ドコモの「5Gトライアルサイト」が東京スカイツリーにオープン 東武グループと実証実験も開始

» 2017年05月22日 18時30分 公開
[井上翔ITmedia]

 東武鉄道とNTTドコモは5月22日、第5世代移動体通信(5G)を見据えた取り組みとして、東京スカイツリータウン(東京都墨田区)に「5Gトライアルサイト」を開設した。また、両社は7月1日から8月31日まで、東武スカイツリーライン(東武伊勢崎線)などを運行する特急車両「リバティ(東武500系)」において公衆Wi-Fi(無線LAN)を使ったサービスの実証実験を行うことも合わせて発表した。

ソラカラちゃん、根津嘉澄社長、吉澤和弘社長 5Gトライアルサイトのオープニングセレモニーに登壇した東武鉄道の根津嘉澄社長(中央)、NTTドコモの吉澤和弘社長(右)と東京スカイツリーの公式キャラクターであるソラカラちゃん(左)

5Gトライアルサイト

 5Gトライアルサイトは、「高速・大容量」「低遅延」「同時接続」を特徴とする5Gの要素技術をユーザーに実体験してもらうことを目的に開設する。

 第1弾の取り組みとして、東京スカイツリーの展望デッキからの「4Kマルチストリームライブ配信」を東京ソラマチ(東京スカイツリータウンの商業施設)1階のイベントスペースで「バーチャル展望台」として28日まで公開する。

 また、報道関係者向けには「8Kライブ映像の無線伝送」と「5Gによる多数端末接続イメージデモ」が披露された。

4Kマルチストリームライブ配信(5月28日まで一般公開)

 「4Kマルチストリームライブ配信」は、地上350mの位置にある東京スカイツリーの展望デッキ「フロア350」に設置した4K(3840×2160ピクセル)ネットワークカメラ6台と東京ソラマチ1階に設置した5G伝送装置を光ファイバーで結び、ソラマチ1階に設置した伝送装置で無線伝送した4K動画をリアルタイムに再生するというデモだ。伝送装置は、ノキアネットワークス製のものを利用している。

 ネットワークカメラには、高感度センサーを搭載するソニー製の「SNC-VB770」を採用しており、夜の景色もしっかりと楽しめるという。映像は4K・30フレーム/秒で、ビットレートはカメラ1台あたり30Mbps(6台で計180Mbps)程度となっている。

 このデモでやっている内容自体は「LTEでも条件が良ければできなくはない」(関係者)が、「ユーザーが一斉に見た(通信した)際に、5Gの大容量化を生かせる用途」(同)として展示している。

バーチャル展望台 フロア350に設置したネットワークカメラからの画像を5Gを使って伝送し、3台の4Kディスプレイでパノラマ表示
伝送装置 光ファイバーで展望台から伝送された映像は、基地局(右)と端末(左)に見立てた装置で無線伝送される。伝送装置は4.5GHz帯の電波を利用しており、理論上は10Gbpsの通信速度で伝送できるが、今回は「安定度重視」(関係者)で2.5Gbpsで伝送しているという

8Kライブ映像の無線伝送

 「8Kライブ映像の無線伝送」は、NHKの8K(7680×4320ピクセル)カメラで撮影したフロア350の展望動画を5G伝送装置で28GHz帯の電波を利用して伝送し、リアルタイムに再生することを確認するデモだ。伝送装置はエリクソン製のものを利用している。

 5Gトライアルサイトのオープニングセレモニーでは、途切れることなく8K動画を無線伝送する様子が披露された。

オープニングセレモニーで披露された8K動画 オープニングセレモニーで披露されたリアルタイム8K動画
送信側 送信側の伝送装置のアンテナ部
受信側 受信側の伝送装置。スループットは14Gbps前後をキープしている

5Gによる多数端末接続イメージデモ

 「5Gによる多数端末接続イメージデモ」は、5Gの同時接続に対する強さを実際の利用シーンにおいて想起できるように考えられたデモで、とうきょうスカイツリー駅(東京都墨田区)に隣接する留置線においてリバティの実車を使って行われた。

 5Gを送受信できる端末は現時点で存在していないため、4Kで撮影したリバティのストリーミング動画を5G伝送装置で28GHz帯の電波を利用して伝送し、受信側の装置につないだIEEE 802.11ac対応のWi-Fi(無線LAN)ルーターを介して8台のWi-Fiタブレット(Xperia Z4 Tablet)に同時配信する形で行われた。5G伝送装置はエリクソン製のものを採用している。

 今回はあくまで「デモ」だが、今後は東武グループの協力を得て路線バスや鉄道路線を使って実地試験を行うことも検討しているという。

8人で同時視聴 Wi-Fiタブレットを使って4K動画を同時受信
リバティの前面展望を配信 配信動画はリバティの前面展望動画
Wi-Fiルーター 5G通信のできるタブレットはまだ世に出ていないため、5G伝送装置にIEEE 802.11acのWi-Fiルーターに接続してストリーミング配信を行った
送信側 送信側となる移動基地局車。ストリーミングサーバは車内に設置されているという
受信側 端末に見立てた受信側。6.4Gbps前後の通信速度をキープしている

リバティ車内での実証実験

 リバティの車内では、NTTブロードバンドプラットフォーム(NTTBP)のプラットフォームを活用した無料公衆Wi-Fiサービス「TOBU FREE Wi-Fi」を提供している。

 7月1日から8月31日の実証実験では、同サービスを利用する乗客にNTTドコモの「dマガジン for Biz」とNTTBPの「ささっとパンフ」を提供して通信を活用したサービスへのニーズを探る。いずれも5Gと直接は関係しないが、通信を活用した新サービスを模索する一環として行うという。

 なお、TOBU FREE Wi-Fiは「スペーシア(東武100系)」「東武300/350系」や「TJライナー(東武50090系)」でも提供しているが、今回の実証実験はリバティを使って運用する特急列車でのみ行われる。

「dマガジン for Biz」の提供

 乗客があらかじめスマートフォンやタブレットに「dマガジン」アプリ(Android用iOS用)をダウンロードしておくと、dマガジン for Bizで閲覧できる人気雑誌の最新号やバックナンバーを自由に読めるようになる。アプリはTOBU FREE Wi-Fiを使ってダウンロードすることもできる。

 ただし、dマガジン for Bizは個人向けの「dマガジン」とは読み放題のラインアップが一部異なる。

dマガジン for Biz リバティでTOBU FREE Wi-Fiを利用する乗客にdマガジン for Bizを提供

ささっとパンフ

 「ささっとパンフ」は、NTTBPが無料公衆Wi-Fiサービスのポータルからパンフレットやチラシを配信できるソリューションで、スマホ・タブレットのWebブラウザから利用できる。コンテンツの取り込みにも対応しており、取り込んでしまえばWi-Fiスポットから離れてもコンテンツを参照できる。

 今回の実証実験では、リバティの行き先である浅草・スカイツリー周辺、日光・鬼怒川周辺などの観光パンフレットを作成し、リバティ車内で配信する。

ささっとパンフの一例 ささっとパンフの一例。リバティで配信するコンテンツは「対応言語を検討する」(関係者)というが、多言語対応も視野に入れているという

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