上氏)という計画も披露された。
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