2022年のMate 50シリーズから進化した「フラグシップ」となったMate 60シリーズ。前回と異なり発表会や事前告知もなく突如発表された上に、スペックの多くを「ブラックボックス」として発売したあまりにも異例ずくめのスマホとなった。
ふたを開けたら自国製のプロセッサを採用して米国の制裁を回避していたのだから驚きだ。5Gに対応している可能性も極めて高く、基本性能も欧米で販売されるハイエンド機に迫る。
一方、過去のHuawei製スマートフォンに感じたイノベーティブな要素はあまり多くない。ある意味Mate 50 Proと体験的な部分は大きく変わらないところも多く、ゲーム性能などはむしろ下がっている部分もあることは否めない。
ただ、このようなスマートフォンを「中国だけで製造した」というのが1つのマイルストーンだと評価できる。制裁下でも5G通信に対応させた可能性が高く、自国で高性能なプロセッサも製造できる。まさに、中国が国策で行っている半導体事業の成果が出た形となった。
既に米国ではHuaweiに関するこの手の報道が多くなされている。部品を内製することで米国の制裁を跳ねのけてしまったとしたら、かなりの脅威になることは否めない。これに対しBloombergなどをはじめ、多くのメディアが「今後Huaweiへの制裁をさらに強化すべきだ」と指摘している。
その一方で「今までの制裁は意味をなさなかった」「中国の半導体産業はわれわれが思っている以上に高い技術を持っている」と中国を評価するような報道も見られる。Huaweiの話題は日本以上に注目されるトピックとなっている。
Mate 60 Proは中国での関心もとても高く、入荷してもすぐに売り切れる状態が続いている。転売される香港でも市場価格が高騰しており、定価で購入することは困難な様子だ。
そのような中でHuaweiは、Mate 60 Proの上位モデルとなる「HUAWEI Mate 60 Pro+」に加え、折りたたみ端末の「HUAWEI Mate X5」を矢継ぎ早に投入した。加えてタブレット端末であるMatePad Pro 13.2にも同プロセッサが採用されており、欧米で言われる「SMICの歩留まりが悪い」と指摘する報道をはねのけるかのように勢いを増している。
Mate 60シリーズの素性が明かされるたびに「復活のHuawei」と現地では報じられるなど、注目度も高い。これに対し、今後米国などがどのような制裁等の行動で立ち回るのか、中国の半導体事業がそれをも上回る大きな成果を得て市場に対して存在感を示すのか。
いずれにせよ、Huaweiのスマートフォンが、米国制裁による衰退から、中国の半導体事業の内製化による復活という新たな局面に突入していることをうかがわせる。今回のMate 60 Proというスマートフォンは、携帯電話界の歴史に残るマイルストーンのような存在だと考える。
Mate 60シリーズの価格はMate 60で5999元〜(11万円前後)、Mate 60 Proで6499元〜(13万円前後)、Mate 60 Pro+で8999元(19万円前後)の設定となる。Mate 60シリーズは「あえて買うか」と聞かれると悩ましいが、Huaweiのスマートフォンをずっと追いかけ続けたファンにとって、後悔させない仕上がりであることは間違いない。
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