サブブランド同士が火花を散らすKDDIとソフトバンクだが、ドコモは「サブブランドを作るつもりはない」(吉澤和弘社長)と静観の構えだ。Y!mobileやMVNOの影響は、2016年2月に大きくなったが、「そのあとはイメージとしては横ばい」(同)で十分対抗できているという。
吉澤氏は「いかにお客さまに残っていただくかを、ずっとやってきている」といい、料金プランの強化を続けていくことを明言。一例として挙げたのが、フィーチャーフォンからの移行で、「フィーチャーフォンからY!mobileのスマートフォンに変える方が多いが、そういったところには、『はじめてスマホ割』などのキャンペーンを入れ、ドコモの中でスマホに変えていただくことをやってきた」という。
そのはじめてスマホ割には「シニア割」を新設し、60歳以上のユーザーには、24カ月間「カケホーダイライトプラン」への割引を670円増額する。また、一括648円という低価格を打ち出したMONOや、1月27日に発表した「データSパック」へのカケホーダイライトプラン適用も、低価格を武器にするY!mobileやUQ mobileへの流出を防ぐ対抗策という側面がありそうだ。
ドコモの純増数は、スマートフォンやタブレットより「通信モジュールやMVNOの増加率の方がちょっと高い」(吉澤氏)。先に挙げたソフトバンクの寺尾氏のデータを見ても分かる通り、勢いがあるとはいえ、Y!mobileのシェアは4割程度。逆の見方をすれば、6割をドコモとKDDIのMVNOが占めていることになる。auのネットワークを使うMVNOはUQ mobile以外だと、ケイ・オプティコムのmineoや、ジュピターテレコムのJ:COM MOBILEなど、数は限られているため、6割の多くがドコモのネットワークを使うMVNOと見ていいだろう。
この状況で、あえてドコモ自身がサブブランドを作り、価格競争に巻き込まれるのは得策とはいえない。既にドコモからネットワークを借りるMVNOが他社からユーザーを獲得しているため、ドコモとしては“守り”に専念できるというわけだ。防戦を強いられているのは、サブブランドを持つauやソフトバンクも同じだが、ドコモのMVNOは、自社や傘下の企業ではないため、メインブランドや会社としての利益を犠牲にする必要がないのがメリットといえる。
守る大手3キャリアに対し、攻めるMVNOやサブブランドというように、競争の舞台が変わり、その軸も多様化していることがうかがえる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.