国内通信事業では、auとMVNOを含めた「モバイルID数」を拡大する――。KDDI田中孝司社長は、5月11日の決算会見であらためて宣言した。
KDDIの2016年度の営業利益は9130億円で、前年比9.7%増となった。auとMVNOを含むモバイル通信料収入は1兆7863億円(前年比1.8%増)と好調を維持している。
一方、auの契約者数とKDDIグループMVNOの契約数を含む「モバイルID数」は、MVNOがけん引しており、2016年12月の2566万から2017年3月には2602万に増加した。auの契約者数(同一名義の契約を除いたユーザー数)は、2016年12月の2530万2000から2017年3月は2514万2000に微減。代わりにMVNOの契約数が増加し、結果的にモバイルID数全体の増加につながった。
KDDIグループのMVNOは「UQ mobile」「J:COM MOBILE」「BIGLOBE」の3社で、トータルの契約数は2017年3月時点で87万4000に増加した。
各MVNOに期待する役割は以下の通り。まずUQ mobileは、プロモーションも大々的に実施していることから、「MVNO契約数拡大のドライバー」と位置付け、UQスポットや量販店での対面販売を強化していく。スマートフォン初心者をメインターゲットに据えるJ:COM MOBILEは、J:COMの営業網を活用して顧客の関係強化に努める。BIGLOBEはau回線ではなくドコモ回線を使っているため、これをモバイルIDに含める意義がまだ見えにくいが、オンラインの販売網を中心に、新たなユーザー層を開拓していく。
田中氏は「総務省のタスクフォースの影響を受けていて、MNO間の流動がほとんどなくなり、MVNOへの流出が顕著になっている」と危機感を募らせる。MVNOに流れるのなら、グループ内のMVNO事業を強化し、モバイルIDの増加につなげる考えだ。
2017年度のモバイルID数は、前年の2602万から2655万に増加すると見込んでいるが、「auの契約者数は−1.5%になると予想している」と田中氏。複数回線を含めた1契約者あたりの売り上げを示す「ARPA」は、2017年度は前年の6340円から6460円に伸びると見込んでいる。
「トータルのモバイル通信料収入は+0.5%の見込み。ARPAの方が(契約者数よりも伸びが)大きいのでマイナスにはなっていないが、au単体だと(2017年度のARPAは)0.6%減る見込み。こういう状況なので、IDは(auとMVNOの)両方で見る。さらに(非通信領域の)付加価値ARPAを増やして、全体で増収を目指す」(田中氏)
なお、端末の総販売数も落ちており、2016年度の938万台から2017年度は883万台に減少。スマートフォンも762万台から733万台に減少した。
端末の大幅な値引きができなくなったことに伴うユーザー還元については、「全体の数字は持ち合わせていない」(田中氏)が、「au STARを中心に約250億円がリターンと見ていただければと」とした。
ドコモが月額980円の料金を発表したが、現時点でこれに追随する動きは見られない。田中氏は「料金値下げも考えないといけないが、現時点での回答は少し控えたい」と述べるにとどめた。
料金という点では、大容量プラン向けの「テザリグオプション」の無料期間を、KDDIとソフトバンクが当初予定していた「2017年4月」から「2018年3月」までに延長したことも話題を集めている。
無料期間が終わると月額1000円の有料オプションになるが、この値付けの根拠について問われた田中氏は、「その当時はあまり深く考えていなかった、と言ったら怒られるかもしれないが……。このまま有料化しても、ネガ(ティブな意見)しか出ないので、1年延期した」と正直に告白した。
キャンペーンはずっと続き、結局無料になるのだろうか。「来年(2018年)の春以降、無料にするかどうかは、もう少し考えさせてほしい。市場も変化しつつあるので、そのときになったらどうするかを考えていきたい」とした。
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