ワイヤレスジャパン2015の2日目にあたる5月28日に、インターネットイニシアティブ(以下、IIJ)が、個人向けMVNO(仮想移動体通信事業)サービスに関する講演を開催した。
本稿では、IIJ ネットワーク本部 技術企画室 担当課長 佐々木太志氏が行った講演「IIJmioのこの1年 〜 個人向けMVNOサービス試行錯誤」の模様をお伝えする。
IIJは、2012年に「IIJmio高速モバイル/D サービス」(以下、IIJmio)という名称で、ドコモのLTE網を利用した個人向けMVNOデータ通信サービスを開始した。2014年3月からは、「音声通話機能付きSIMカード」の提供を開始した。その名の通り、090/080(と、最近は070)の電話番号で、音声通話もできるプランだ。
親しみやすさに欠ける、という理由で「みおふぉん」という愛称が付けられた音声通話機能付きSIMカードだが、この約款上の名称には、データ通信専用サービスから開始したIIJmioの“歴史”が反映されている。みおふぉんは、IIJmioにとって「大事な節目となるサービス」(佐々木氏)なのだ。
みおふぉんは、当初月額1900円(税抜、以下同)からスタートする料金でサービスを開始したが、サービス開始から約4カ月後の2014年7月には、月額1600円に値下げされている。大手通信事業者(MNO)の同等プラン(通話定額放題プランと、2Gバイトのデータプラン)が6500円程度することと比較すると、その安さは際立ったものとなる。その秘密について、佐々木氏は、提供機能を絞り込んでいること、付加価値相当のもの(ポイントプログラム、決済サービスなど)が入っていないこと、端末は別途用意してもらうこと、基本的にインターネット通販で契約し、可能な限りインターネット上でサポートを行う「通販型モデル」を取っていることを挙げた。
しかし、IIJmioにとって大事な節目となった「みおふぉん」の提供は、販売面で、新たな問題をもたらした。音声通話プランでは、携帯電話番号ポータビリティ(MNP)で他の事業者からの転入による新規契約が可能である。従来の通販型モデルでMNP転入を受け付けると、最短でも1日、長いと3日以上、携帯電話の通話や通信ができなくなってしまうのだ。そこで、即時転入を受け付ける「BIC SIMカウンター」を、ビックカメラグループの店舗に順次設置している。
また、MNOでは用意されている通話定額が「みおふぉん」にはなく、通話を多用するユーザーにとってはむしろ“不安”になってしまう可能性がある。そこで、中継電話サービス「みおふぉんダイアル」を用意し、通話料金を抑えられるようにした。
このような継続したサービスの改善が奏功し、みおふぉんを含めたIIJmioの2014年度末の契約数は43万回線と、順調に推移している。特に、バンドルクーポン(高速通信可能な容量)の増量と、SIMロックフリー版iPhone 6が発売された2014年度第2四半期からは勢いが増しているという。
2015年中に100万契約の達成を目指すIIJmioには、解決すべき課題もまだあると、佐々木氏は指摘する。アーリーアダプター層から、高齢者、女性、外国人とユーザーの裾野が広がることによって、新たなニーズが発生する。それに対して適切なソリューションで応えていく必要があるのだ。
そこで、IIJが大切にしている取り組みが「カスタマー・エクスペリエンス・マネジメント(CEM)」だ。これは、ユーザーが期待する水準を超える交流・対話・サービスを通して、満足度とブランドへの信頼度を高める活動のことで、ユーザーのインフルエンサー(商品を積極的に勧める人)化と、サービスの解約率低下を最終的な目標としている。
CEMの取り組みは、対話・交流・商品の3つの軸で行っている。その中でも、「交流」は、特に積極的に行っている。従来型のIIJのサポートセンターだけではなく、Twitterの公式アカウント(@iijmio)や、東京・大阪で開催している「IIJmio meeting」を通して、ユーザーの声をしっかり拾い、適切に回答したり、サービスに反映したりすることでIIJmioのブランド力向上につなげている。
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