コロナ禍での渡航制限が終わり、povo2.0に国際ローミングを求める声は日増しに高まっていたという。KDDI Digital Lifeが行ったアンケート調査では、キャリア選択時に国際ローミングを重要視するユーザーが71%にも上ったという。少し重要から必須まで温度差はあるが、まったく考慮しないユーザーは少数派だ。povo2.0に求める新サービスでも、トッピングのデータ容量拡充やラインアップ拡充を大きく上回り、6.4%で1位になった。
帰国時のPCR検査やワクチン接種証明書の提出といった海外渡航の制約がなくなったあと初めて迎える夏休みが迫るなか、国際ローミングの導入は必須だったといえる。一方で、秋山氏が「だったらもっと早くやれという話ではある」というように、導入が遅くなったのも事実。コロナ禍で海外渡航者数が激減していたことに加え、国際ローミングというサービスの方向性に「悩みがあった」というのが、その理由だ。
秋山氏は、「海外に行って使う際の究極の形は、ローミングではないのではないという思いかずっと頭の中にあった」と述懐する。国際ローミングは、2G時代に始まった「レガシーな感じがする」ソリューション。最近では、eSIMに対応した端末が普及し、海外通信を専門にするMVNOのような事業者も台頭している。こうした事業者は、それぞれの国のキャリアやMVNOから直接調達したプロファイルと、幅広い国でローミング可能なキャリアのプロファイルを組み合わせて販売している。
秋山氏は、その例を挙げつつ、「現地SIMを手軽にワンタップで買えるのが、あるべきイノベーションだと思っている」と語る。アプリ上で国や地域を選び、簡単な操作でプロファイルを購入でき、それを端末にインストールするだけで使えるというユーザー体験は、povo2.0のそれに近い。秋山氏も、「国を選んでプロファイルをダウンロードするのは、トッピングで国を選んで買うことの延長線上にある」と語る。
まずはユーザーにもなじみがあり、実現しやすい国際ローミングを開始したものの、直接海外事業者のプロファイルをダウンロードできるeSIMのサービスは「何とかすべきだと、いまだに思っている。グローバルeSIMは関心事項」だという。KDDIは、海外向けのeSIMを提供するソラコムも傘下に抱えているため、そこで培った知見やサービス運営のノウハウがpovo2.0に反映される可能性もある。
また、「グローバルなeSIMプレイヤーが今後進化していけば、ローミングの価格との競争が起こり、価格が下がっていくこともきっと起こる」という。povo2.0がワイドとして提供している国や地域での国際ローミングが、もっと手軽に使える価格になることも十分あるというわけだ。「商品開発は、ここで終わりではない」と語る秋山氏だが、国際ローミングにとどまらない、新たな海外通信の形にも期待したい。
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