ドコモの狙いは、dポイント経済圏でECを強化するところにある。ドコモのウォレットサービス部長の田原務氏は、「dポイントクラブを15年から提供しているが、平たく言うと、やはりECが弱い。そういったところのリクエストを、会員の皆さまからいただいていた」と語る。実際、ドコモ自身でも「dショッピング」を提供しているものの、他社に比べるとサービスとしての規模は小さい。
競合他社を見渡すと、楽天モバイルには楽天市場があり、ECの規模感ではAmazonに匹敵する。楽天グループは、2023年12月に「SPU(スーパーポイントアッププログラム)」を改定しており、楽天モバイルを契約していると、常時4%ポイント付与率が上がる仕掛けだ。月間2000ポイントという上限はあるが、楽天モバイルを契約するモチベーションになるのと同時に、楽天市場の利用促進にもつながっている。
同様に、ソフトバンクはメインブランドのソフトバンクや、サブブランドのY!mobileのユーザーに、「LYPプレミアム」を無料で提供している。この会員になると、ソフトバンク傘下のLINEヤフーが運営する「Yahoo!ショッピング」で買い物をした際の還元率が2%アップする。さらに、支払いにPayPayを使うと3%から3.5%、還元率が上乗せされる仕組みだ。ソフトバンクユーザーには、毎月500円が還元されるPayPayクーポンも配布しており、ECと通信サービスでシナジー効果を出している。
楽天モバイルとソフトバンクは自社グループに巨大なECサービスがあり、それと通信サービスがポイントや決済サービスを通じて連携している格好だ。それより規模感は劣るが、KDDIも傘下のauコマース&ライフが「au PAYマーケット」を運営している。これに対し、ドコモのdショッピングはオールアバウトの子会社との共同運営で、取扱高も「サンプル百貨店」と合わせて四半期で100億円規模にとどまっている。
自社運営のECが弱いのは、「お察しの通り」(同)と言う状況。経済圏拡大のために、この分野を強化していく意向はあるものの、「自分たちで何か作るのか、資本提携するのかは決まっていない」(同)。こうした中、dポイント経済圏に楽天市場と肩を並べる規模感のAmazonを加えられるインパクトは大きい。Amazonは、d払いでも「かなりの取扱高がある」(同)といい、dポイントへの対応でこの利用を促進できる公算が高い。Amazonがおトクに使えるという売りは、ドコモユーザーの解約抑止につながる可能性もある。
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