インタビュー
» 2015年06月26日 20時00分 公開

ファーストステップと人柱は違う――“普通”のWindows Phone「MADOSMA」でこだわった品質SIMロックフリースマホメーカーに聞く(2/2 ページ)

[石野純也,ITmedia]
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Windows 10 Mobileを待たずに発売した理由

―― なるほど。アップグレードを明言されていないのは、そこを慎重に見ているからということですね。ユーザーに対しても、その方が誠実だと思います。

平井氏 Insider Previewのビルドも毎週毎週更新されていて、あるビルドで使えたものが、次のビルドで使えないということはザラにあります。1つのビルドを複数台のデバイスで動かしたとき、挙動が違うこともあります。とりあえずやってみました、という覚悟であれば、そういうやり方もありますが、(マウスコンピューターは)Windows Phoneは続けたいと思っているので、ネガティブなイメージが、このモデル(MADOSMA)やWindows Phoneについてしまうのは避けたかった。「10アップグレード対応」と言えば、ポジティブ(な評価)になりますが、その際にもし何かしらの制限がついたら、落ち幅もすごいですから。

―― COMPUTEXではInsider Previewがインストールされた端末を複数触ってみましたが、まだレスポンスも厳しかったですね。突然OSそのものが落ちて再起動したり……。特に、Snapdragon 200を使っているものは、大丈夫かなと思いました。

平井氏 Lumiaでもまだそんな状態ですね。Windows 10 MobileのプリインストールをMicrosoftさん以外がやる場合はSnapdragon 200が選択肢になりますが、それを使う手をあきらめたのも、その辺の事情があります。

 正直なところ、Windows Phone 8.1のままやるべきかどうかは、迷いました。OS自体は言われているほど使えないものではありませんが、まだ頑張らなければいけないことは山ほどあります。細かい作り込みがAndroidやiOSほどできているかといえば、そうではありません。

 ただ、現状では、ちょっとアプリのデモをしたいときでも、(日本で正規に使えるWindows Phoneが)ありません。何もない状態がこのまま続くのはよくないですし、Windows Phone 8.1で使いたいという方も一定数います。端的に言うと、弊社はPCメーカーなのでWindows Phone単体で頑張りましょうという話ではありません。損益分岐にも乗っていない状態ですが、一緒にやっていただける方がたくさんいて、アプリを作ってくださりそうな方もいます。だったらやってしまおうと、Windows Phone 8.1のまま出すことにしました。

 とはいえ、リリースに当たっては譲れないところもあり、ローカライズにはだいぶハマってしまいました。

“初物”ゆえに避けられない日本向けローカライズ

―― どの辺のローカライズでしょうか。現状でもマップは相当あれですが……(笑)。

平井氏 地図に関して、解決方法は言えませんが、今調整をしているところです。ほかには、OS標準のアプリがあります。ニュースや天気などですが、あの辺もローカライズが完ぺきではなかったので、1つ1つ直してもらいました。

 例えば、先週、天気アプリがアップデートされたのはご覧になりましたか?

―― はい。買ってすぐに、アップデートがかかりました。

平井氏 実はあれ(アップデート)で、フォントが直っています。それまでは、表示できているが正しくない。まずは、正しくしなければいけないと認識してもらなければいけなかったのです。あの状態はバグであって、仕様だと思われてしまうと直らないですからね。ここはMicrosoftさんにバグだと認めていただき、修正の優先度のレベルを変えてもらいました。

 もう1つは、ストアで更新できないアプリがあります。具体的にはInternet Explorerですが、直前のビルドまでUnicodeでフォント処理におかしいところが残っていました。それが直ったのが、先週のアップデートです。そのため、Windows Phone 8.1 Update 2では、ビルドナンバーが実はLumiaより新しくなっています(笑)。

photo MADOSMAは発売直後にWindows Phone 8.1 Update 2にアップデートされた

Microsoftとの連携とMADOSMAの作り込み

―― お話を聞いていると、Microsoftさんとも、密にやり取りしている様子がうかがえます。

平井氏 日本マイクロソフトさんに加えて、中国、台湾の方々にはものすごく協力していただいています。OEMライセンスをいただき、設計、製造をお願いするところを見つけてだけでは、ここまではできません。マイクロソフトさんの中にも「日本でWindows Phoneを!」という方はいます。弊社の場合、PCのアカウントの方々がいて、台湾や中国とはタブレットをやり始めてリレーション(関係)が深くなりました。そのチームにご協力いただき、作り込みが進んだところがあります。

