“ガラケー”ではなく“ガラホ”もちょっと違う、新しい携帯電話です――シャープが「AQUOS K」を開発した理由開発陣に聞く(3/3 ページ)

» 2015年02月24日 13時25分 公開
[房野麻子ITmedia]
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「温故知新」でフィーチャーフォンらしさを残しつつ進化を感じさせる

photo シャープの西郷氏

―― ケータイならではの機能であえて残したものなどはありますか。例えば「ケータイShoin」が復活したり、なんてことは。

西郷氏 日本語入力は、スマホでiWnnを使わせていただいていますが、変換候補数では雲泥の差があります。新しい経験を提供するという開発背景からも、まずは最新だと思っているものを提供しようと考えました。昔、気に入って使っていたから欲しいという要望は、当然出てくるかとは思います。

河内氏 有名なIMEもありますから、我々もiWnnを売りにはしていません。これはスマホを含めた話ですが、文字入力については、もう一度こだわろうという話は出ています。この端末自体そういうところがありますが、温故知新というか、古いものを今の技術できちんと作り直すという取り組みはいいことだと思っています。名前だけでは意味がありませんが、思想を受け継いでいくことはいいことだと。

 先日の説明会では「継承と創造」というキーワードを説明しましたが、継承していいものはいい。例えば、この折りたたみスタイルは合理的ですよね。操作するところと表示するところが分かれていて、耳に当てると電話しやすい。NECさんが開発されたものなので、我々が言うのは口幅ったいですが、人間工学的にも素晴らしいです。形は完成されていると思いますし、中身を最新のものにしていけば、非常に快適に使える。

 大上段に構えて、次の時代のフィーチャーフォンを作るんだ、だからデザインも変えなきゃいけないんだ、どんなギミックをいれようか、みたいな話ではないんです。いいものは残して、困るところは解決し、やったことがないことを体験してもらう。テザリングはやったことがない部類だと思いますし、タブレットをお持ちの方に向けた新しい機能を入れています。LINEにしても、フィーチャーフォンでは、なんとかトークができる程度だと思います。LINEのパフォーマンスの1〜2割程度しか使っていないので、そういう意味で、AQUOS KのLINEは新しい体験といえるかもしれません。

バッテリー持ちに関するさまざまな工夫

―― バッテリーの持ちはいかがでしょうか。スマホより長いという声も聞いていますが。

西郷氏 時刻や位置情報、LTEの電波を取るといったものに関しては、システム上、どうしても通信が必要です。プリインストールアプリについては通信を制御しています。また、AQUOS Kは終話キーを押すことで、すべてアプリを閉じます。アプリを閉じてしまえば、通信はシステムが使うだけなんです。

―― LINEについては、どう対処しているのでしょうか。

西郷氏 今回、LINEはプリインアプリという扱いにはせずにダウンローダーを用意しています。インストールが完了した時点で、LINEでモバイルデータ通信を使う/使わない、という選択をしていただきます。

photophoto AQUOS Kには「データ通信制限」という設定メニューがあり、アプリ単位でモバイルデータ通信を使う/使わないかを選択することができる(写真=左)。アプリによってはWi-Fi環境化だけで使うように設定でき、通信量を抑えてAQUOS Kを運用できる。なお、Wi-Fiのみ使うように設定している場合、Wi-Fiの電波が切れたときには、モバイル通信を開始するかどうかを選択するポップアップが出現する。データ通信制限の「通知設定」では、それらの通知を表示する/しないを設定することもできる(写真=右)。通知するように設定しておけば、知らぬ間に通信が切り替わる心配もない

西郷氏 Googleアカウントを設定できないことはマイナス面だと捉えられていますが、バッテリーの持ちという面に限っていえばプラスです。ただ、Wi-FiテザリングやLINEをどんどん使えば、当然、それなりにバッテリーを消費します。

―― 料金プランは少し気になりますね。

西郷氏 配慮はいただいていると思います。4年間で1000円の割引きになっていますので、これまでダブル定額などでパケット通信料が上限まで行っていた人は安くなる計算です。通話もし放題ですし、裏ワザ的にシニア向けのプランを使っていただくこともできますし。

―― データ通信制限機能をうまく使えば、料金を節約しながら使えるかもしれませんね。

Androidにのっとりながらフィーチャーフォンらしい使い勝手に

―― 今回、一番苦労された部分はどういうところでしょうか。

西郷氏 Androidらしさを消すというところです。発表会では、よくこれだけAndroidの作法を消したね、と言っていただきました。

河内氏 それと、“スマホ脳”で物事を考えないようにするということですね。

―― 我々もここ数年、スマホしか触っていないので、ケータイの使い心地や求められている機能を忘れているところがありますね。Googleさんのレギュレーションを順守しながら、このUIを実現するのは大変だったと思いますが。

西郷氏 いわゆる「CDD(Compatibility Definition Document※Googleが定めた基準)」という取り決めが守られているかどうかの検証は通っています。例えば通知バーも、待受画面で十字キーの上を押すとフォーカスが当たって、通知画面を表示できます。Googleの検索窓も配置していますし、ダイヤルキー左下のキーで履歴も確認できます。これはフィーチャーフォンらしく、マルチアプリキーの動きに似せるような工夫をしています。

―― ちゃんとAndroidにのっとっているんですね。そもそもタッチパネルがないことは大丈夫だったんですか。

西郷氏 ご相談して、という感じですね。タッチクルーザーEXで代用したという形です。

河内氏 例えばLINEも、基本的にはタッチパネルを前提としたサービスです。タッチパネルがないことに対する許容度はさまざまです。キー操作だけでブラウザを操作するのはやっぱり難しくて、タッチパネル前提のサイトなど相手の作りによってはダメなこともあります。そういう意味で、タッチクルーザーEXはいろんな視点で解決策になっているんです。

LINEに対応できていなかったら、AQUOS Kを買ったユーザーの方は、フィーチャーフォン用のサイトにも行けなくて、LINEを使えないことになるんですね。フィーチャーフォン用のサイトを使ってもらったらいいのでは、という単純な判断基準もあったと思うんですが、積極的にLINEアプリを使う上で、タッチクルーザーEXは非常に効果がある。タッチパネル以上とはいいませんが、代用として使えるという判断をしました。

―― 新世代ケータイ第1弾ということで、折りたたみを採用されていますが、スイーベルとかフルフェイスとか、スライドとか、いろんな形状がケータイ時代にはありました。新世代ケータイでもバリエーションは出てくるでしょうか。

西郷氏 市場の声をいただいてからになろうかと思います。ターゲットユーザーがぶれていないかという検証も必要です。

河内氏 我々開発側は市場さえ受け入れてくれれば、そういうものをやっていきたい。実際、サイクロイドをやりたいと本当に思っています。受け入れられれば、ですが。昔はギミックも含めて、ハードとして楽しいところがありました。ハードとソフトの一体感が取れている部分があって、よかった、ワクワクした、という意見を今でも聞きます。

 スマホのデザインはもちろん気にされますが、今はどちらかというと中身が注目されているんですね。この中で何ができるか、ということに注目が集まっている。ケータイ時代は、持ち感や折りたたみを開けたときの音など、モノとしての楽しさ、新しさもあったような気がします。そういう方向にユーザーの目が行ってほしいと思っています。

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