インタビュー
» 2015年07月16日 10時06分 公開

「Apple Watchより目覚まし時計の方が面白い」――“やんちゃ”な電通ブルーが起こすイノベーションとは (2/2)

[田中聡,ITmedia]
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「ふろしき」の文化から生まれた「MATT」

―― 「MATT」はデジタル製品ではありませんが、ユニークな製品ですね。

吉羽氏 日本では「ふろしき」という文化がありますが、物を敷く、座布団という習慣はあっても携帯する文化はない。敷くものを美しく作ることで、ブランドとしての足がかりにできると考えました。この形は特許を取っているんですよ。

 日本人の心配りの話をすると、営業マンが(外で打ち合わせをするときに)お客さんのカバンが汚れないように、カバンをこの上に置いてくださいと、広げてあげるような感じです。ここを起点にするとブランドができると思ったんです。これも1つのイノベーションですね。

photophoto 持ち歩ける風呂敷「MATT」。広げたときに地面に付いた部分は、折りたたむと内側に来るので、持ち運ぶ際にも汚れた面に触れることはない

―― 私は営業の経験はありませんが、言われてみると、なるほどと思います。

吉羽氏 このへんのものは、ニーズとしてはぼやっとあるんですよ。その火がつき始めると、文化が根付いていくと思います。実際、(MATTは)海外のセレブから反応がいいんですよ。

 これは僕の過去の成功体験からも出ている答なんですけど、小さな市場領域で圧倒的にナンバーワンになれば、その市場が社会のニーズによって急拡大していくときに、一番影響力を持てるということ。

 携帯電話もそうですよね。結局ドコモさんを含めて立ち上げられて、みんなが携帯を使い始めるから市場が大きくなっていくという。そういう領域の方が、スタートアップとしては正しいと思います。

ゲームアプリを作りたいわけではない

―― 「PandeChat」と「ChainSnap」という2つのアプリは、どんな経緯で生まれたのでしょうか。

吉羽氏 僕自身は、アプリで単なるゲームを作りたいわけではなく、新しい価値観の提示に比重を置きたいんです。PandeChatはBluetooth通信でチャットをするサービスなので、その場にいないと会話ができない。商業施設で上手に活用できれば、マグネット商材として使えます。そこで盛り上がっているから、会話に入りたいし、楽しいことに触れたいから行くという、マーケティングのアプローチにも使えます。

 災害時にも使えると思っています。インターネットがつながっていなくてもメッシュネットワークでやり取りできることは、ライフラインとして役に立ちます。

―― 単なるお楽しみアプリではないということですね。

吉羽氏 切り捨てる必要はありませんが、どの選択肢をより強く描いていくか、ですね。ただし僕たちも学芸会をやっているわけではないので、ちゃんと経済性を担保しないといけない。この技術の上に、どんなマネタイズポイントがあるかを考えながら選択しています。

photo 「PandeChat」

―― 現状、アプリに広告は入れていないのでしょうか。

吉羽氏 今は入れていないです。より多く改良して、広く使ってもらいたいので、1回出して「以上」ではないんですよね。正直言うと、100%の精度で出せているわけではなく、60点ならとりあえず出しましょうという方が近いです。その中で改良して、人々が満足して使ってくれるレベルまで持っていけば、マネタイズポイントが生まれてくるので。

 また、僕らが作ったものを、そのままバイアウトしてもいいと思っているんです。僕たちが作ったものに対して「それ面白いじゃん」「うちの会社の仕組みにはめたら、すごい役に立つよね」という話があれば、積極的に売っていきます。

