「HEIF」「HEVC」っておいしいの? iOS 11で変わった画像・動画形式を知る荻窪圭のiPhoneカメラ講座(4/4 ページ)

» 2017年10月27日 07時00分 公開
[荻窪圭ITmedia]
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「iCloudフォトライブラリ」を使う人は要注意

 注意すべきケースは、高効率画像に対応するデバイスと高効率画像に対応しないデバイスを混在した状態で「iCloudフォトライブラリ」を使っている場合である。

 ちょっと分かりづらいと思うので、筆者を例に取って説明しよう。

 筆者はiPhoneで撮った写真は全部iCloudフォトライブラリを使って自動バックアップしている。Mac(macOS)の「写真」アプリのライブラリはiCloudフォトライブラリと連動しているため、アプリを開くとiCloudにバックアップした写真が自動的にダウンロードされるようになっている。

 そのため、iPhoneで撮った写真はクラウド経由でMacでも観たり編集したりできる。これが超便利なのだ。

 しかし、iCloudフォトライブラリには、撮ったデータがそのままの形でアップロードされる。要するに、高効率画像は高効率のまま保存されてしまうのだ。これの何が良くないかというと、高効率画像に対応しないiOSデバイスやmacOSが混在していると、画像の扱いに制約が出るのである。

 macOSではHigh Sierraから、iOSならiOS 11から高効率形式に対応している。それ以前のバージョンでは、その対応に大きな制約がある。例えば、macOS Sierra(High Sierraの1つ前のバージョン)では、写真アプリで高効率画像のプレビューは見られるものの、完全な画像(元の画像)を使ったアクションができない

macOS Sierraの写真アプリでHEIFを見ようとする macOS Sierraの写真アプリでHEIFを見ようとすると、このような警告が出る。プレビューはできるが、それ以上のことをするには制約が生じる

 複数のデバイスでiCloudフォトライブラリを使っている場合は、全部のデバイスを最新OSにするか、ファイルの保存形式を「互換性優先」のままにすることをおすすめする。

Appleはなぜ「HEIF」に行くのか?

 HEIF(やHEVC)を使うことで、画像(や動画)のファイルサイズはより小さくできる。でも、世の中のスマホの大半は昔ながらのJPEG(やH.264動画)使い続けているし、別に新しい形式に行かなくても支障はない。というか、今まで旧形式を使っても困る事も別になかったはずだ。もっといえば、iPhone/iPadのカメラを高効率モードにしても、長押しで連写した場合は従来通りJPEG形式で保存される。

 要するに、高効率に切り替えても、全ての静止画を高効率形式で撮影する訳ではない。ある意味で“中途半端"な状態だ。

 では、それならなぜAppleは新しい静止画の画像コーデックにHEIFを採用したのだろうか。たぶん、将来を見据えたからだと思われる。

 HEIFは画像の圧縮効率に注目が集まりがちだが、良さはそれだけにとどまらない。HEIF画像を保存するHEICファイルは、JPEGファイルよりも多くの情報を収納できるように設計されているのだ。

 例えば、複数の画像を1つのHEICファイルに記録できる。連写した写真や、HDR(高ダイナミックレンジ)処理した写真と処理前の写真を1つのファイルにまとめておくことができるのだ。静止画と動画を1つのファイルに同時保存したり、派生画像(編集履歴)をファイルに記録したりもできる。

 ……と、ここまで見ると分かる通り、HEICファイルはiPhone・iPadの撮影機能との親和性が非常に高い。

 今のiOS 11では、連写した写真はJPEG形式で保存されるし、Live Photosの撮影時には静止画と動画を実は別のファイルで保存している。HEICファイルの良さを生かしきっているとは言い難い状態だ。

 しかし、iOS(とデバイス)を何年かかけてバージョンアップしていく過程で、いずれはHEICファイルに完全移行して、1回の撮影で得られる全てのデータを1つのファイルに収めようと考えているんじゃなかろうか。

 そうすると、1つのファイルに入った複数の画像データを元に、後からさまざまな処理をかけられる。実に面白い。

 この辺の話は、HEICファイルに関する英語の文献(文献1文献2)を参考にあれこれ想像して書いているので、実際にどうなるかは不透明だ。本領を発揮するのはもうちょっと先かもしれないが、AppleがHEIF(とHEVC)を採用したのは将来を見据えた動きであると筆者は思っている。

 将来をお楽しみにってことで。

で、結局どっちが良い?

 あれこれ試してみた結果、「今使ってるiPhoneが唯一のiOSデバイスで、写真や動画をよく撮る」っていう人は高効率にした方が良い。撮り過ぎてストレージが足りない、ってことが減る。

 複数のiOSデバイスやMacを連携させて使っている場合、全デバイスのOSを最新版にアップデートできるなら高効率で構わないと思う。しかし、「仕事の都合などで全デバイスをを最新OSにするのはリスキーという人は互換性優先にしておいた方が当面は良いかもしれない。

 なお、今回はiPhone 7/7 Plusの人を念頭に書いたけれど、iPhone 8/8 Plusで互換性重視にすると動画性能がちょっと落ちる。「4K(3840×2160ピクセル)・60フレーム/秒」と「1080p(フルHD:1920×1080ピクセル)・240フレーム/秒」の撮影ができないのだ。これは悩ましいかも。

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