ソラコムのSIMが広げる新しい世界、テレマティクスとの連携も――SORACOM Conference

» 2016年01月27日 21時36分 公開
[田中聡ITmedia]

 IoTプラットフォームを開発しているソラコムが、2016年1月27日に「SORACOM Conference “Connected.”〜IoT つながるその先へ〜」を開催し、同社のシステムを採用した企業の事例や新サービスを紹介した。

photo

 ソラコムはMVNOとして、NTTドコモとの相互接続をAmazonのクラウドサービスであるAWS(Amazon Web Sevices)上で実現する「SORACOM Air」を展開。このプラットフォームを開放し、SIMカードを提供することで、誰もがドコモのネットワークを利用したデータ通信サービスを提供できるようになる。SORACOM Airは個人でも利用できるが、企業がさまざまな機器にSORACOM Airを導入するという事例が増えている。

photo 「SORACOM Air」の仕組み。NTTドコモの設備とクラウド上で接続することで、ユーザーはWebからさまざまなコントロールができる

1500以上の企業がソラコムのSIMを導入

photo ソラコムの玉川社長

 ソラコムの玉川憲社長は、SORACOM Airのユニークな点として「Webから回線や速度を管理でき、1つの回線の速度をリアルタイムにコントロールできる。自分がキャリア(通信事業者)になったような形で操作をできること」を挙げる。

 また、ソラコムのSIMを用いたデータ通信を暗号化して、安全にアップロードとダウンロードロードができる「SORACOM Beam」という仕組みも提供している。玉川氏は「AirもBeamも、共通基盤として(1日10円からの)従量課金で提供しているので、(ビジネスが)失敗したときのコストを抑えられる」とメリットを説明する。

 既に1500以上の企業がソラコムのサービスを導入しているが、実際にどのようなシーンで活躍しているのだろうか。

photo ソラコムのサービスを導入している企業の一例

 例えばNPOのSafecastは、SIMを入れたガイガーカウンターが計測した、全国の放射線情報をオープンマップに公開している。パルコは来店者の客層(性別や年代)のデータを安全に送信し、リアルタイムに可視化するのにSORACOM Beamを活用している。十勝バスではバスにSIMを入れてアプリと連携させることで、運行案内に役立てている。デザイニウムでは、除雪車にSIMを入れて位置情報を管理している。

 スマートフォンを鍵として使える「Akerun」(フォトシンス製)にSIMを入れることで、出先からスマホを操作して解錠ができる。ほかにも、リクルートライフスタイルが提供している無料POSレジアプリ「Airレジ」や、キヤノンの事務機器メンテナンスにもソラコムのSIMを活用している。

 ソラコムは、同社の技術資料を提供したりマーケティングを支援したりするプログラム「SORACOM パートナースペース(以下、SPS)」を展開しており、SPSに参加することで、ソラコムのプラットフォームを外部の企業が活用できるようになる。

photo SORACOM パートナースペースでは117社が申請している

 このSPSに認定された企業の1つであるセールスフォース・ドットコムの活用事例が紹介された。企業と顧客を結ぶためのサービスを提供している同社は、不動産の「センチュリー21登喜和」と提携し、ソラコムのSIMを活用した“次世代ショールーム”を構築した。

 ソラコムのSIMを入れたiPadを来店者に持たせ、iPad上で物件の詳細を説明。ショールームの至る所に「iBeacon」を設置することで、来店者がどこで立ち止まり、何を見たのかを可視化した。いいね!ボタンや書き込みができるコーナーも用意した。セールスフォース・ドットコムの川原均社長は、「来店者がどこでどれぐらい滞留したか、どこでいいね!ボタンを押したかが、瞬時にオンラインで分かる。こうしたデータをベースにマーケティング活動ができる」と、メリットを説明した。

photo SPSのセールスフォース・ドットコムがソラコムのプラットフォームを導入した「センチュリー21登喜和」の事例
photo iPadを使うことで、ショールームでのユーザーの動向を把握できるようになった

4つの新サービスを発表

 玉川氏は新サービスとして「SORACOM Canal」「SORACOM Direct」「Soracom Endorse」「SORACOM Funnel」の4つを発表した。Air、Beamに続き、C〜Fのアルファベット順にしているという遊び心も(?)も加えた。

 Canalでは、AWSの仮想プライベートクラウド環境にて、ソラコムとユーザーのシステムを接続する「VPC ピアリング」機能を使うことで、インターネットを介さずに安全なデータ通信可能にする。企業が機密性の高いデータを端末からアップロードする際に役立つ。

photo

 Directは、ソラコムからAWS外部にあるシステムを、専用線で接続するサービス。Canalと同様、閉域網で接続することで、安全な通信が可能になるという。

photo

 Endorseは、Air SIMを使用している端末に対して、ソラコムが認証プロバイダーとして端末を認証する。これにより、例えばソラコムのSIMを挿した端末のSIMを認証し、自動でWi-Fiスポットに接続する、業務システムへ自動でログインする、といったことが可能になる。

photo

 Funnelは、端末からのデータを特定のクラウドサービスに直接転送するクラウドリソースアダプター。データ転送を支援するという意味ではBeamと似ているが、Funnelでは「アダプター」と呼ばれる、クラウドごとの接続機能を提供している。

