―― ちょうど端末のお話になりましたが、端末とのセット販売に力を入れていますが、やはりその点は楽天モバイルの強みになっているとお考えでしょうか。
平井氏 SIMカードだけでは、ビジブル(視覚的に)価値表現をすることができません。そうなると、結局は安さになってしまいます。物理的なこと以上に、感性的なことまで含めて「having fun」や「excitement」(楽しさや興奮)を含めた価値を追求するのが信条です。ここは、ラインアップ(の拡充)をしっかり進めていきます。これだけの機種をそろえているMVNOもなかなかなく、MNOに匹敵するところまで来ています。
端末では、できる限り楽天の独自色、エクスクルーシビティ(独占性)を追求していきたいと思います。例えば、16Gバイトの市販モデルがあったら、楽天モバイルだけストレージの容量を32Gバイトにしたり、カラバリが白、黒とある中で、楽天だけはコーポレートカラーの赤を加えてもらったりといったことは考えられます。市販品の中でもスペックを変えることで、楽天ならではの色を出していきたいですね。
―― MVNOだと、どうしてもMNOと比べて調達数は少なくなりますが、その状況でも楽天モバイルはhonor6 Plusを独占販売するなど、独自色が出ています。そこまでできるのには、どのような秘策があるのか教えてください。
平井氏 そこまで特別な技があるわけではありません(笑)。今お付き合いしているビジネスパートナーには、楽天のブランド力や可能性に大きな確信を持っていただいています。これは、モバイル事業だけでなく、総合的な評価なのではないかと思います。
―― 端末のセット率も、やはり他社と比べると高くなりそうですね。
平井氏 けっこう高い方ですね。当初事業計画を立てていたときより、アタッチ率は高くなっています。
―― もともとECを運営していた、楽天ならではのノウハウも生きているのでしょうか。
平井氏 そうですね。また、ユーザーの方にメリットのあるポイント還元や、キャンペーンもやっています。SIMだけだとビジネスパートナーとの協業の価値が半減してしまうので、そこはHuaweiさんなり、ソニーさんなりと一緒にやっていきたいところです。
―― honor6 Plusのような独自色の強い取り組みは、今後も続けていくという理解でよろしいでしょうか。
平井氏 まず「honor」に関しては、楽天との共同ブランドだと認識しています。honorが日本で成功することにコミットメントしていますし、このシリーズは大切に育てていきたいと考えています。
ただ、それ以外のビジネスパートナーさん、デバイスメーカーさんとも、同じような形で進めていきたい。先ほど申し上げたように、スペックを変える、カラバリを変えるなど、いろいろなことができると思います。
―― その意味では、「Xperia J1 Compact」も、ソニーグループ以外が取り扱うのは初めてですね。やはりおサイフケータイ対応が、導入を決めたきっかけになったのでしょうか。
平井氏 一番大きな理由は、執行役員から「Edyがないから楽天モバイルに変えられない」と強い要望があったからです(笑)。発売したら一気に変えてくれたので、よかったですね。
非常に面白いのは、「モバイルSuica」がないと生きていけない人が多いかと思いきや、マーケット調査の中ではそういう声はあまりありませんでした。ガラケーやMNOユーザーの中でも10%かもうちょっと多いくらいで、逆にEdyに関しては非常に要望が高かったという結果もあります。
―― タブレットのラインアップをそろえたのも印象的でした。先ほどのお話にあったように、データSIMの重要を狙ったものなのでしょうか。
平井氏 従来のガラケーやスマホともまったく違う、1つの新しいマーケットだと思っています。まだ実験的ですが、スタートしてみました。グループで見れば(動画配信サービスの)「ShowTime」がありますし、社内サービスのレバレッジもできます。
タブレットに関しては、私自身、一番不満に思っているのがオーディオです。せっかくあれだけの大画面があるので、なぜポンと置いていい音が出ないのか。ホームエンターテインメントで考えると、サウンドまで含めて体験する世界があります。そんなことを、次に実験してみたいとも考えています。
―― IoT(Internet of Things、モノのインターネット)についても、以前言及されていたと思います。こちらについては、今何か進展していることはあるのでしょうか。
平井氏 現時点では、特に具体化しているものはありません。ただ、間違いなく、IoTの世界ではセンサー技術やM2Mの中で、データ通信が必須になってきます。そのときのSIMカードは今のSIMカードを意味するのではなく、次世代型の新しいSIMカード、いわゆるソフトSIMからもしれませんが、そういったものも必要になります。これについては、長期的に研究開発に取り組んでいきたいと考えています。
楽天グループには、フュージョンに技術検証をするチームもありますし、楽天にも楽天技術研究所という研究機関があります。そこと一緒になって、IoTのアプリ、サービス、ネットワークを俯瞰(ふかん)すると、どんなことができるのかを考えていきたいと思います。
―― サービス面に関してですが、電話サービスにしても、「楽天でんわ」や「SMARTalk」など複数に分かれています。これを楽天モバイルが集約していくという考えはありますか。
平井氏 楽天でんわについては、MVNO業界全体のアドバンテージだと思っています。普通だと30秒20円の通話料が、30秒10円に下がるわけですからね。実際、フュージョンからも他社にOEMとして提供しています。競合ではありますが、MVNOという業界を大きくメインロードにするためには、これは正しい戦略だと思っています。
そこに加えて電話では「SMARTalk」と「Viber Out」がありますが、この2つは似ているようで生い立ちが違います。現在は両方別々に運用していて、前者は050の番号をもって電話を受けることができますが、後者はOutだけでInがありません。この2つをコンバージェンスすると、もっと面白いことができるのではないでしょうか。技術的なことを含め、いろいろと検討を進めているところです。
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