競争の激しい格安スマホ業界において、Y!mobileとUQ mobileが絶好調です。ともに関連会社の携帯ブランド「SoftBank」「au」に勝るとも劣らない通信品質と、通話料金も込みの手頃な価格が支持され、契約者数が増加。家電量販店の携帯電話売り場でも、この2社のコーナーはひときわ盛り上がっています。
Y!mobileとUQ mobileにおいて、人気の屋台骨となっている機種がiPhone 5sです。ある量販店のY!mobileスタッフのかたに聞くと、「新規契約の3割ほどがiPhone 5s」とのことでした。他の格安スマホ事業者でiPhoneを提供している事業者はほとんどないため、「月々の料金を安くしたい。でもiPhoneを使いたい」かたは、Y!mobileかUQ mobileを選ぶことになるでしょう。
しかしながら、iPhone 5sはグローバルでの発売が2013年9月と、約3年半も前の機種。長く使うにあたっては気になる点もあります。そこで、他のiOS機種と比較しながらiPhone 5sを分析してゆきます。
前述のとおり、iPhone 5s自体は2013年9月に発売された機種です。ドコモ・au・SoftBank、そしてApple StoreでSIMフリーモデルが登場しました。その後、後継機種であるiPhone 6シリーズ(2014年)、iPhone 6sシリーズ(2015年)の登場により、iPhone 5sは旧機種として収束するかと思われました。ところが、2016年3月にY!mobileが取り扱いを開始し、見事復活を果たしたのです。
同じ2016年3月には、iPhone 5sと同じ筐体でプロセッサ・カメラなどを強化した派生モデル「iPhone SE」が誕生。史上初の「1年に2度のiPhone発表」となりました。
iPhone SEの登場からしばらく経ち、次世代のiPhone 7シリーズ登場が期待されていた2016年7月、今度はUQ mobileがiPhone 5sの取り扱いを開始します。
2013年 | 09月 | iPhone 5s/5c販売開始(docomo・au・SoftBank) | |
11月 | iPhone 5s/5c販売開始(Apple Store) | ||
2014年 | 09月 | iPhone 6/6 Plus販売開始(docomo・au・SoftBank・Apple Store) | |
2015年 | 09月 | iPhone 6s/6s Plus販売開始(docomo・au・SoftBank・Apple Store) | |
2016年 | 03月 | iPhone 5s販売開始(Y!mobile) | |
iPhone SE販売開始(docomo・au・SoftBank・Apple Store) | |||
07月 | iPhone 5s販売開始(UQ mobile) | ||
09月 | iPhone 7/7 Plus販売開始(docomo・au・SoftBank・Apple Store) | ||
スマートフォンの登場からおよそ10年。日々進化し続け、新しいモデルが出るたびに驚きと感動があります。しかし、機種が陳腐になってしまうペースも早く、登場から2年も経てばパフォーマンスが落ち、実用性が低くなるのが常でした。しかしながら、iPhone 5sは発売から2年半経って復活。さらには同じ筐体を持つiPhone SEが出てきたことで、ケースなどのアクセサリー類も復活しました。2013年発売の機種が2017年春商戦でも売れ続けているのは、異例中の異例とも言えるでしょう。
発売から時間が経っているiPhone 5sですが、驚くことに最新のiOS10を導入してもサクサクと動きます。
機種名 | iPhone 5s | iPhone SE | iPhone 7 |
---|---|---|---|
サイズ (高さ×幅×厚さ) |
123.8mm×58.6mm×7.6mm | 123.8mm×58.6mm×7.6mm | 138.3mm×67.1mm×7.1mm |
重量 | 112g | 113g | 138g |
チップ | A7チップ M7モーションコプロセッサ |
A9チップ M9モーションコプロセッサ |
A10 Fusionチップ M10モーションコプロセッサ |
ディスプレイ サイズ |
4インチ | 4インチ | 4.7インチ |
解像度 | 1,136×640(326ppi) | 1,136×640(326ppi) | 1,334×750(326ppi) |
通信速度 | 下り最大100Mbps | 下り最大150Mbps | 下り最大450Mbps |
アウトカメラ | 800万画素 | 1200万画素 | 1200万画素 |
