一方、iPhone 6sとiPhone SEで、明確に違うのは「ディスプレイ」と「通信性能」である。
まずディスプレイのサイズが違うのは、両者の差別化ポイントなので当たり前。iPhone SEは4型のRetinaディスプレイで、iPhone 6sは4.7型のRetinaディスプレイになる。
前述の通り、日常的な使い勝手ではiOSのUIデザインのよさもあり、iPhone SEの画面サイズの小ささを不利に感じることはない。また今回、dTVなど最近人気の動画配信サービスや、ナビタイムジャパンのカーナビタイムなど、大画面ディスプレイの恩恵を感じやすいアプリやサービスも使ってみたが、iPhone SEだと画面の小ささを不利に感じるということはなかった。ただし、カーナビアプリでは、運転中の視認性ではやはり4.7型ディスプレイのiPhone 6sの方が使いやすいのも確かだ。筆者の個人的な印象では、動画配信サービスよりもカーナビアプリの方が、大画面の恩恵を感じやすい。カーナビアプリを多用するというならば、iPhone 6sやiPhone 6s Plusなど大画面モデルの方がお勧めである。
次に通信性能だが、iPhone 6s/6s Plusは最大300Mbps(国内では262.5Mbps)のLTE通信に対応するのに対して、iPhone SEは最大150Mbps。Wi-Fi性能も前者は最大866Mbpsだが、後者は最大433Mbpsである。ここはCPU性能と違い、コンパクト化で妥協された部分といえる。
iPhone SEと5sどちらにもドコモのSIMカードを挿し、実際に都内で簡単にベンチマークを取ってみると、iPhone SEの実効通信速度は、ダウンロード(下り)だとiPhone 6sのおおよそ半分くらいだった。これはiPhoneをテザリングモードで使い、MacBookなどをつないでいる人には少し気になる部分だろう。しかしその一方で、LINEやSNSなど“スマホ的”な使い方で重要になるアップロード(上り)速度は、iPhone SEとiPhone 6sでの差はほとんどない。これはiPhone 6s/iPhone 6s Plusで採用した高速化技術が、主にダウンロード速度の向上のためのものだからだ。実際の使い勝手で見ても、ノートPCのテザリング利用でもしなければ、iPhone SEだからといって通信速度を遅いと感じることはなかった。
iPhone 6s | iPhone SE | |||
---|---|---|---|---|
ドコモ本社前(屋外) | 1回目 | 下り | 75.15 | 16.32 |
上り | 8.42 | 8.41 | ||
2回目 | 下り | 60.34 | 15.54 | |
上り | 7.53 | 24.54 | ||
3回目 | 下り | 89.41 | 15.54 | |
上り | 16.34 | 24.54 | ||
4回目 | 下り | 74.11 | 15.56 | |
上り | 15.5 | 18.13 | ||
5回目 | 下り | 57.52 | 23.74 | |
上り | 16.48 | 20.94 | ||
平均 | 下り | 71.306 | 17.34 | |
上り | 12.854 | 19.312 | ||
インターコンチネンタルホテルラウンジ(屋内) | 1回目 | 下り | 26.99 | 9.28 |
上り | 7.4 | 6.35 | ||
2回目 | 下り | 24.95 | 15.75 | |
上り | 8.97 | 5.3 | ||
3回目 | 下り | 33.95 | 14.66 | |
上り | 9.44 | 2.67 | ||
4回目 | 下り | 35.22 | 12.1 | |
上り | 10.08 | 3.96 | ||
5回目 | 下り | 25.77 | 12.19 | |
上り | 6.01 | 4.84 | ||
平均 | 下り | 29.376 | 12.796 | |
上り | 8.38 | 4.624 | ||
iPhone SEとiPhone 6sにドコモのSIMを挿して通信速度を比較。屋外では電波環境がかなりよいと思われるドコモ本社前と、屋内でノートPCを利用するシチュエーションで多いホテル(インターコンチネンタルホテル東京)のラウンジでそれぞれベンチマークを取った。これを見ると、iPhone SEのダウンロード速度は6sに及ばないものの、アップロード速度は健闘していることが分かる。テザリング利用が多いならばiPhone 6sの通信速度は捨てがたいものの、iPhone単体での利用ならばiPhone SEでも大きな不満はなさそうだ |
筆者は2014年のiPhone 6、2015年のiPhone 6sともに発売日に購入し、メインのスマートフォンとして日常的に使ってきた。また同じく日常的に使っているAndroidスマートフォンも、画面サイズが5.2型のXperiaである。スマートフォンの大型化を、「市場ニーズの変化」であり、「時代の潮流」だと受け入れて積極的に使ってきた。
しかし、iPhone SEを使った時の“しっくりとくる”感じはなんだろう? いかに理屈で抑えつけようとしても、あらがいがたい魅力として押し寄せてくる。これはすなわち、身体性の問題なのだ。まったくもって理性の問題ではない。
無論、iPhone SEによるダウンサイジングが、今後の市場トレンドだとは思わない。やみくもなスマートフォンの大型化に一定のブレーキをかけるかもしれないが、Apple自らが範を示したように、iPhone 6sやiPhone 6s Plusのサイズにもそれぞれ市場があるからだ。
とはいえ、私にはiPhone SEのサイズ感が合うようだ。試用し始めて3日で、理性ではなく身体的欲求として、筆者はiPhone 6sからiPhone SEに機種変更することを決めた。
もし読者諸兄が、今のスマートフォンのサイズに違和感を覚えているのなら、店頭で新しいiPhone SEを手に取ってほしい。掌に包み込んだ時に“しっくりくる”と感じたのなら、恐らくそれがあなたにとってのベストサイズということだ。
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