半年無料、業界最安でも利益は残せる――DTI SIMがレッドオーシャンにあえて挑む理由:MVNOに聞く(1/2 ページ)

» 2016年01月29日 06時00分 公開
[石野純也,ITmedia]

 フリービットグループのDTIは、2015年9月から、新たに「DTI SIM」を開始した。サービスイン直後から売りにしていたのが、“業界最安”の価格だ。当初から、5GB、10GBプランで業界最安を実現。12月には、月額840円の3GBプランを投入した。この3GBプランや音声プランの一部には、各社の最安値に追随してきたDMM mobileも、まだキャッチアップできていない。5000人が半年間無料で利用できるキャンペーンを実施するなど、価格面で話題を集めている。

DTI SIM 2015年12月には月額840円の3GBプランも登場

 もともと、DTIは「ServersMan SIM」を展開しており、グループとしては、「freebit mobile」と並行してサービスを行っていた。ServersMan SIMは、通信速度を絞り、ワンコインで提供していたサービス。現在はトーンモバイルが事業を継承しており、DTIの手からは離れている。

 文字で説明すると少々複雑だが、現状では、フリービットという会社がMVNEとして回線をドコモから調達しており、その傘下にDTIがある。freebit mobileを移管し、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)と合弁で立ち上げたトーンモバイルも、MVNEのフリービットから回線を借りる1社となっている。大本の回線自体は変わっていないが、現状、ServersMan SIMは、トーンモバイルが運営しているという立て付けだ。

 では、なぜ、一度手放したMVNOをDTIとして始めたのか。数々の事業者が参入し、競合も多数いるこのタイミングでDTI SIMを開始したことに対しても、疑問を抱く人はいるだろう。こうした点をフリービットの代表取締役社長 田中伸明氏にぶつけつつ、同社の戦略や今後の目標などを聞いた。

レッドオーシャンでも参入は遅くなかった

DTI SIM 田中伸明氏 DTI SIMの田中伸明氏

―― 最初に、DTI SIMの位置付けを教えてください。ServersMan SIMがあった中で、なぜサービスをリニューアルしたのでしょうか。

田中氏 リニューアルを行ったというより、またゼロから始めたというのが当社のスタンスです。ServersMan SIMはCCCとの合弁会社であるトーンモバイルに移管していますからね。もともとの合意事項として、SIMのサービスは新しい会社(トーンモバイル)とセットでやる予定でした。ただ、事務手続き上の問題でServersMan SIMが遅れてトーンモバイルに移ったので、ちょっと混乱してしまいましたが……。とはいえ、当初からServersMan SIMはDTIから切り離す予定でした。

 一方で、DTIはそれによって、SIMのサービスがなくなってしまいました。ISP事業は固定からモバイルに(比重が)移行していて、セットでやらないとユーザーのニーズを満たせません。そういう意味でも、必須のサービスです。

―― いったんリセットした上でのDTI SIMだったということですね。であれば、なぜ、ServersMan SIMを譲渡してしまったのでしょうか。

田中氏 それは、トーンモバイルの方で必要としていたからです。freebit mobileをトーンモバイルにするための営業戦略として、ServersMan SIMもロードマップに入っていました。事業として、必要性があったからです。

―― 差別化として、DTI SIMではどのような特徴を出していこうとしたのでしょうか。

田中氏 ServersMan SIMは、「低速だがワンコイン」というところを特徴にしていました。なぜ低速だったかというと、当時はドコモとの相互接続料は値段が高く、今よりコストがかかっていました。2016年の接続料はまだ発表されていませんが、恐らくさらに下がるものと思われます。その部分のコストが高いので、速度を絞りながらも、いかにユーザー体験を毀損(きそん)しないでやっていけるかというのがテーマとしてありました。

 一方で、今は時代が変わり、帯域あたりのコストも下がっています。速度を絞り込まなくても、低コストで使っていただけます。MVNOの最大のコストは、ドコモに支払っている接続料です。ですから、速度や値段だと、本質的な差はそれほどつかない。そういう意味では、レッドオーシャンでも参入は遅くないと言うこともできます。

―― やはり、低価格という点は意識されているのですね。

田中氏 はい。最初の半年が無料で、その後の基本料金は業界最安ですが、それでも利益は残せると考えています。格安でも、十分経営は成り立ちます。

DTI SIM 公式サイトでも王道の低価格路線で訴求する

―― 技術的な特徴はいかがですか。

田中氏 本質的には、帯域を上手にコントロールする技術は(ServersMan SIMのころから)変わっていません。フリービットとしては、各社にMVNEという立場で回線を大量供給しています。それをする上では、各社向けに帯域を割り当て、効率的に使うニーズを満たすことをやっています。DTIも、他のMVNOと同じ立ち位置で、効率的に帯域をコントロールする仕組みは入れています。

