シャープがスマートフォンの新シリーズ「AQUOS wish」を発表、2022年1月中旬以降にauとソフトバンク(法人)から発売される。AQUOS wishは、最小限の機能に絞ったエントリーモデル……と聞くと、何の変哲もない安価なスマホだと思われがちだが、どんな狙いでこのシリーズを開発したのか。
【訂正:2021年12月8日20時40分 初出時、AQUOS wishの発売時期に誤りがありました。おわびして訂正いたします。】
シャープはフラグシップの「AQUOS R」、軽量ボディーを追求した「AQUOS zero」、必要十分な機能を備える「AQUOS sense」という3つのシリーズでスマートフォンを展開している。今回、その中にAQUOS wishが加わることになる。
機能を絞ったモデルという意味では、AQUOS senseとかぶる部分もある。スペックはAQUOS sense6の方が高いとはいえ、なぜ、あえてエントリーモデルを加えたのか。これまで、ベーシックなスマホといえば「安くて性能を抑えたもの」という考え方だったが、これはあくまで機能の価値観だとシャープは考える。
一方で、モノを取り巻く環境は変わってきており、「シンプルであるべき」「モノを持ちすぎない」「気に入ったモノを長く大切に使い続けたい」といった価値観が急速に広がってきているという。シャープは「機能や要素を引き算することに価値を見いだせない。安いことを提供するよりも引き算したことが社会的価値につながっていく」(小通信事業本部 パーソナル通信事業部長 小林繁氏)と考え、AQUOS wishの開発を決めた。これは、SDGsに代表される「持続的で社会に役立つ価値観」にもつながるという。
スマートフォンはどんどん高機能化して使いやすくなる一方で、スマホに縛られて時間を浪費してしまいがちだ。複眼カメラや高性能なプロセッサが全員に必要なのかという疑問もある。そこでAQUOS wishでは、スマホを使う上で欠かせない機能に絞り込み、「シンプルで飾らないスマホ」を目指した。
もう1つ着目したのが「ソーシャルグッドな意識の高まり」だという。ソーシャルグッドは「地球環境や社会に対して好影響を与える」という意味。AQUOS wishの本体には再生プラスチック素材を35%使い、パッケージは紙の使用量を減らしてリサイクルに出しやすくした。
通信事業本部 海外事業統轄部 マーケティング推進部 主任の福永萌々香氏によると、シャープの調査に基づき、買い物にエコバッグを持ち歩く、ごみを細かく捨てるなど、ソーシャルグッドを意識する人々が増えているという。特に80〜90年代に生まれたZ世代に見られる志向だそうで、「自分が必要なものだけを選んで、飾らず持ちすぎない方がかっこいい」と考える人も多いそうだ。
AQUOS wishを持つことでソーシャルグッドを体現できる――ということで、メインターゲットはZ世代になるが、ケータイから乗り換える層や、初めてスマートフォンを持つ中高生に使ってもらうことも意識している。シニアと若年層の両方が使えるスマートフォンは意外と少なく、「この2つの需要に架け橋がない」と小林氏。そこで、デザインやカラーは性別や年代を問わず使ってもらえるよう、シンプルなものにした。
機能をそぎ落としたとはいえ、5G、防水、おサイフケータイといった基本的なスペックは押さえている。長く使えるよう、2年間で最大2回のOSバージョンアップも保証する。一方でIGZOディスプレイや複眼カメラなどの搭載は見送った。
小林氏は「ただ安さを競うものではない」と言うが、価格は気になるところ。近いスペックの「arrows We(FCNT製)」が、auでは2万6180円(税込み、以下同)で販売されており、AQUOS wishも同じ価格帯になることが予想される。キャリアが限度額いっぱいの2万2000円まで割引をすれば、実質数百円〜0円になる。
auの「AQUOS sense6」は4万470円なので、2万円台ならsenseシリーズとも差別化を図れる。より低価格で幅広い層をターゲットにしているAQUOS wishは、AQUOS senseに次ぐヒット作になる可能性が高い。
国内スマートフォン市場で、シャープはソニーやサムスン電子と激しい争いを繰り広げており、2021年度上期はソニーにAndroidのシェア1位を奪われる形となった。AQUOS senseとAQUOS wishで普及モデルに厚みを持たせることで、今後さらにシェアを伸ばすことが期待される。
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