スマートフォンはカメラであり電話機でありインターネット端末でありゲーム機でありスケジューラーであり時計であり財布であり……とにかくそこに入ってデジタル化できるものなら何でもこいなんだけど、いろんなジャンルが1つにまとまっているおかげで、用語が大変ややこしいことになっている。
例えばカメラ。スマートフォンもこれだけカメラとして使われるようになるとその性能や機能を表記するのにカメラ用語はさけられず、ある程度詳しくないと何をいっているんだかよく分からない指標がいくつも出てくるのだ。
そこでスマホユーザーに送るカメラ用語の話。
最初は分かりづらいF値からだ。
スマホの仕様をいくつか見てみると、「F1.7」や「f/1.7」という表記が必ず入っている。
これは何か。
カメラが搭載しているレンズの性能を表す指標の1つ。
FはFocalの略なのだけど、なぜFocalなのかは話がややこしくなるので気にしなくていい。日本語だと「絞り値」とするのが一般的だ。アップルは「絞り値」、ソニーやサムスン電子は「F値」としているがどちらも同じである。
この数字、大ざっぱにいってレンズの口径を示すもの。本職カメラのレンズだと絞り値は可変なので、「開放F値」と呼ぶのだけど、スマホの場合は「固定」なので、F値=口径と思っていい。
デジタル一眼用の開放F値がF1.4のレンズで絞りを一番開いた状態(F1.4)と、F2.8に絞ったときの写真を見てほしい。
このF値がなぜ大事かというと、このF1.4とF2.8の違いを見ると分かるように、径が大きい方が光を多く取り込めるから(俗に「明るいレンズ」とか「レンズが明るい」という)。光を多く取り込めればその分イメージセンサーに当たる光の量も増えるのでスマホの場合は「レンズが明るい方が優秀」と思っていい。
ただF値が分かりづらいのは「mm」とか「画素」というような「単位」がないからだと思う。
レンズの口径なら「mm」でいいじゃんと思うかもしれないけど、実際の性能はレンズの焦点距離と口径の関係で決まる「口径比」なので、径だけをmmで示しても意味がないのだ。
そこで、口径比が1になる「1.0」を基準に、数字で表すことにした。それがF値だ。光が通る量が「半分」になるとF1.4、さらに「半分」になるとF2.0と数字が大きくなっていく。
実は「1.4」は「1/1.4」「2.0」は「1/2.0」のこと。逆数にしているのである。実際には「F1.4」は「1/1.4」なのでその分光の量が減るのだ。F1.4は「f/1.4」と書くこともある(どっちの表記を使うかはメーカー次第)。こっちの方がピンときやすいかも。
じゃあ次の疑問。なぜ1.0の半分が2.0じゃなくて1.4なのか。口径というのはレンズの「直径」のことだけど、光を通す大きさは「面積」で、面積は「π×r^2」だからだ。
径が1/2になれば面積は1/4になり、面積を半分にしようとおもうと径は「1/√2」倍。およそ「1/1.4倍」。だからF1.4。カメラの世界では「2倍」や「1/2倍」を「1段」と考えるので、光の量を2倍ずつ(あるいは半分ずつ)にしようとすると、そういう小数がらみの数字になっちゃうのだ。
で、スマホの話に戻る。Xperia 5 IVで見てみよう。
超広角の16mmがF2.2、広角の24mm(メインカメラだ)がF1.7、望遠の60mmがF2.4となっている。
さっき書いたようにF値は焦点距離との口径比なので、同じF値を維持しようと思うと、望遠になるほど大きなレンズが必要になるけど、スマホのサイズを考えるとムチャはできない。だからどのスマホも望遠カメラのF値は低いのだ。
典型的なのがサムスン電子のGalaxy S23 Ultra。10倍の望遠カメラは焦点距離が長い分、F値もF4.9と暗い。
またセンサーサイズが大きければ大きいほど、その分レンズの口径も大きくしなきゃいけない。でもそれをするとスマホのカメラユニットは分厚く大きくなる(今でさえ飛び出ているといわれるのに)ので、F値をよくするには限界がある。
カメラのスペックは複数の要素が絡み合って決まるので、なかなかややこしい。ユーザーとしてはF値の数字が小さい方が光を通す面積が大きくて高性能なんだけど、センサーサイズが大きくなるほど、望遠になるほど難しくなるって頭に入れておけばいいかなと思います。
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