「サブブランド」「楽天対抗」をする考えはなし ドコモ吉澤社長があらためて表明

» 2020年07月10日 12時45分 公開
[田中聡ITmedia]

 NTTドコモの吉澤和弘社長が、他社で言うUQ mobileやY!mobileなどの「サブブランド」展開の可能性について、「今時点でもやる考えはない」との考えを、ITmedia Mobileのインタビューで示した。あわせて、楽天モバイルに対する動きを、MNOとMVNOの両面から聞いた。

吉澤和弘 NTTドコモの吉澤和弘社長

ギガホとギガライトですみ分けができている

 2020年10月からUQ mobileがKDDIの事業に統合され、Y!mobileも含め、KDDIとソフトバンクがサブブランドの勢力を強めようとしている。それだけでなく、料金プランでも攻めに転じた。UQ mobileが6月から提供している「スマホプランR」は、月額2980円で10GBまで通信でき、10GBを超過しても1Mbpsで使い続けられる。

UQ mobile UQ mobileの新料金プラン「スマホプランR」

 この動きにY!mobileも追随し、月額3680円の「スマホベーシックプランM」を9GBから10GBに増量し、10GB超過後の速度を1Mbpsとした。月額4680円の「スマホベーシックプランR」も低速時の速度を1Mbpsに改定した。

 UQ mobileは契約数が200万を超えるなど右肩上がりで伸びており、Y!mobileも「そこそこのデータ容量で安く使いたい」というソフトバンクユーザーの受け皿になっている。ソフトバンクはY!mobileよりさらに安いLINEモバイルも擁しており、マルチキャリア戦略が奏功している。

Y!mobile ソフトバンクは3ブランド戦略で流出を防ぐ考え

 こうしたサブブランドの動きに対してドコモがどう出るのかが注目されるが、吉澤氏は以前から「サブブランドはやらない」と明言しており、その考えに変わりはないようだ。その理由は明快で、自社のプランですみ分けを図ればいいと考えているからだ。

 吉澤氏はサブブランドの存在意義に懐疑的で、自社サービスですみ分けをしないと「意味がない」と話す。また吉澤氏は、メインブランドとサブブランドで同じようなプランがあることにも触れ、「何を持って差をつけけているのか、意味合いがハッキリしていればいいが、していない」と疑問視する。

 サブブランドでは、メインブランドと比べてデータ容量と料金を抑えたプランが主流だが、ドコモも低容量のユーザーに対しては、7GBまでの「ギガライト」を提供している。「違う動きが出てくるのなら対応しないといけないが、そういった(ギガライトの)中で値付けをやれば、対抗できると思う」とした。

 ただ、ドコモでは月間10GB程度のデータ通信ができる中容量のプランがないのも事実。UQ mobileとY!mobileは、小容量と大容量の間を埋める絶妙なプランが特徴でもあるが、ドコモはこのゾーンを攻めないのか。いうなれば「ギガミドル」のようなプランになるが、吉澤氏は「それは考えていないし、それをやるなら、5Gギガホは100GB無制限なので、関係なく使ってください(と言いたい)」と否定する。

 また、プランを1つ増やすことで、ユーザーが選びにくくなることをデメリットに挙げる。「他のプランを出したら『またたくさんあって複雑だ』と言われ、シンプルにすると、「自分に合ったものがない」と言われる(苦笑)」(吉澤氏)というのは、ドコモに限らずよく聞く話で、キャリアやMVNO特有のジレンマといえる(個人的には、3プランまでなら許容範囲だと思うが)。

楽天モバイルユーザーが「1年後にどういう振る舞いをするか」

 UQ mobileのスマホプランRは“楽天モバイル対抗”を明確に打ち出しているが、ドコモは現状の楽天モバイルをどう見ているのか。吉澤氏は「月額2980円でアンリミテッドなので、料金そのものは非常にインパクトがある」と評価するが、エリアが狭いため、「今はローミングせざるを得ない」と述べる。

楽天モバイル 「1年無料が終わった後」にどれだけユーザーが残るかが注目される楽天モバイル

 「お客さんがその料金(月額2980円)で期待されているのは、どこに行ってもアンリミテッドであること。どこ(どのタイミング)でそういうことが言えるのか」が重要だとみる。月額2980円は1年間はキャンペーンにより無料だが、「1年後に有料になったときに、今申し上げたこと(どこでもアンリミテッド)が完全にできているかというと、できていない。料金的にはインパクトがあるが、楽天をどんどん使うことは、今の状況からはならない」との考えを述べた。

 楽天モバイルは、6月30日に申し込み数が100万を突破した。「100万の内訳は知るよしもないが、新規が多いのでは」と吉澤氏はみる。「auやソフトバンクからどのくらいかは分からないが、ドコモから(の移行)はすごく少ない。MVNOからの移行は一定数はあるが、100万に対しては多くはないと思う。Rakuten Miniの1円キャンペーンもあり、2台目で契約されている方が多いのでは」

 現在の楽天モバイルユーザーが「1年後にどういう振る舞いをするかが重要」(吉澤氏)だが、「それまでにドコモが料金に対してすぐに追随することにはならない」とし、当面は楽天モバイルへの対抗策を打ち出す予定はないことを示した。

 楽天モバイルのMVNOサービスは、既に新規契約を停止しているが、サービスの終了時期は未定。吉澤氏は楽天がMNOに参入するのなら、MVNOは早期に終了すべきとの考えを常々述べてきたが、新規契約を打ち切ったことで、サービス自体を一刻も早く終了すべきとまでは考えていないようだ。

 「auさんとのローミング契約は(2026年3月末まで)年限を定めているので、少なくともその間は(継続する)。本来ならもっと早く(終了すべき)だと思うが、われわれのお客さんでもあるので。事業者間ではそういう話はしつつある。楽天さん自身も(エリアの)開設計画を定めているので、そこに照らし合わせて、そこまでには移ってくださいとなる」(吉澤氏)

 楽天モバイルが総務省に提出した開設計画では2026年3月末までに人口カバー率96%を達成する見込みで、KDDIのローミング契約の時期と同じ。MVNOの楽天モバイルは、遅くとも2026年3月末には終了することになりそうだ。

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