 それでも、今回のUpdate 2が作れたのは、本当にビックリしました。こういった改善は、今後も続けていきます。

―― ということは、小まめなアップデートも期待できそうですね。キャリア端末はもちろんですが、SIMロックフリー端末もアップデートが放置される傾向にあるので……。

平井氏 週次でのアップデートはあまり聞かないので、2週にまとめた方がいいのか、1カ月に1回の方がいいのか迷っているところです。

―― 個人的には週1回でも、ワクワク感があっていいのですが(笑)。

平井氏 今はそういう方もたくさんいますね(笑)。ちょっと心配しているのが容量で、アップグレードを重ねていくと、容量を消費してしまいます。

 容量の話でいうと、言語もどうしようか迷いました。今は複数の中から選べるようにしているのですが、これを日本語、英語、中国語ぐらいに削れば、数100Mバイトの空きが出ます。アップデートでそうしようかと思っていたのですが、リリース後にTwitterを拝見していると、「iPhone以外でこんなにいろいろな言語対応をしているのは珍しい」というものを見つけてしまい、これは消せないな、と(笑)。

―― 作り込みという点では、選べるAPNの数も多かったのは「さすが」と思いました。

平井氏 今回はPCのような形で、端末とSIMを別々に買う形で販売させていだきました。いいご提案は何社かからいただいていましたし、SIMと連動した販売でリーチできるところも、それによる利便性があることも分かっていました。とは言え、いったんは平たくやらせていただくことをコンセプトにしています。

 平たくとは言いましたが、さすがにMVNOのAPNを手入力するのはキツイだろうということで、いろいろなところのAPNは入れさせていただきました。OTA(On-The-Air:ネットワークを介したソフトウェア更新)で増やしていますし、今後も増やしていこうと思っています。

photophoto ソフトウェアの更新で、APN設定は順次増やす方針

―― 先ほど単体での収益は考えていないというお話がありましたが、それは今後も変わらないのでしょうか。続けていった際に後継機できちんと利益は出すという方針でしょうか。

平井氏 そうなればいいなとは思っていますが、基本的に弊社の収益の基礎はPCです。連動してPCが売れることで、そこに貢献できればという考えですね。このまま赤字が続けば厳しいところはありますが、トントンになればいい。社長からも、少なくとも何年かは続けるとコミットをいただいています。とは言っても、赤字の垂れ流しはダメなので、そこはバランスですね。

 ある程度の台数を出せて、ある程度のユーザーに使っていただくことで、モーメンタム(勢い)ができます。これは弊社が仕掛けたことではありませんが、予約開始のリリースをした直後に「MapFan」がアプリを更新したり、「Opera Mini」の正式版が出たりしました。それがニュースになることも、今まではあまりなかったことです。こういった動きがある程度出てきただけでも、やってよかったと思っています。

 ただ、無理やり販売してくのは、やはり違うと思います。まだまだiPhone、Androidに比べるとローカライズやアプリで弱い部分があります。まずはファーストステップとして、セカンドフォン、サードフォンとして、OSの弱みを気にしない方にリーチさせていただければと考えています。ファーストフォンにしていただくのは、もうちょっと先ですね。また、Windows 10 Mobileになり、ユニバーサルアプリが動くようになると、今までにないソリューションが作れるようになります。

 ほかにも、PCを使い、「Bingマップ」で検索すると、その人が実際に歩き始めたときに「PCが使われていない」と判断して、フォン(電話)側にプッシュで通知が送られ、手動で更新しなくてもナビができる機能もあります。もちろん、Googleマップでも転送はできますが、これは転送の1つ上を行っています。意識しなくても、マシンがセンシングして自動で同期をする。そういう世界になればいいなと思っています。

まずは「2台持ち」から普及を促進

―― やはり、まずは2台目という狙いなんですね。個人的に使ってみた印象も同じで、メインのスマートフォンにするにはちょっと厳しいけど、これで生活しろと言われても無理ではない。そんな感想を持ちました。

平井氏 今の段階で、「これがプライマリーフォン(1台目の携帯電話)としてベストです」とは言うのは、さすがに厳しいと思っています。iPhoneがあり、Nexusがあり、Xperiaもあり、そういったものを差し替えて使ってくれというのは、無理があります。実際、そうやって使っている方もいて、涙が出るほどうれしかったのですが、プライマリーフォンはやはりプライマリーフォンです。

 将来的に、1人のユーザーが類似したたくさんのデバイスを持っているかというと、それは違いますが、現時点においては複数持っていた方が便利なこともあります。そういうところで、使ってみていただければと思います。

