インタビュー
» 2015年12月28日 06時00分 公開

「VAIO S11」で独自SIMを採用した理由、MVNO参入でVAIOが目指すものとは?MVNOに聞く(2/2 ページ)

[石野純也,ITmedia]
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年単位の料金プランを採用した理由

―― なるほど。では、料金プランの詳細についてうかがっていきます。なぜ、年単位になっているのかなどを、あらためて解説していただけますか。

黒崎氏 PCだと、ずっと一定量の通信を使うわけではありません。私もそうですが、外出すると使って、そうじゃないときは使わないというように、かなりのムラがあります。一方で、キャリア(MNO)もMVNOも、月3GBというような料金プランが一般的で、繰り越しもありますが、その程度の偏りではありません。そこを何とかしないと、PCユーザーにとっては、無駄が多くなってしまいます。その結論として、年間プランを議論の中で出していただけました。

 副次的なものとして、プリペイドという形になるので、それもPCのお客様とは相性がよくなります。契約となると、やはりハードルが高い。ソニー時代は大手キャリアとやってきましたが、最初に2年契約を迫れると、お客様も「うっ……」となってしまいます。ビジネスマンのお客様はSIMを会社の経費で払ってしまうことも多いと思いますが、毎月の契約だと、精算も面倒です。新しく契約するとなると、稟議(りんぎ)にかけて、バジェットを取ってとなってしまいますからね。

 そのあと、議論に出てきたのが、速度の切り替えで、私は常時接続というところに価値があると思っています。そのためには容量が青天井であることが必要です。OCNさんでもともと「ターボ機能」をやっていましたが、これをPC向けに組み込み、200kbpsを常時接続のために使うのがいいとなりました。普段はこの速度でつないでおき、いざとなったら高速通信をオンにするイメージですね。

永吉氏 実は当初、ターボ機能は付いていませんでした。これも突然「付けたい」とお願いしたところ、即対応していただけました。

―― 200kbpsが前提で、高速通信は必要な時だけ使うということですね。通常のOCN モバイル ONEとは、考え方が逆なような印象です。

黒崎氏 逆ですね。他社だと200kbpsでも3日でどのくらいという制限があるところもありますが、これはありません。

奈良部氏 ユーザー特性にもよりますが、みんながみんな、動画を見るわけではありません。(無制限にすることに)事業者としては勇気がいることですが、メールなどであれば、自然な状態で使えると思います。

―― ターボ機能は、PCのアプリ側からAPIをたたきにいっているのでしょうか。

奈良部氏 もともとAPIを作り、MVNOに提供はしていました。ただ、ユーティリティのようなものはなかったですね。

黒崎氏 やはり、Webにログインして、速度を切り替えてというのでは、面倒ですからね。

永吉氏 PCにプリインストールするところにも、力を注ぎました。

―― 料金プランが3年まであるというのも、なかなか珍しいですね。ここはPCの買い替えに合わせてのことでしょうか。

黒崎氏 VAIO S11は、実は学生もターゲットにしています。入学の時親に買ってもらって、大きな容量をほそぼそと使い続けるニーズもあるのではと思いました。

―― あれ? でも大学生だと4年では(笑)。

黒崎氏 正確にはそうですが、就職活動で買い替えることもありますからね。

永吉氏 その意味だと、まだやらなければいけない、積み残しがあります。リチャージはどうするのかということに対しては、“なるはや”で実現させねばと思っていて、そこは今、詰めているところです。どんな形で高速通信を使っていくのかの分析もしないといけないので、そこは合わせて協力をお願いしているところです。期限が切れてしまうと使われなくなってしまうので、期限内に、スムーズにできるようにしていきたいと思います。

「真VAIO Phone」にも独自SIMを採用する?

―― SIMカードも出たことですし、今後、モバイル向けのPCはSIMカードスロットを標準搭載していく方向になるのでしょうか。

黒崎氏 長期的には、モバイルPCにはLTEが入っていくという考えを持っていますが、なにぶん、今はトライアル的な側面もあります。発売してから2週間ぐらいたちますが、今のところ、LTE選択率もものすごく高い。初回ということもありますが、それでも想定より高くなっています。ただ、初回のお客様は感度が高いこともあるので、これがもう少したったとき、実力が見えてきます。機種展開を考えるのは、そこを見ながらですね。

 LTEを搭載すると、そのぶん、制約も出てきます。「VAIO Z」のように全面を金属ボディにするのも難しくなりますし……。

―― 確かにアンテナが入ると、どうしても自由度は落ちますね。

黒崎氏 そのために、VAIO S11も全面樹脂素材にしています。その代わり、質感にもかなりこだわって、見た目的にはパッと見で金属に見えるような塗装をしています。

photo 素材には樹脂を使っているが、金属っぽさを表現した

―― 徐々にでも変わっていくといいですね。

黒崎氏 デバイスができた歴史的な由来で、PCには何となくSIMが付いてきませんでした。ただ、ユーセージ(使用法)を考えると、本来付いているのが普通です。そこは、これから考え方に補正がかかっていくのではないでしょうか。もしかすると、100%SIMが搭載される時代が来るかもしれない。急にそこに行くことはないかもしれませんが、徐々にその道を切り開いてきればと思います。

―― 先ほどトライアル的にとおっしゃっていましたが、SIMカードについては、単体で利益を出していくVAIOのいち事業なのか、VAIO S11のオプション的なサービスなのか、どちらの位置付けなのでしょうか。

永吉氏 スタートはVAIO S11ですが、利益を度外視しているわけではなく、そこでもきちんと利益を出していく方針です。ストアではSIMカードを単体販売していますし、単体で買われている方もいます。

 きちんと調査したわけではないので何で使っているのかは分からないのですが、基本的にはドコモさんの(回線を使った)SIMで、利用に制限をかけているわけでもありません。分かっている方は、他の端末で使っているのだと思います。動作保障がちゃんとできているのはVAIO S11だけですが、他社のハードを使う方にも買っていただきたいという思いはあります。

―― タブレットにも向いていそうな料金ですからね。

黒崎氏 なので、nanoSIMはないのかということを、結構言われますね。

―― それは確かに欲しいですね。アダプターをつければ、複数の端末で使えますし。こうなってくると、2016年に発売される、Windows 10 Mobileを搭載した「真VAIO Phone」も、通信はVAIO SIMでということになるのでしょうか。

永吉氏 そこは、今、まさに議論中です。Windows 10 MobileのスマホとオリジナルSIMの組み合わせだと、どういうものがいいのか。これは、社内やNTTコミュニケーションズさんと、お話をしているところです。

取材を終えて:大きな意味を持つ「PC向け料金プラン」

 SIMカードスロットがあり、LTEで通信できるPCは、思いのほか少ない。パナソニックの「Let's note」や、Microsoftの「Surface 3」があるものの、コンシューマー向けのPCでは、必ずしも一般的な機能とはいえない状況だ。PCの通信に適した料金プランがなかったことは、その一因だろう。今回、VAIOがMVNOに参入した理由は、まさにそうした障壁を取り除こうとしたためだ。この取り組みが成功すれば、今後、LTE搭載のPCはもっと一般的になっていくのかもしれない。少なくとも、VAIOがLTE対応を進める意義は増しそうだ。

 MVNOは既存のキャリアにできなかった料金プランを提供することを、期待されていた仕組みだ。低価格のプランを提供するのは、あくまでその結果の1つでしかない。PCメーカーが、PC向けの料金プランを作るというのも、本来、MVNOに求められていたことだ。その意味で、VAIOのMVNO参入には、大きな意味があったと感じている。

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