Y!mobileとUQ mobile、2つのサブブランドが激しい火花を散らしている。2月から3月は、携帯電話の新規契約者が増える最大の商戦期。この春商戦に向け、2社は新端末や新サービス、さらに学割を発表した。総務省のガイドラインによってキャッシュバックや実質0円が禁止され、大手キャリア間の流動性が低下している中、競争の主戦場はサブブランドやMVNOに移りつつある。ここでは、春商戦に向けたY!mobileとUQ mobile、そして多くのMVNOがネットワークを借りるドコモの最新動向や戦略を解説していく。記事での価格は全て税別。
「格安スマホに対してどうか。私どもの調査では、おおよそ4割のシェアを得ている」――こう語るのは、ソフトバンクのY!mobile事業を統括する、Y!mobile事業推進本部 執行役員本部長の寺尾洋幸氏だ。「積極的に取り組んできた1年だった」と寺尾氏が語るように、iPhone 5sの導入、1年間1980円からのキャンペーン展開、初のAndroid One対応スマートフォン「507SH」の発売など、2016年はY!mobileに関するニュースに事欠かなかった。
年末からは、SIMロックフリースマートフォンとのセット販売にも力を入れ始めている。「最初の料金プランを作ったときから、SIMフリースマートフォンに対応していた」(寺尾氏)ことを生かし、店頭でのセット販売を強化。SIMロックフリー端末と同時にSIMカードを購入すると、端末を割り引く施策を展開し、「積極的にアピールしてきた」(同氏)。その結果、SIMフリースマートフォンとのセット販売の規模も、「1つの機種ぐらいになっている」(同)と成長。Y!mobileとしても、手応えを感じるような状況になってきたという。
SIMロックフリースマートフォンの比率が上がる中、Y!mobileとして注力するのが、Android Oneだ。春商戦には、シャープ製の「Android One S1」と、京セラ製の「Android One S2」の2機種を投入する。Android Oneは、Googleが新興国向けに始めたプログラムで、地場のメーカーと組み、安価で素のAndroidが入った端末を提供することを目的としていた。いわば、廉価版のNexusシリーズを作る取り組みといえるだろう。Googleは、このプログラムを拡大。日本では、Y!mobileが2016年に発売した507SHが第1号機となった。
この507SHがヒットしたことを受け、開発されたのがS1とS2だ。S1はIGZO液晶を搭載し、省電力なのが特徴。507SHにあったワンセグの機能も省き、よりシンプルな端末に仕上がっている。対するS2は、京セラが得意とする耐衝撃性を備えつつ、フィーチャーフォンからの乗り換えを想定して、赤外線にも対応した。
Y!mobileは、自社で取り扱う製品を、徐々にAndroid Oneへと統一しようとしている。寺尾氏は、サポートコストの低減や、ユーザー体験の統一などを、その理由として挙げる。「そこまで一気に割り切りたいが(できない)」(同)というように、現状では他の機種を並行して扱っているが、MVNO向けのSIMロックフリースマートフォンが増える中、あえて自社でさまざまなコストをかけ、幅広いバリエーションの端末をそろえる必要はないと判断しているのかもしれない。
一方で、MVNOとの差別化にはYahoo!JAPANの力を活用する。春商戦に向けたキャンペーンとして、ショッピング時に付与されるポイントの増量を発表。「Yahoo!ショッピング」や「LOCHACO」での買い物の際につくポイントが、3月31日まで5倍になる。
また、Y!mobileユーザーの特典として「Yahoo!プレミアム」を2月から無料にする。Yahoo!プレミアムは462円のサービスで、利用中のユーザーにとっては事実上の値下げだ。1000万を超える契約者がいるだけに、その影響は小さくないだろう。さらに、18歳以下のユーザーが24カ月間、1000円の割引を受けられる「ヤング割」(契約翌月から1年間は「ワンキュッパ割」を適用)も導入し、万全の態勢で春商戦を迎える。
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