2年縛り緩和か長期割引か――「選べる自由」で総務省からの要請にも応えたドコモ石野純也のMobile Eye(4月11日〜22日)

» 2016年04月23日 06時00分 公開
[石野純也ITmedia]

 “2年縛り”の緩和をソフトバンクやKDDIが打ち出す中、沈黙を守っていたNTTドコモが、ついにそのプランを発表した。前2社が、2年契約後に縛りのないプランを月300円高く設定した一方で、ドコモは、長期割引と組み合わせることで、ユーザーに「選べる自由」(経営企画部長 阿佐美弘恭氏)を提供。2年縛りのない「フリーコース」に関しては、長期割引が付かなくなる代わりに、料金を据え置いた。

フリーコースとずっとドコモ割コース 2年縛りの緩和と長期ユーザーの優遇を同時に打ち出したドコモ
フリーコースとずっとドコモ割コース 新たな料金プランの狙いを解説するドコモの阿佐美部長

「フリーコース」と「ずっとドコモ割コース」の2つから選べる

 ドコモは、6月1日から新料金プランに手を入れ、2つのコースを導入する。1つが、先に挙げたフリーコース。こちらは、基本使用料そのままで、2年契約後に縛りがなくなるものだ。ただし、長期契約割引として用意されている「ずっとドコモ割」が付かなくなる。もう1つが「ずっとドコモ割コース」。こちらは2年ごとに、契約が更新される従来と同様のコースで、その名の通り、ずっとドコモ割の対象になる。他社が“値上げ”をしたのに対し、ドコモは“値下げをしない”というアプローチを取ったのが、大きな違いといえる。

フリーコースとずっとドコモ割コース 契約から2年後に、「フリーコース」と「ずっとドコモ割コース」を選べるようになる

 2つのコースは行き来が可能で、「フリーコースに入り、他社へ移ることを考えたが、やはりドコモという方はずっとドコモ割コースにすることができる」(阿佐美氏)。逆の場合も、2年契約の更新月に移行が可能だ。どちらのコースを選ぶのかはユーザーの選択に委ねられているが、意思表示をしなかった場合は、自動的にずっとドコモ割コースが適用される。ドコモは、2年契約の更新月を迎えるユーザーに対し、「SMS等のメールでプッシュして、選んでいただく」という。

 同時にドコモは、ずっとドコモ割の対象や金額を拡大した。方向性は3つ。割引の早期化と、割引対象のプランの拡大、一部プランでの割引額の増額だ。まず、割引の早期化については、もともと継続5年以上が対象だったものを4年にした。これによって、ずっとドコモ割が適用されるユーザーがさらに増えた形になる。適用範囲の拡大については、「シェアパック5」「Mパック」「Lパック」に、4年、8年の割引が付くようになる。これらのプランはもともと、10年以上契約して初めて割引が付いていた。

フリーコースとずっとドコモ割コース 「ずっとドコモ割」は、3つの点で強化を図った

 最後の、割引の増額は非常にシンプルで、これまで最大2000円だったものを、2500円に増やしている。ただし、もちろんこれは最高額の「シェアパック30」での話。増額に関しては、「シェアパック15」や「シェアパック20」では200円から300円、「シェアパック10」は100円となる。

フリーコースとずっとドコモ割コース 割引の増額や適用期間の前倒し、適用範囲の拡大を行った

 さらに、ずっとドコモ割コースを選んだ場合、更新月を迎えるたびに、「更新ありがとうポイント」を受けられる。阿佐美氏が「回線ごとにもらえる」と強調していたように、シェアパックで複数回線をまとめて契約している家族ほど、お得になる計算だ。更新時にもらえるのは3000ポイント。仮に5回線をまとめていれば、1万5000ポイント付与される格好だ。

フリーコースとずっとドコモ割コース
フリーコースとずっとドコモ割コース
フリーコースとずっとドコモ割コース 2年に1回、3000ポイントもらえる「更新ありがとうポイント」。期間、用途限定だが、機種変更や提携店舗での利用も可能。回線数分だけポイントがもらえるのも特徴

 これらの施策を一言でまとめると、2年縛りを受け入れるユーザーには、割引をより手厚くしたということだ。より2年縛りを受け入れやすくするよう、データMパックやデータLパックのような、単身向けのデータパックにも改善が施されている。一方で、2年縛りを好まないユーザーにとっても、大きな改悪にはならない。契約期間が短く、単身で契約しているユーザーは、フリーコースを選んでも現状の据え置きになるだけだ。

 一方で、シェアパック契約者はもともと継続利用年数が長い人を主回線にする傾向があったため、フリーコースを選ぶと、ずっとドコモ割が付かない分、事実上の“値上げ”になる。ただし、このプランを選んでいるのは、キャリアを頻繁に乗り換える層ではない。2年契約を強く意識しているわけではないため、強い不満を感じることは少ないだろう。それ以上に、割引の増額を歓迎するはずだ。その意味で、ドコモの2年縛り緩和プランは、“よく考えられている”といえる。

2つのコースを導入したドコモの狙いや背景

 ドコモにとっての狙いはシンプルだ。阿佐美氏が「ずっとドコモ割に行っていただきたいのは本音」と述べていたように、2年縛りはなるべく継続してもらいたい。その方が、解約率の低下につながり、ユーザーの流出を防げるからだ。とはいえ、阿佐美氏は「実際に提供してみないと分からないが」と前置きしつつ、「やはり1割、2割は(フリーコースを)選ぶ方がいると想定している」とも語っている。フリーコースを選ぶユーザーが増えれば、今よりは、解約率も上昇するだろう。

 ただし、これはドコモも計算済みなのかもしれない。キャリアからの流出先として有力な選択肢であるMVNOのほとんどが、ドコモの回線を使っているからだ。阿佐美氏の「どうお付き合いすれば、WIN-WINの関係でモバイル業界を拡大できるか。そういう視点で考えている」というコメントからも、MVNOを活用したいドコモの思惑が透けて見える。

 MVNOは、そのほとんどがドコモの回線を使用している。そのため、仮にドコモからポートアウトしても、契約するのがドコモ回線を借りるMVNOなら、契約者数は減らない計算になる。もちろん、1ユーザーから支払われる料金は大幅に下がることになるが、その分、お金をきっちり払ってくれるユーザーが残る。つまり、ドコモとしてのARPUは上がる可能性もあるというわけだ。また、MVNOがauやソフトバンクのユーザーを獲得してくれば、トータルでの増収につながる。

 阿佐美氏が「MVNOとは競争と協調がある」と語っていたように、競争相手である一方で、ユーザーをドコモにとどめておく効果もあるというわけだ。また、ドコモが手掛ける、上位レイヤーのサービスを販売する相手にもなる。実際、既にIIJやFREETEL、BIGLOBEなど、幾つかのMVNOは、dマーケットのコンテンツをユーザーに紹介しており、ドコモは契約があった際には手数料を支払っているという。

フリーコースとずっとドコモ割コース ドコモはMVNOとの連携も深めている。その一環として、MVNOがdマーケットのコンテンツを販売。写真はIIJの「IIJmio meeting」で撮影

 では、なぜこのタイミングでドコモは2年縛りの緩和や、長期割引の拡大に踏み切ったのか。背景には、行政の方針がある。2年縛りについては、2015年7月に総務省から改善要請が出ていた。安倍晋三首相の鶴の一声で始まったタスクフォースや、それを受けて総務省が策定したガイドラインとは、別の動きである。ドコモは、まずこれに応えなければならなかった。

 一方で、4月1日には、端末の過度な割引がガイドラインによって禁止され、その分を料金で還元することも迫られていた。端末に対する割引を減らしていけば、ARPUは上がる傾向にある。それを通信料の値下げ原資にしてほしいというのが、総務省側の狙いとなるタスクフォースでは、長期ユーザーに対しての割引を手厚くするようなことも議論になっており、ドコモはずっとドコモ割を改善することでそれに応えた格好だ。

フリーコースとずっとドコモ割コース ガイドラインには、過度な端末割引が、通信料金高止まりの一因という指摘が掲載されている

 実際、ドコモは長期割引を充実させたことで、「構造的には減収になる」(阿佐美氏)という。阿佐美氏は「単純に端末価格の見直しと、料金見直しがバランスしているわけではない」と言い、コスト効率化も含めて減収を吸収していく方針を語っているが、端末の割引が減らされていなければ、ここまでの料金改定には踏み切れなかっただろう。

 行政からの要請にきちんと応えつつ、ユーザーにもデメリットのないようなプランを打ち出した点は、高く評価できる。

 一方で、割引を詳細に見ていくと、やや踏み込みが甘いところもある。一例として挙げておきたいのが、「シェアパック10」の割引額。シェアパック15以上が軒並み割引額を上げている中、シェアパック10だけは4年以上の金額が100円上がっただけだ。もともと、シェアパック10とシェアパック15の割引額は同じだったため、その差が広がってしまった形になる。

 阿佐美氏は「(ボリュームゾーンは)公表してない」とコメントを控えたが、ここの割引額を上げるのは、ドコモの収益にとって痛手だということなのかもしれない。ただ、裏を返せば、ユーザーにとってメリットが大きいということでもある。プランの変更が多岐にわたっているため、収益への影響が見通せず、手探りになるのは理解できるが、今後の改善にも期待したい。

 ドコモが2年縛りの緩和と長期ユーザーの優遇を同時に発表した一方で、KDDIとソフトバンクはまだ決め手となる対抗策を打ち出せていない。特に長期ユーザーへの還元は、まだ不足している印象を受ける。本来、ガイドラインは料金値下げと対になったもの。端末の実質価格が上がる中、ドコモに対する対抗策が出せなければ、ユーザーの不満は大きくなるかもしれない。

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