―― 「ChainSnap」アプリも同じ考えでしょうか。

吉羽氏 同じですね。スマートフォンが代替わりしていく中で、余っている端末をカメラに使ってもいいと思います。

 スポーツや演劇も、みんなでいい席で見られるわけではない。だったら最前列に、ChainSnapがインストールされた端末を置いてあげれば、そのスマートフォンにアクセスして写真を撮ることは簡単にできます。今まで、コンサート会場では「写真を撮らないで」という規制が強かったですけど、それ(スマホで撮った写真)が拡散して導線作りになることも増えています。イベントのマネタイズ方法が変わっていく中で、こういったプロダクトが役に立つこともあります。

photo 「ChainSnap」

ウェアラブルには「24時間使う」という強迫観念がある

photo 「今のウェアラブルには強迫観念がある」と吉羽氏は考える

―― Apple Watchも発売されましたが、ウェアラブルの可能性についてどのように考えていますか。

吉羽氏 ウェアラブルは今後も踏み込んでいくとは思いますけど、ある程度作れる環境を整備しないと、永続的にはできません。そのあたりの体制を強化しているところです。一通りめどがたち始めていて、相談事も増えています。

 ただ、今のウェアラブルは24時間使うという強迫観念がついて回るのが残念なんですよね。「必要に応じて使える」で、僕は全然構わないとい思うんです。

 例えば、僕たちが今後やろうとしている事業領域の1つに「スマートフォンだけど、人の時間を使わないサービス」というものがあります。人間にはどんな人にも24時間しかなく、ディスプレイを見る時間も限られています。その時間の取り合いはレッドオーシャンだと思うんですよ。

 時計を着けて「1日の行動を管理する」「体調変化や発汗量を見る」というのは理解できるんですけど、着けていないといけないという強迫観念から今のウェアラブルは逃れ切れていない。僕らにも明確な答えはないんですけど、"Easy Come, Easy Go"で使えるような領域をどう見つけるかはテーマだと思っています。

―― そもそもIoTデバイスはウェアするものではない?

吉羽氏 一時的にウェアするという考え方はアリかもしれません。カギは永続性のあるものだからアリ。奇をてらうとにぎやかしでしかないし、その間をどう見つけるかですね。

―― それを今、考えているところだと。

吉羽氏 いくつかのプロジェクトを少しずつ準備しています。Apple Watchを見て、なおさらディスプレイを使わないスマートフォンのサービスを作らないとダメだなと思いました。広さで考えるとスマートフォンを見ている方がいいし、時刻もスマートフォンを見ればいいんだし。

 Appleが目覚まし時計を出した方が面白いと思います。枕元の時計にiPhoneを充電して近い距離にいれば「寝ている」と判定して、一定時間が過ぎてiPhoneが抜かれていなかったらアラームが鳴る、とか。

―― IoTデバイスを作るうえで、通信キャリアと組む可能性は?

吉羽氏 あると思います。正直、そういった方向に入れればと思うんですけど、いかんせん立ち上がったばかりの会社で、トラックレコードはまだまだ少ないんですね。今は1つずつ積み上げていかないといけないフェーズかなと思います。

2015年〜2020年のロードマップ

―― 2015〜2016年のロードマップについて教えてください。

吉羽氏 電通ブルーとしては“エターナルスタートアップ”というポジションに身を置いていたい。何年たっても、新しい概念を永続的に提供していきたいと思っています。ただ、出したプロダクトが当たらないと、会社としても永続しないので、当てていくためのパートナー開拓を1年以内にちゃんとやりきることが、僕たちに必要なことかなと。

―― 2020年までというスパンではいかがでしょう?

吉羽氏 アフター2020の話はよくしますが、2020年までには次のモデルは見つかっていないと思います。単純にこの5年でという話ではないと思っています。あと2020年の公式なプログラムやアクションは、もっと前から話は進んでいるはずです。どういった“玉”にフィックスさせるかは決まっていませんが、2018年くらいまでに、より世界を変えるようなイノベーティブな玉をどう探し、磨き、可能性まで持っていくか、だと思っています。

―― 2020年のスマートフォンはどうなっていると思いますか。

吉羽氏 2020年ごろのスマートフォンは“生態化”が少しずつ進み、人との融合の入口に立っているのではないでしょうか。もう少しアイデアは具現化されるとは思うんですけど、普及はしないかなと思います。さすがに頭の中にチップを入れることは許容できないでしょうけど。

―― そこで電通ブルーはどう関わっていくのでしょう。

吉羽氏 僕らができるのは価値観の提示なので、これ1本という発想はないんですよ。スマートフォンがなぜ人の能力を拡張しうる存在になるのかは興味深いですし、考えないといけません。

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