さらに、Galaxy S24シリーズは、Google検索の新機能である「かこって検索」にも先行的に対応している。これは画面上に表示されたさまざまな物や文字を特定し、検索する機能のこと。ホームボタンやナビゲーションバーを長押しすると検索モードになり、画面の一部を丸で囲んだり、線を引いたりすることで指定でき、その結果が画面下部に表示される仕組みだ。
また、この検索結果に対し、質問を入力すると、生成AIによる回答も表示される。これは、Googleが日本や米国などで導入している「SGE(生成AIによる検索体験)」を応用したもの。Galaxyの独自機能ではなく、Androidの機能だが、Galaxy S24シリーズには発売時点でかこって検索が実装されている。Googleによると、この機能に最速で対応するのは、自社のPixel 8シリーズとサムスン電子のGalaxy S24シリーズだけ。GalaxyをAndroidの“代表”として、自社端末と同様に優遇しているというわけだ。
前回の連載で取り上げたように、Androidのファイル共有機能である「ニアバイシェア」も、サムスン電子の「クイック共有」に統合される。統合は2月からの予定だが、米国などで1月31日に発売されるGalaxy S24シリーズには、既にニアバイシェアが搭載されていない。クイック共有を立ち上げた際には、Galaxyだけでなく、Androidスマホ全体とデータを共有できる旨が案内される。GoogleのAIモデル採用やかこって検索の先行導入、さらにはニアバイシェアのクイック共有との統合など、サムスン電子はGoogleとの関係性をさらに縮めてきたように見える。
一方で、同社はかつて、Microsoftとの連携をアピールしていた時期もあった。Galaxyシリーズも、ギャラリーアプリには「OneDrive」が、Samsung Notesには「OneNote」が組み込まれており、Androidが標準で採用する「Googleフォト」や「Google Drive」とは連携しない。GalaxyシリーズがプリインストールするOfficeアプリも、Microsoftのもの。一時は検索エンジンを「Bing」に変更することも検討していたと報じられており、GoogleのAIを全面的に採用したことには意外感もあった。
とはいえ、メーカーはある意味中立な立場。サムスン電子が2大プラットフォーマーと“等距離外交”を展開していると考えれば、その理由も説明がつく。Googleだけに依存していると、同社の純正スマホであるPixelを筆頭にした他社のAndroidとの差異化が難しくなる。実際、Galaxy AIも一部にPixelとの重複がある。また、PCなどとの連携を踏まえると、WindowsやOfficeに強いMicrosoftとタッグを組んだ方がAppleに対抗しやすくなる。Galaxyの中に、GoogleとMicrosoftを共存させることで、端末の特徴やGalaxyとしてのエコシステムの特徴を打ち出しやすくなっている。
サムスン電子の盧氏は、Unpackedの冒頭で「オープンなコラボレーションを通じて、意義のあるイノベーションを提供する」と語っていたが、ここには、GoogleやMicrosoftといったプラットフォーマーも含まれる。まさにこれは、年間で2億台以上のスマホを販売するサムスンならではの戦略で、他社が追随するハードルは高い。Galaxy S24シリーズは、こうしたオープンコラボレーションの集大成と捉えることもできる。Galaxy AIは2023年に発売されたハイエンドモデルにも展開される予定で、Galaxy S24シリーズにとどまらないサムスン電子の新たな強みになりそうだ。
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