MVNOのSIMが手元に届くまでに行われていること:MVNOの深イイ話(1/3 ページ)

» 2017年07月04日 06時00分 公開
[堂前清隆,ITmedia]

 スマートフォンや3G・LTE対応タブレットを利用するために欠かせないSIMカード。大手家電量販店の携帯電話コーナーでは、MVNO各社のSIMカードがパッケージに入れられて並んでいる様子がよく見られます。

 また、店舗に設けられたMVNOの契約カウンターでは、スタッフがその場でSIMカードを用意して渡してくれますし、Webで申し込みを行った場合は宅配便などでSIMカードが送られてきます。これらのSIMカードが利用者の手元に届く前には、どのような工程を経ているのでしょうか。

SIM スマートフォンの利用に欠かせないSIMカード

MVNOのSIMカードはキャリアのもの

 現在日本に存在するMVNOは「ライトMVNO」と呼ばれ、MVNO自身がSIMカードを発行することはできません。筆者の所属するIIJでは、自社でSIMカードを発行する「フルMVNO」になるための準備を進めていますが、現時点では他社同様に「ライトMVNO」であり、「IIJのSIMカード」はまだ世の中に存在しません。

 それでは、利用者の手元に届いている「MVNOのSIMカード」は誰が発行しているのかというと、MVNOが設備を借りているキャリア(MNO)が発行しているのです。

 多くのMVNOが設備を利用しているドコモでは、MVNO向けに会社名の記載がない白地SIMカードを提供しているため、一目見ただけではドコモのものとは分かりません。しかし、中身はドコモ自身が使っているものと同様です。この白地のSIMカードは2015年12月以前提供されるようになったもので、それ以前はドコモのロゴが入ったSIMカードが提供されていました。また、au、ソフトバンクの両者がMVNOに提供しているSIMカードは、現在でも各社のロゴが入っています。

SIM ドコモ系MVNOのSIMカード

「SIM焼き職人の朝は早い」――パッケージSIM

 SIMカードにはさまざまな情報が記録されていますが、その中でもICCID、IMSI、MSISDN(電話番号)などの各種IDや暗号化のための鍵が、携帯電話網との通信の際に利用されます(関連記事)。

 しかし、キャリアからMVNOに納品されたSIMカードに書き込まれているのはICCIDのみで、その他の情報は書き込まれていません(ドコモの場合)。ですので、このSIMカードをそのままスマートフォンに取り付けても通信はできません。MVNOはSIMカードがキャリアから納品された後に、自分たちでこれらの情報を書き込むことで、通信に使えるSIMカードに仕立てています。

 これら、携帯電話網との通信に必要な情報を書き込むことを「プロビジョニング」といいます。このプロビジョニング作業のことを「SIM焼き」と言ったり、プロビジョニング前のSIMを「白SIM」、プロビジョニング後のSIMを「黒SIM」などと呼んだりすることがあります。公式な呼称ではないのですが、MVNO関係者の間ではおおむねこの呼び方で意図が伝わるように思われます。

 SIMカードに書き込まれている情報は、単に書き込まれてさえいればいいというものではありません。例えば、SIMカードを取り付けたスマートフォンの電源をオンにした際、スマートフォンはSIMカードから読み出したIMSIを携帯電話網内にある機器に通知します。携帯電話網内には、HLR、HSSと呼ばれる機器があり、ここに登録されたIMSIとSIMカードのIMSIが一致して初めて通信が許可されます。

 ですので、プロビジョニングの際には、SIMカードに情報を書き込むだけでなく、同時に携帯電話網内のデータベースに対応する情報を保存する必要があります。これを実現するため、SIMカードのプロビジョニング作業は、キャリアのシステムと連携したシステムで行う必要があります。実際には、MVNOの作業拠点にキャリアの設備と通信するための回線が引き込まれ、そこにキャリアから貸し出されたプロビジョニングのための装置を設置し、オペレーターがそれを操作することになります。

 また、MVNOは自社がどれだけのSIMカードを用意したかを管理する必要があります。キャリアから貸し出されるプロビジョニングのための装置ではMVNO側の事情に応じた管理はできないので、MVNOは別途自社のSIM管理のためのシステムを作り、そこにデータを登録する必要があります。

 結果として「SIM焼き」の現場では、次のような作業が行われることになります。

  1. キャリアから提供された「白SIM」を、キャリアのプロビジョニング装置にセットする
  2. MVNOのオペレーターがプロビジョニング装置を操作し、SIMカードに情報を書き込む。同時にキャリアのシステムにもSIMカードの情報が登録される
  3. 書き込んだSIMカードに関する情報を、オペレーターが自社の管理システムに登録する
  4. 完成した「黒SIM」をMVNOのパッケージにこん包して出荷する
SIM SIMカードが出荷されるまでの流れ

 このようにしてMVNOが作りだめ、物流に乗って届けられたものが、量販店の店頭にあるパッケージングされたSIMなのです。

 大規模なMVNOでは、多数の店舗にSIMを配置するために大量のパッケージを作る必要があります。MVNOの作業拠点では「SIM焼き職人」とでもいうオペレーターが、毎日の生産計画に合わせて1枚ずつ手作業でSIMを焼き続けているのです。

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