「人の生活に寄り添う佇まい」――「Xperia Z5」で目指した新しいスマートフォンの形開発陣に聞く(2/2 ページ)

» 2015年12月26日 06時00分 公開
[田中聡ITmedia]
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レイアウト効率を上げるために基板の形状を変更

photo 機構設計担当の小林氏

―― 機構設計について、中身は変わったところがあるのでしょうか。

小林氏 大まかなデバイス配置は同じなんですけど、今回は発熱の対策を強化しました。具体的には、ヒートパイプを2本にして、1本あたりの幅も増やしています。カメラの機能アップに伴い、カメラから出る熱を、カメラ側から他に分散するようにしました。

 また、基板の形状も変わりました。従来は上半分が基板、下半分がバッテリーという構成でしたけど、端末のサイズが大きくならないよう、レイアウト効率を上げました。

―― 右下の細長いところに基板が広がっていますね。ここには何が?

photo 右下にも基板が広がっている特殊な構造になっている

小林氏 主にアンテナの信号線を通している部分があり、ボトム側に液晶のコネクタがあります。Xperia Z5ではサイドパネル(金属)の一部をアンテナに使っていますが、アンテナ接点部分の構成や、いかにアンテナ特性を出すかは、電気設計担当者と検討を重ねてきました。

 また、アンテナの接点と指紋センサーを両立させることも大変でした。指紋センサーの内側には、コネクト部分と、キーとして押し込む部分を入れていますが、従来よりもスペースを食うので、場所の取り合いでしたね。

photo 内側から見た指紋センサー

 本体の幅を維持しつつ、中身の基板の容積が増えたので、サイドパネルの幅(側面ではなく、上から見たときのフレームの幅)はZ3→Z4→Z5と代を経るごとに薄くなっているんです。Z5はサイドパネルと中身のフレームに加え、表裏のガラスで全体の剛性を出しているので、今回はガラスの厚みをアップさせて全体の強度を確保しました。

AFやHDRが進化したカメラ

photo カメラ担当の鈴木氏

―― カメラも大きく進化しました。あらためてそのポイントを教えてください。

鈴木氏 ハード面の部分で一番大きいのは、Z5ではZ1以来となる、センサーを含めたカメラモジュールを一新したことです。像面位相差AF(オートフォーカス)にも対応して、AFがかなり速くなりました。像面位相差は、信頼性が高いとき(被写体がいると判断したとき)に動かすようになっています。例えば(映した先が)真っ白の時はコントラストAFを使いますが、一般的に端にいる被写体の場合も、像面位相差AFが一発で動かないこともあるようですが、ソニーモバイルの強みとして、中央も端でも、像面位相差AFが動きます。

photo 左からXperia Z5、Z3、Z1のカメラモジュール

―― AFが高速になりましたね。「0.03秒」という速度は、どこにピントを合わせても変わらないのでしょうか。また測定方法は?

鈴木氏 どこでも変わりません。「CIPA」という測定基準にのっとり、専用の測定器で測っています。

―― プレミアムおまかせオートでは、明るさや色温度を変えられるようになりました。

鈴木氏 個人的にも、これはうれしい機能です。これまでも最適な画質を実現できたと思っていますが、お客様によっては、明るさや色味を変えたいという要望がありました。

photo プレミアムおまかせオートで明るさや色味を変えるだけで、ここまで雰囲気の違う写真を撮れるようになった

―― プレミアムおまかせオートは従来、800万画素に固定されていましたが、今回は2300万画素のサイズが追加されました。これは単純に、画質は変わらずに解像度が上がるということでしょうか。

鈴木氏 解像度は上がりますが、(画質の劣化を防ぐ)クリアイメージズームは800万画素では5倍まで対応しているのに対し、3倍までに下がります。内部の処理で2300万画素から800万画素を切り出すときに、2倍ほどズームしているためです。

 あと、800万画素では、暗いところでは低照度認識をしていてISO12800まで上がりますが、2300万画素ではそこまでは上がりません。サイズを圧縮することでノイズ感を減らしている部分があるので、800万画素をデフォルトにしています。

―― プレミアムおまかせオートに2300万画素を入れたのは、ニーズがあったからですか。

鈴木氏 2300万画素のカメラを使っているので、「最大画質」で撮影したいという要望が多かったからです。

―― 画質面で変えたところはあるのでしょうか。

鈴木氏 HDRにも力を入れていまして、よりキレイに静止画を撮れるようになっています。今までは、HDRの絵を作るときに、明るい絵と暗い絵の2枚から作っていたのですが、それらに通常の絵も加えて3枚にすることで、色がキレイに出るようになりました。

―― 他に進化したところはありますか?

鈴木氏 動画のインテリジェントアクティブモードです。アクチュエーターの精度が上がったので、よりブレを抑えられるようになりました。従来は、自転車などに乗りながらですと揺れてしまいますが、アクチュエーターを精度良く動かすことで、揺れを抑えられます。これは、アクチュエーターのバネを揺らしても同じ位置に行くように電流を制御しているためです。バネの揺れを吸収するイメージですね。

―― スマートフォンのカメラにはどのような課題があると感じていますか? デジタルカメラのトレンドとは違いますか。

鈴木氏 アウトカメラは、同じセンサーサイズでしたらデジタルカメラ「サイバーショット」と比べても遜色のない画質になってきていると考えています。インカメラはZ4から500万画素にしていますが、人の顔を撮るので、そこ(インカメラの性能)はもっと上げていきたいと思います。

―― スマートフォンで今後、目指す方向はどうなっていくのでしょうか。

北森氏 まだブラッシュアップできる方向性はあると思います。「使いやすさ」「寄り添う」というところを追求したときに、どういったスマートフォンができあがるのか。そういったアプローチは取っていくべきだと考えています。まだ解はないんですけど。

―― ソニーが培ったカメラやオーディオの技術が、その中でキーになっていくのでしょうか。

北森氏 かなりのところまで来ていると思うので、そこの強みは維持していきますし、それに加えて、Xperiaならではのアプローチは目指している部分です。

取材を終えて:万人に勧められるが、新機軸も見たい

 Xperia Z5は、前モデルのXperia Z4と比べて、落ち着いた雰囲気になり、Zシリーズならではの“とがった部分”が弱くなったように感じる。一方で「生活に寄り添う佇まい」は、先進的なデバイスを望む人だけでなく、より幅広い層から支持を集めそうだ。今回、とがった部分はXperia Z5 Premiumに引き継ぎ、王道を行くZ5は、万人に勧められるモデルといえる。

 しかし初代Zから継続している「オムニバランスデザイン」はZ4で完成の域に達し、悪い言い方をすればZ5は「質感を変えただけ」ともいえる。そろそろ新機軸のXperiaを見てみたいが、次はどのような進化を見せてくれるのだろうか。

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