楽天モバイルにおける「1日10GB制限」の存在は、筆者を含むユーザーの検証で明らかとなったものです。その制限が撤廃されたらしいと分かったのも、ユーザーの検証がきっかけでした。何が言いたいのかというと、正式サービスが始まって以来、楽天モバイルは通信制限の条件変更を一切アナウンスしていないのです。
ではなぜ、10月に突如「1日10GB制限」が撤廃されたのでしょうか。その“ヒント”になりそうなのが、9月に改正された「電気通信事業法の消費者保護ルールに関するガイドライン」です。
このガイドラインの「電気通信役務の内容(第3号)」の第7項には「その他の利用制限(第3号ト)」という項目があり、以下のように明記されています。
これまで掲げた事項のほかに電気通信サービスの利用に関する制限があれば、その旨も含めて説明しなければならない。その例として、電気通信事業者が意図的に電気通信役務の利用に係る制限(ネットワーク上の混雑回避のための帯域制御等、あらかじめ定められたデータ使用可能容量を超えた場合の速度制限等)を実施している場合には、実施内容に応じてその制限の内容を説明する必要がある。帯域制御等に係る制限の内容としては、制御に該当する基準(大量に通信を行う特定のユーザを対象とする場合は制御の対象に該当する通信量等を、特定のアプリケーションの通信を制限する場合には、当該アプリケーションの名称をいう。)、制御の発動条件、制御の対象となる時間帯、場所、頻度、制御後の水準等が該当する。
(中略)
なお、制御に該当する基準が複雑な場合には、説明時には制限の実施される代表的な例を示し詳細については契約書面で確認をするよう説明するとともに、消費者が問い合わせた場合には適切に回答できるようにすることも可能である。(以下略)
この記述自体は改訂前からあり、改定後もそのまま存置されることになりました。しかし、改定に伴うパブリックコメント(意見)を募集した際に、ある個人から以下のような指摘がなされました(総務省が公表した意見募集結果をもとに、一部体裁を整えています)。
通信サービスにおける通信可能容量・速度制限は料金プランの根幹となる極めて重要な要素であるにも関わらず、実際には大容量プランにおける速度制限の詳細についてはほとんど消費者に明らかにされていない。
具体的に、ある1社では、プラン紹介として「100GBでも200GBでも自社回線エリアはデータ無制限」として広告されており、重要事項説明書においては「お客様に公平にサービスを提供するために有益と認める通信速度の制御」が行われるとしている。しかし、実態としては0時を基準として1日に10GBを超える通信を行うと3Mbpsに規制される、単純な基準による運用が2年以上行われていると考えられ、月200GB使うようなユーザを想定した場合、通常の利用用途範囲内で制限が行われている可能性が高いと考えられる。
他社でも、実態としてほぼ制限が行われていないものの、その制限内容の説明は極めて不明瞭である。
ここで、ガイドラインにおいて、「制限の内容を説明する必要がある」とし、その内容が具体的に説明されているにも関わらず、そのあとに記載された「不適切な例」を読むと、一切制限がないように装わなければ問題がないとも読むことができる文章になってしまっている。(以下略)
名指しこそされていないものの、例示されているのは明らかに楽天モバイル(Rakuten UN-LIMIT VII)です。この個人が問題視したのは、制限を「行うことがある」としているのに、実際は「一律かつ無条件に制限がかかる」という矛盾です。
時系列的に考えると、パブリックコメントで「矛盾」を指摘されたことにより、一定のしきい値による一律制限を取りやめることになったと考えるのが自然といえそうです。
以前の連載でも指摘しましたが、楽天モバイルは自社に有利なことは大々的にアピールする反面、自社に不利なことは極力説明を避けようとする傾向にあるように思えます。災害が発生した際のWebサイト上での告知はよく改善されましたが、通信制限に関する説明は改善の余地がまだあるのかなと思います。
ただ、先のパブリックコメントの個人の意見にもあるように、他社に全く問題がないかといえばそうではありません。業界全体で、より分かりやすい形での条件告知を心掛けてほしいと思います。
今までの「1日10GB制限」が撤廃されたこと自体は大変喜ばしいことなのですが、楽天モバイルから公式な説明が一切無いことは非常に残念です。特に「容量無制限」をうたうサービスでは、その「例外」についてしっかりと説明することがリスクを回避する上で非常に重要だと思うのですが……(参考記事)。
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