低容量が“生存領域”といわれていたMVNOだが、ここ1、2年は、中・大容量の料金プランを訴求することも増えてきた。先に引用した井原氏のコメントのように、スマホで閲覧するコンテンツのデータ量が大きくなっていることが背景にある。また、「5Gで(高速に)つながることもあり、データの消費量が増えている」(同)というのも、理由の1つといえる。MVNOにも、中・大容量化の流れがきているというわけだ。
実際、MVNOでトップシェアのIIJmioも、3月に30GB、40GB、50GBの大容量プランを新設。イオンモバイルと同様、家族間やデバイス間でデータ容量をシェアする使い方を訴求している。IIJmioのギガプランはもともと20GBまでしか選択肢がなかったが、「20GBを使い切っているお客さまがだいぶ増えてきたという実感があった」(MVNO事業部 コンシューマサービス部長 亀井正浩氏)。一部のユーザーは、選択肢がないことで「他のMVNOに移っていた」(同)という。
また、老舗MVNOの日本通信は2023年11月に、データ容量20GBだった「合理的20GBプラン」を30GBに増量。名称も「合理的30GBプラン」に改称した。約1年前までさかのぼると、2023年3月には、NUROモバイルが40GBの「NEOプランW」を導入している。中・大容量帯を新設したわけではないが、シェア2位のmineoは、2月に開始したキャンペーンで「マイピタ」の全プランを6カ月間990円に値下げしており、最大容量の20GBプランを訴求している状況だ。MVNOでも、中・大容量プランが激戦区になりつつあることがうかがえる。
話をイオンモバイルに戻すと、同社の契約者数は2019年に50万を突破。2021年はahamoをはじめとするオンライン専用ブランド/プランの台頭やサブブランドの料金値下げが相次いだ結果、純減に見舞われてしまったが、2022年の料金改定でその勢いを徐々に取り戻している。その要因として「大きいのは解約率(の低下)で、お客さま満足度を上げることで、1%台まで下げることができた」(井原氏)。
大容量プランの導入や一部容量の値下げにより、この勢いを加速させていく構えだ。目標は100万回線。数値自体は変わっていないが、達成時期を「28年度末までに何とか達成したい」(同)と、時期を明言した。目指すのは、「コンシューマー市場でのシェアナンバー1」(同)だ。ただ、先に述べたように、シェア上位のIIJmioやmineoも中・大容量プランに注力し始めており、MVNO間の競争も激化している。イオンモバイルは、イオングループが展開する金融商品との連携を強化しているが、「安さ」以外の魅力をどう打ち出していけるかも今後の行方を左右するカギになりそうだ。
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