7月14日から17日まで上海で「Mobile World Congress Shanghai 2015」が開催された。それに関連してHuaweiが開催した「TDD+ Announcement」と題するイベントにはソフトバンクから関係者が登壇。同社の4Gそして5Gに向けての戦略を説明した。
「TDD+ Announcement」に登壇したのはソフトバンクの傘下、Wireless City Planningの技術本部技術統括部長、北原秀文氏。ソフトバンクの最新ネットワークの状況と、その先の「5G」を見据えた同社の戦略を説明した。
ソフトバンクグループは2015年4月1日に各社が合併し、新たにソフトバンクとWireless City Planningの2社体制としてスタート。ウィルコムやイー・アクセスなどが所有していた周波数帯を併せ持ったことで4G/LTEでは210MHzという、日本国内の通信事業者の中で最大の帯域幅を持っている。基地局数も今では27万局まで増強している。このうちFDD-LTEの基地局数は7万、TD-LTE(AXGP)の基地局数は5万と、LTEの基地局だけでも全体の約半分となっている。
基地局数の増加で接続率も改善されており、TD-LTEの加入者数だけでも現在1000万契約に上る。またTD-LTE回線をバックボーンに利用する無線ブロードバンドサービス「Softbank Air」の加入者も急激に増えている。このSoftbank Airは自宅でPCなどからも利用できることから、1ユーザーあたりのデータ利用量はスマートフォンなどのモバイル利用の20倍にも達しているという。
このように、LTEの普及はデータトラフィックの急増をもたらしている。そこで同社はサービスエリアを拡大していくという従来の方針を改め、今後は通信容量、すなわちキャパシティ増強へとネットワーク拡大戦略を変更していくとのこと。
キャパシティ増強のために、FDD-LTEとTD-LTEでは役割を分担させる。FDD-LTEはエリア拡大と音声サービスを重視したものとし、日本全国にネットワーク網を今後も拡充していく。一方、データトラフィックのキャパシティ拡大にはTD-LTEを活用し、2.5GHz帯と3.5GHz帯の合計70MHzの帯域を、その用途(キャパシティ拡大)に特化して使っていくとのこと。
なお、ソフトバンクは2010年に旧ウィルコムを合併した時点で、ウィルコムの周波数をTD-LTEに転用することを決定。Wireless City Planningが2011年からAXGPとしてサービスを開始した。これは世界で最も早い、TD-LTEの大規模商用ネットワークだった。
同社がキャパシティの拡大を重視するのはなぜか? 例えば日本では東京、大阪、名古屋など大都市のデータトラフィックが非常に高い。これら大都市圏では、もはやつながらないエリアはないものの、つながりにくさが問題視されることが多い。
人口過密地帯でのデータトラフィック増には、スマートフォン利用者の増加も関係している。例えば混雑時間帯のデータトラフィックはこの9年間で9倍にも増加した。特にソフトバンクがiPhoneを発売してからは、その傾向が顕著に表れている。
だがトラフィックが増えたとしても、これから基地局を増やすには設置場所やコストなどに限界がある。とはいえ、今後東京オリンピックなど大きなイベントを控ている中で、トラフィックの増加は今のペースでこのまま増えていくことが予想されているのだ。しかし既存の3Gや4Gではデータトラフィック増に対しての設備投資は膨大なものになる。「それを解決する手段が5Gだ」と北原氏は説明する。
2Gから3G、そして4Gとこれまで10年ごとに新しい技術が生まれてきたが、5Gも4Gから10年後の2020年、東京オリンピック時には商用化される見込みだ。だが5Gは全く新しい技術方式ではなく、既存の技術のブラッシュアップと組み合わせにより実現する。
MIMOの構成は現在4T4R(4送信4受信)から8T8R(8送信8受信)化が進められようとしている。これでキャパシティは1.8倍となる。基地局数を増やすのではなく密度を上げることでキャパ増加を実現できるのだ。しかも8T8R化は既存のデバイスがそのまま利用できるメリットもある。そしてその先の5Gでは、より高密度なMassive MIMOや、デジタル変調方式の256QAM化により、キャパシティをさらに増やしていくという。
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