―― DTIがMVNOをやることで、グループとしては1社MVNOが増えたことになります。MVNEの顧客と競合してしまう心配はありませんでしたか。

田中氏 逆にそこまでの規模になってくれればいいのですが(笑)。市場は今、どんどん広がっているところです。いろいろなプレーヤーが、いろいろなことをやって、認知が広がればいいのではないでしょうか。それによって安心感も高まります。

 MVNEとしては、NTTコミュニケーションズ、IIJ、当社(フリービット)という形で、ネットワークの規模で言えば、上位3社に入っています。確かにいい位置にはいるのですが、絶対量でいえば、通信3キャリアより圧倒的に少ない。そこに、まだ拡大の余地はあると思っています。MVNEは、規模の経済が働くビジネスです。できるだけ多くのユーザーを囲い込み、設備投資の効率をよくしていく。それを、フリービットを利用するMVNOに還元していきたいですね。

キャリアの容量を使い切ったときの「保険SIM」にもなっている

―― 次に、料金やサービスの詳細を伺っていきます。サービスを開始してから、3GBの料金プランを追加しました。こちらに関してはなぜでしょうか。

田中氏 3GBがいいという、ユーザーのニーズがあったからです。参入当初、3GBも検討はしていたのですが、5GBがあるからいいと思っていました。ところが、意外とこだわりの声が多かった。そこで、3GBプランを追加しましたが、今は人気が出ています。

―― 大手3社は学割合戦で容量を追加していますが、10GBのような、大容量プランの需要に関してはいかがですか。

田中氏 需要自体はあると思いますが、金額とのバランスですみ分けされているのが現状です。大手キャリアのサービスを使う人は、7000円、8000円払う覚悟がありますからね。ですから、当社では今は1GBと3GBがメインになっています。

 また、メインで使うユーザーになってほしいとは思っていますが、どうもまだサブとしての利用が多いようです。大手キャリアの回線の容量を使い切った後に、残りをどうにかというピンチヒッター的な用途ですね。ブログやTwitterをクロールして調べてみると、月末になる前に容量を使い切ってしまったという方が、非常に多くいます。そこで我慢するという選択肢もありますが、一歩進んだ人は、「保険SIM」としてDTI SIMを持っているようです。

「怪しい」と話題の広告には単品広告のノウハウを生かした

―― 「保険SIM」は、キーワードとして引きが強そうですね(笑)。販路はいかがでしょうか。現状だと、Webのみだと思いますが、これを今後広げていくお考えはありますか。

田中氏 DTIとしては、当面、Webのところをやり切ろうと考えています。フリービットは、グループにフルスピードという会社があり、そこはWebマーケティングの業界では上位に入っています。私はそこの社長もやっていましたが、そのときの経験で考えると、商品に合わせたさまざまな切り口があります。テレビ広告でやっても全然採算が合わないものでも、インターネットではリスティングでキーワードを絞り込めます。つまり、濃いニーズを拾いやすいということです。

 Webマーケティングの業界には、ターゲットを絞り込んで商品を開発する「単品通販」というジャンルがあります。ニーズを絞り込んで、1つの商品のためにランディングページを作り、その広告をするという手法です。これを通信業界でやっている人がいない。DTI SIMでは、そのマーケティング手法に挑戦しようとしています。

 例えば、今だと半年無料でお試しをやっていますが、これも通販だとよく見かける、モニター募集と同じ考えです。あれは、どうせサンプルをもらうなら本当に申し込んでしまおうという人がいることで、コンバージョンが上がっていますが、SIMも、まだお試しをした方がいい人がたくさんいる時期です。使ったことがない人が、たくさんいるからで、そういうときはネットで絞り込んでいった方がいいと思っています。

―― 「怪しい」と話題になった広告も、意図的なものだったんですね。

田中氏 あれも、フルスピードで散々やってきた、単品広告のノウハウを生かしています。当社もそうですが、表に出るようなページはキレイに作ってあります。ですが、キレイに作るのは、むしろ簡単なことです。DTI SIMを使ってほしい人に訴求するために、研ぎ澄ました結果があの広告になります。

DTI SIM 怪しいと話題になったキャンペーンページ

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