マウスコンピューターが、6月18日に初のスマートフォン「MADOSMA Q501(以下、MADOSMA)」を発売する。日本では約4年ぶりとなるWindows Phoneということもあって、オンラインストアの初回予約が即日完売するなど、注目を集めている。
MADOSMAはドコモの3GとLTEネットワークを利用できるSIMロックフリースマートフォンであり、ちまたで言われているいわゆる「格安スマホ」のカテゴリーに属すると言っていい。では似たようなスペックを持つAndroidスマートフォンと比較して、MADOSMAは買いなのだろうか? いくつかのポイントからチェックしていこう。
MADOSMAの価格は、マウスコンピューター 楽天市場では3万1297円(税別、以下同)。3万円台前半のSIMロックフリースマホは、Androidではfreetelの「freetel XM」(3万218円)、ZTEの「Blade Vec 4G」(3万2184円)、京セラの「S301」(3万2184円)などがあり、これらのモデルとスペックも近い。
5型HD液晶、クアッドコアCPU、1Gバイトメモリ、8Gバイトストレージ、800万画素カメラ、2300mAhバッテリーといったスペックを考えると、いいバランスの価格を実現しているのではないだろうか。7〜9万円ほどする大手キャリアの製品を比べても、もちろん安い。大手キャリアが提供している毎月の割引はないが、それを差し引いても、3万円強という価格はリーズナブルだ。
MADOSMAはミッドレンジのスマートフォンであり、突出したスペックを実現しているわけではない。大きくて高解像度なディスプレイ、高画素なカメラ、ハイパフォーマンスなCPU、大容量バッテリーなどを求める人にはおすすめしにくい。
一方、17日の製品説明会で、小松永門社長は5〜7型のファブレットの投入を予告しているので、少なくとも「もっと大画面のWindows Phoneが欲しい」という人は、後継機を待つ方がいいだろう。さらに、同氏はWindows 10 Mobileをプリインストールしたスマートフォンの投入も予告した。なお、今回のQ501もWindows 10 Mobileへのアップデートを検討しているが、詳細は未定。
小松氏は、Windows Phoneの魅力は「1.最もパーソナルなスマートフォン」「2.ビジネスに最適」「3.あらゆるデバイスで統一された環境を実現」の3つにあると説明する。
1の「パーソナル」の大きな要素として、小松氏は、カスタマイズしてアプリや連絡先などを表示できる「スタート画面」、そのスタート画面を常に最新の状態にアップデートできる「ライブタイル」、FacebookやTwitter、Skypeなどの情報をまとめて表示する「Peopleハブ」などを挙げる。しかしAndroidのホーム画面やウィジェットでも似たようなことは実現できる。
2の「ビジネス」は、Microsoft Officeの搭載、Office365/Exchange/Outlookを標準サポート、VPNや企業内Wi-Fiを使った企業ネットワークへの接続などを挙げるが、上記サービスの利用はiOSやAndroidでも可能だ。
Windows Phoneの最も大きなメリットは、3の「あらゆるデバイスで統一された環境」にあるといえる。例えばPC、タブレット、スマートフォン共通のインタフェース、Microsoftアカウントからメールや予定を一元管理できること、Wi-FiパスワードやIEのお気に入り、テーマ色などの設定を同期できること、スマホ/タブレット/PCのマルチデバイスで(一部)アプリを利用できること……などを小松氏は挙げる。Windows PCやWindowsタブレットを使っている人ほど、こうしたメリットを享受できる。
これはMADOSMA固有の問題ではないが、iOSやAndroidでアクティブにアプリを使っている人がWindows Phoneに乗り換えると、不満を覚えることが多いだろう。
分かりやすいところでは対応アプリの数だ。Windows Phone向けアプリは2014年8月に30万を超えたが、登録数が140〜150万といわれているGoogle PlayやApp Storeには遠く及ばない。もちろん、Twitter、Facebook、LINE、Amazon、Dropboxといった定番アプリはWindows Phone向けにも提供されているが、例えば日米で1000万ダウンロードを突破したニュースアプリ「SmartNews」は提供されていない。
また、これまでWindows Phone 8/8.1搭載機が日本で発売されていなかったため、日本語対応アプリが充実していないという問題もある。MADOSMAを開発するにあたって、小松氏も「細かいところが文字化けするなど、日本語化は最後まで苦労した」と話す。
Windows 10ではiOSやAndroidアプリの移植が可能になるが、移植の判断が開発者に委ねられることを考えると、iOSやAndroidのメジャーアプリがWindows Phoneでどれほど利用可能になるかは未知数だ。
MADOSMAは、ドコモ回線を使ったSIMで通信することを想定して作られている。LTEの周波数はバンド21(1500MHz)には対応していないが、バンド1(2100MHz)、3(1800MHz)、19(800MHz)には対応している。これは「ZenFone 5」や「Ascend Mate7」など、多くのAndroid SIMロックフリー端末と同じだ。3G(W-CDMA)はバンド1(2100MHz)、8(900MHz)、19(800MHz※FOMAプラスエリア)をサポートしており、通話をする上でも問題なさそうだ。
ちなみに、AndroidのSIMロックフリー端末は、MVNOとメーカーがパートナーシップを結んで、SIMカードとスマートフォンをセット販売しているケースが多いが、MADOSMAは現状、端末単体での販売となっており、SIMカードはユーザーが調達する必要がある。マウスコンピューターによると、U-NEXTと提携して「U-mobile」のSIMカードとセット販売することを予定しているという。
セット販売をするMVNOが増えれば、端末の認知度が上がるのはもちろんのこと、「楽天モバイル」などセット販売の比率が高いところと組めば、端末の売上増も期待できる。
「買いかどうか」という観点からはずれてしまうが、SIMを個別に用意するというのは、スマホ初心者にとってはハードルが高いので、MADOSMA+SIMカードをセットで購入できる機会が増えることに期待したい。
大手キャリアが販売する製品は手厚いサポートが受けられるが、SIMロックフリースマホはMVNOやメーカーによって対応が異なる。
MADOSMAの場合、1年間の無償修理保証が付き、24時間、365日の電話サポートを受け付ける。修理には即日対応し、修理・出荷状況、作業報告を逐一確認できる。また10時〜18時は、ユーザーの都合のいい時間帯に電話をしてくれる予約システムも用意。「PCのサポートで培った経験でサポートを展開していく」と小松氏が話すように、サポート体制が充実しているのはうれしい点だ。
MADOSMAは個人と法人向けに販売するが、小松氏は「まずはコンシューマの方にお使いいただきたい」と話す。確かにスペック、ハードウェアとしての完成度の高さ、サポート体制は安心できるが、「アプリの利用環境」を考えると、今すぐiOSやAndroidから乗り換えるのはハードルが高いと感じる。Windows環境で十分という人やWindowsアプリの開発者は別として、一般ユーザーは1台目のメイン機ではなく、2台目のサブ機として使う方が安心できるだろう。
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