 でも、iPhoneですら最初はアプリが使えませんでした(App Storeが実装されたのは、iPhone 3Gのタイミング)。その後、3Gが出て3GS、4、4Sと徐々に完ぺきになっていきました。最初から5sや6があればいいのですが、やはり1年ごとに更新してきたからこそ、今があります。Windows Phoneもまずはファーストステップと捉えていただければと思います。ただし、ファーストステップと“人柱”は違いますから、そこは頑張らせていただきました。

―― 逆に、Windows Phoneならではのいい部分もありますからね。

平井氏 Windows Phone 7の時代に比べると、見違えるようによくなってますね。メモリは1Gバイトですが、それでこれだけ動いていることを考えると、OSとしては一番快適かもしれない。テスト用にメモリの動きをモニタリングするアプリがありますが、それで見ているとうまくバックグラウンドのアプリを制御しているようです。

―― 発売後の動きはいかがでしょうか。

平井氏 私が把握している限り、Lumiaを個人輸入しているような方や、アプリを開発している方だけだと、この数にはいかない。そのくらいの数が出ています。もしこれが全員開発者なら、マイクロソフトさんは泣いて喜ぶでしょうね(笑)。出してみて1つ分かったのは、IS12TのころにWindows Phoneを使っていて、Androidに移行された方が戻ってくることもあるようです。Windows Phoneはすでにご存じで、コンセプトは好きだったがどうしても端末が古くなってきて切り替えた。そういった方々も、戻ってきているようです。

―― 今後、他メーカーもWindows Phoneを出してきますが、その際の差別化はどうお考えでしょうか。

平井氏 弊社はPCメーカーであり、PCメーカーならではのサポート体制も構築しています。商流も含めてです。Microsoftさんとの関係もそうですし、製造委託するメーカーとの関係もそうです。20数年やってきたことが、違いになるのではないでしょうか。

 ですが、今は正直、競合している、競合していないと言っている状態ではありません。選択肢がないものを買っていただくのはなかなか難しい。iPhoneぐらいエコシステムができあがっていれば別ですが、ほかにもぜひ出てきてほしいと思います。Windows Phoneの未来が明るいと思っていただくことが、先ですね。お客様に明確な選択肢がある状態なら、逆に弊社らしいものも出せます。今のMADOSMAは、ハードウェアスペックを見ると弊社らしくないですからね(笑)。そういう意味でも、あえてど真ん中にしています。

―― そうなると、しばらくは比較的、直球に近い端末が続くのでしょうか。

平井氏 今のところのロードマップにも、まだニッチまでは載っていません。後継機も、まだど真ん中ですね。5インチより下のものか、逆に世界としては大きくなる方向に向かっているので、ファブレットライクなものか。そういうものも検討しています。

取材を終えて:日本市場でのWindows Phone普及に期待

 4年ぶりに登場したWindows Phoneだが、実際に使ってみると、平井氏が言うとおりまだまだ日本向けのカスタマイズが行き届いていない部分は多い。使えないわけではないが、AndroidやiOSに慣れていると、かゆいところに手が届かない印象だ。

 一方で、これは「鶏が先か卵が先か」の議論。Windows Phoneが市場にある程度出回らないと、改善は進まないだろう。その意味で、あえてこのタイミングでWindows Phoneの市場投入を決めたマウスコンピューターの努力は、高く評価できる。平井氏の言葉を借りれば、やはり選択肢がない中でモノを選ぶのは難しい。それはOSにも同じことがいえる。筆者の主観を述べると、やはりiOSとAndroidが大勢の今の状況は、どこか物足りない。

 Windows 10 Mobileへのアップグレードに慎重な姿勢も、好印象だった。取材中にも述べているが、展示会などで触ったInsider Preview搭載端末は、まだ完成度が低い。この状態でアップグレードを明言するのは、ユーザーにとっても不誠実だ。あくまでWindows Phone 8.1として買ってもらい、アップグレードの目途が完全に立った段階で告知するのが、正しい順番といえるだろう。

 現時点ではまだ1機種だが、マウスコンピューター自身も後継機を考えている様子。ラインアップが増え、Windows 10 Mobileが完成されれば、選択肢の1つになる。ユーザー数がある程度増えれば、ローカライズも進み、エコシステムに好循環が生まれそうだ。まだ先は長いものの、マウスコンピューターのように“信念”を持って取り組むメーカーがいるのは、マイクロソフトにとっても心強いことだ。Windows Phoneの今後にも、期待が持てるようになってきた。

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