インカメラ | 120万画素 | 120万画素 | 700万画素 |
ビデオ | 最大1080p HD(30 fps) | 最大4K(30 fps) | 最大4K(30 fps) |
Touch ID | 対応(第一世代) | 対応(3第一世代) | 対応(3第二世代) |
3D Touch | 非対応 | 非対応 | 対応 |
防水 | 非対応 | 非対応 | 対応 |
Apple Pay (Suicaなど) |
非対応 | 非対応 | 対応 |
iPhone 7のチップ「A10フュージョン&M10」はスマホであり余るほどのパワーですので、iPhone 5sに搭載されている旧世代「A7&M7」でも、基本操作は快適です。動画編集や高負荷の3Dゲームならともかく、SNSやちょっとした検索くらいに使用するのであれば、iPhone 5sでじゅうぶんでしょう。3年半前に発売された機種ですが、最新のOSが配信され、きちんと使うことができるのは「さすがiPhone」と言ったところでしょうか。
ただし、インカメラの画素数や動画のサイズ、3D Touchや防水の有無など、細かい点で最新機種との差があるので、注意が必要かもしれません。
前置きが長くなりましたが、ここからが本題です。
製品としての活躍期間の長さや、同型の後継機が投入された異例さを考えると、iPhone 5sはスマホ史において「名機」と言い切って差し支えない機種だと思います。しかしながら、Y!mobile、UQ mobileで発売されているiPhone 5sの価格は38,988円からとなっており、2年間、あるいはそれに準ずる長期の継続利用が前提の価格です。
価格の比較をしたものが下の表です。参考として、Apple Storeで販売中のSIMフリーiPhone SEの価格も載せておきます。
キャリア | 一括価格(税込) | 実質価格 (2年継続利用した割引後の価格) |
|
---|---|---|---|
Y!mobile iPhone 5s |
16GB | 38,988円 | 実質100円〜 |
32GB | 42,876円 | 実質100円〜 | |
UQ mobile iPhone 5s |
16GB | 46,764円 | 実質100円〜 |
iPhone SE SIMフリー |
16GB | 48,384円 | なし |
64GB | 53,784円 | ||
この「実質価格」は大手携帯電話事業者で広く採用されている仕組みで、ひとつの機種を継続利用していると、最大2年間は割引が適用されます。ただし、機種変更や解約を行うと適用外になるので注意が必要です。
Y!mobileもUQ mobileも実質価格は驚くほど安いのですが、一括価格はSIMフリー版のiPhone SEと大きな差がないのに注目。中古のiPhone 5sが20,000円前後で購入できることなどを考えると、Y!mobile、UQ mobileのiPhone 5sの一括価格は少し高いように感じられます。
そこで参考にしたいのが、初代iPad miniです。私は地元でiPad教室を開催しており、中高年の方を対象に色々とレクチャーしていますが、初代iPad miniの実用動作が厳しくなっているのを痛感します。キーボードを出したり、検索したりするのに時間がかかり、フリーズしてしまうのです。
機種名 | 発売日 | 初期OS | 最終OS | チップ | RAM(非公開) |
---|---|---|---|---|---|
初代iPad mini | 2012年11月 | iOS6 | iOS 9 | A5 | 512MB |
iPhone 5s | 2013年09月 | iOS7 | ? | A7&M7 | 1GB |
2016年に配信されたiOS10のアップデートはiPad miniへは見送られ、iOS9.x世代でストップ。前述したようなパフォーマンスの問題もあり、iPad miniは現役引退の方向へと移行しています。iPhone 5sと発売が近いiOSデバイスが徐々に退いていく姿を間近で見ていると、iPhone 5sを2年間の利用が前提の価格で購入するのはいかがなものだろうか?と個人的には思います。
iPadシリーズと「名機」iPhone 5sではAppleのサポートの比重も変わるでしょうから単純な比較はできませんし、Y!mobileとUQ mobileのそもそもの料金が安いので、iPhone 5sを選ぶのはじゅうぶんアリだと思います。ただし「この機種を2年間使えるかどうか」をある程度考慮し、そのうえでの購入をおすすめします。
(文・モバイルプリンス)
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