photo

 Air、Beam、Endorse、Funnelは1年間無料で利用できる枠を用意するほか、EndorseとFunnelは2月末まで無料で利用できる。

テレマティクスとソラコムのSIMが連携したら……

 基調講演の後半では、ソラコムのサービス導入を検討している3社のトップが登壇。トヨタ自動車 e-TOYOTA部部長の藤原靖久氏、JapanTaxi 代表取締役社長、日本交通 代表取締役会長の川鍋一朗氏、ガリバーインターナショナル 執行役員 CIOの許哲氏を交えてパネルディスカッションを行った。

photo トヨタ自動車の藤原氏

 トヨタは、車などの移動体に通信サービスを取り入れた「テレマティクス」サービスとして、地図の自動更新、目的地を設定するオペレーターサービス、盗難車両の追跡などを提供。2020年に向けては、高速道路での高度運転支援サービスの提供も目指す。藤原氏はテレマティクスの次世代インフラとして、「スマートフォンと連携させ、インターネットを組み合わせることで付加価値を付けたい」と意気込みを語った。

 その一例として、藤原氏は(車で)自宅に近づくと(スマホから)エアコンを付けられる機能、車通勤をしている場合に「今日は雪が降っているから電車で行った方がいい」と、出発の1時間前にスマートフォンに知らせてくれる機能を紹介した。

photo トヨタが展開しているテレマティクスサービス
photo ソラコムやスマートフォンを活用したサービスにも取り組んでいく
photo 日本交通の川鍋氏

 日本交通は、1月21日から大塚製薬とタイアップした“ポカリタクシー”を60台で運用。タクシーの座席に設置したタブレットに「ポカリスエット」のPR動画を配信し、動画を見終わった後に「1本飲む!」ボタンを押すと、運転手からポカリスエットがもらえる。しかしこのタブレットはインターネットには接続しておらず、運転手がSDカードを入れて動画コンテンツを再生しているという。「これでは機動的にアップデートができない」と川鍋氏は悩みを抱えていた。

photo ポカリタクシーはSNSでも話題に

 そんな中で川鍋氏が出会ったのがSORACOM Air。「ポカリスエットの30秒画像の再生で、(データ容量は)だいたい30MBぐらい。1MBあたり0.2円なので(※32kbpsの場合)、30MBなら6円、(動画を)10回入れ替えれば60円。(SORACOM Airの月額料金300円と合わせて)360円で運用できる。ボトルネックは通信費だったので、これだけ安いのなら、やろうということで、今、必死に動いている」と川鍋氏は現状を話す。単にPR動画を流すのではなく、「乗ったお客さんに合わせた動画を出すこと」も視野に入れている。

photo ガリバーインターナショナルの許氏

 ガリバーインターナショナルの許氏は、従来の小売業や流通業だけでなく、IoT(インターネットに接続するもの)にも注力していくとを話す。同社は2016年、「モビリティ」と「エンタテインメント」を合わせた「モビリテインメント」というコンセプトを掲げていく。ソラコムのプラットフォームを活用することで、「2016年はモビリテインメント元年にしたい」と同氏は意気込んだ。

 また許氏は「現在、MVNOの申請もしている」と明かす。ただし「ケータイを売るのではなく、(日本全国の)7000万台の車にSIMを挿して、車自体をケータイにする概念」だという。「セキュリティもケアしながら、ゲーム、例えばIngressの車版など、サードパーティと協業できるプラットフォームを作っていきたい」(許氏)

 ソラコムをパートナーに選んだ理由については「(通信網の)設備がないのでローコスト、ソフトウェアで展開するので(サービスを)高速開発できること」(藤原氏)が大きい。ソラコムのSIMが、テレマティクスの面でも変革を生んでくれそうだ。

photo 左端は、パネルディスカッションのモデレーターを務めた膳場貴子アナウンサー。その左隣から、藤原氏、玉川氏、川鍋氏、許氏

基本情報から価格比較まで――格安SIMの情報はここでチェック!→「SIM LABO

格安SIM、SIMロックフリースマホのすべてが分かる

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2026年07月28日 更新
  1. 「楽天モバイルWiFiスポット」を試してみた 屋内通信の不満解消へ期待も「接続性」に課題 (2026年07月26日)
  2. 夏の暑さ対策グッズでよく見掛ける「ペルチェ素子」ってなんだ? 賢く使うための注意点も (2026年07月27日)
  3. 折りたたみスマホ「OPPO Find N6」を3カ月使って実感した“真価” 仕事とプライベートで大活躍 (2026年07月26日)
  4. JR東日本「分かりにくい」新幹線券売機を改善へ なぜ、スマホではなく「駅での最短1分購入」を実現? (2026年07月04日)
  5. なぜ「LINE VOOM」は嫌われたのか 保護者を悩ませた“子供たちの抜け道” (2026年07月24日)
  6. 気温35度以上のハンディファンは「逆効果」 猛暑を安全に乗り切る使い方と2026年おすすめ5選 (2026年07月27日)
  7. ドコモが「iPhone 17」シリーズや「iPhone Air」を値上げ 一部機種は残価も引き上げ、実質負担額の影響は? (2026年07月24日)
  8. 界面活性剤とマイクロファイバーでタッチパネルをきれいに! ダイソーで220円の「スクリーンクリーナー」を試す (2026年07月25日)
  9. UQ mobileとY!mobileの「セット割なし」新割引を比較 ahamo、LINEMO、楽天モバイルよりもお得? (2026年07月27日)
  10. 【3COINS】100段階で風量調整、透明デザインの「大風量ペルチェ付きハンディファン」 3300円 (2026年07月27日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー