端末購入補助とSIMロック解除のルールが変わる――総務省に聞く“新ガイドライン”の狙い(2/3 ページ)

» 2017年01月25日 06時00分 公開
[石野純也ITmedia]

なぜ「実質0円」が禁止されたのか

―― そもそも、なぜ「実質0円」がダメになったのでしょうか。当初は「0円をもぐる」大幅なキャッシュバックが問題視されていた印象があります。

内藤氏 最初のタスクフォースのときに、どこが行き過ぎかの議論がありましたが、実質0円を下回ると、買わない人が損をしてしまいます

 また、(実質0円は)高止まりの原因にもなります。例えば、10万円の端末を24カ月で割り引こうとすると、月々4000円程度割り引かなければなりません。そうなると、(割引で相殺される対象である)料金プランはどうしても4000円を上回ってしまいます。

 もう1つが、MVNOはこういったモデルを取れないということです。高機能な端末を大量に調達して、それを安売りするという販売方法は、MNOでしか取りえない選択肢で、こういった方法を過度にやると、MVNOが競争上の圧力を受けます。

―― 一方で、端末価格が上がり、負担感が増してしまうという声もあります。こちらについては、いかがでしょう。

内藤氏 もともとの趣旨として、著しい割引はMNPに特化して行われていました。(検討した当時の)価格を出してみると、機種変更の価格設定は実質負担で数万円が一般的です。ここに至るまでを見てきていますが、確かにMNPの実質価格は上昇しています。ただ、これは(割引を)もらいすぎていた人で、機種変更価格やその月々の割引を見ると、実は低廉化しています

 MNPする人はトータル600万人で、分母を1億5000万全部と見るかどうかはありますが、端末を買う人でいっても2割程度、それ以外は機種変更です。機種変更の価格が下がっているので、多くに人にとっては、(負担が)減っている可能性もあります。

 また、(通信料については)ライトユーザー向けのプランを利用するかどうかは個々のユーザーによりますが、長期割引はキャリアによっては3年目以降から割り引くところも出てきました。長期割引が500円ついたり、2年契約の更新のときに3000円相当のポイントがもらえたりと、メリットを受けている方も少なくありません。もちろんその額が十分かどうかは、それぞれの受け止めがあるとは思いますが。

 家計負担の統計で見た場合、現在もフィーチャーフォンのユーザーは3割以上います。この方々が毎年5ポイントぐらいのペースで、スマートフォンに移行しています。これはMM総研さんの調査ですが、フィーチャーフォンだと3000円強の負担額だったところが、MNOのスマートフォンにすると6000円強で倍程度に上がってしまう。MNOの負担を低廉化するのはその意味でも大事で、それと同時にMVNOが多くのユーザーに選択される環境にすることも重要だと思っています。

MNOがMVNOをつぶす恐れは?

―― その意味では、学割などを見ると、MNOもMVNOの価格を意識し始めているような印象を受けます。

内藤氏 今は意識し始めている段階で、サブブランドや子会社でのつばぜり合いも始まっています。今まではMNO対MNOで見ていましたが、今はMNO対サブブランド、子会社を含むMVNOという形に競争が転換しつつあります。これがさらに進むことで、MNOもユーザーニーズを踏まえた料金を出さざるをえなくなります。

―― 逆に、MNOがそこまで踏み込むと、MVNOの存在意義がなくなってしまう恐れはありませんか。

内藤氏 費用構造がMNOとMVNOでは異なります。設備を持っているかどうか、販売店を使っているかどうかで、かかる費用の構造は違ってきます。MNOにとっての採算ラインと、MVNO採算ラインは、採用するビジネスモデルや設備の有無で変わるということですね。ですから、MVNOの料金水準でMNOがサービスを提供できるかというと、そうではありません

 MNOのよさは通信速度かもしれないし、店舗によるサービスかもしれませんが、逆にそれなりの負担があります。一方でMVNOは、安いが自分でセッティングしなければいけないなどがあり、今の段階ではそういった形に分かれています。それぞれがビジネスモデルを工夫すればマージしていくかもしれませんし、さらに分化するかもしれない。もうちょっと中間的な値段でサービスを目指すところがあってもいいし、まさにセカンドブランドはその真ん中を狙っています。

Y!mobileやUQ mobileは規制対象にならない?

―― そのサブブランドですが、MVNO側から規制対象にすべきとの声も出ていますが、ガイドラインには反映されていません。これはなぜでしょうか。

内藤氏 1つはMNOが不当廉売――つまり原価を割って販売し、競争相手を排除することはもともと監視することになっています。子会社のMVNOを通じて何かをやっていないか。特に、有利に扱っていないかどうかは、きちんと見ていく必要があります。そういった趣旨も踏まえ、ガイドラインにおいても、MVNOへの提供状況を注視するという規定を盛り込んでいます。これは、きちんとウォッチし、裏で変なことをやっていないかどうかは見ていきます。

―― MVNOの数も増え、統廃合が進む可能性も指摘されていますが、こちらについて、何か消費者保護のルール作りをする動きはあるのでしょうか。

内藤氏 事業の休廃止をする場合のルールは今の電気通信事業法にもあり、第18条3項で「休廃止をする場合は、余裕を持って周知してください」という規定があります。通信事業は競争的であるため、逆に代替的な事業者も存在するので、止める場合も1カ月以上のノーティス(周知)を確保してもらえばいいとなっています。

 確かに「明日止まる」と言われるとユーザーに不利益が生じるかもしれませんが、1カ月もあれば、代替を見つけられるのではないでしょうか。護送船団方式ではないので、競争の中で事業者が淘汰(とうた)されるのは、ある意味前提になっています。ISPでも止めるところはありましたが、ユーザーさんが乗り換えるといった事業譲渡も進んでいます。

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