Amazonにとっては、初の共通ポイント導入という形で、これまで足りなかったピースを埋められた格好だ。アマゾンジャパンのバイスプレジデント プライム・マーケティング事業統括本部長の鈴木浩司氏は、「多くのdアカウントユーザーに対して、魅力的なオファーを提供できる」ことをメリットに挙げる。Amazon自身でも日本独自施策として2007年からポイントサービスを導入していたが、これはサービス内で完結する取り組み。共通ポイント導入により、送客を強化できる。
鈴木氏は、「お客さまのために何をすべきかから逆算しており、他社がやっているからではない。競合他社が実施しているアクティビティーは、それはそれと考えている」と語っていたものの、Amazonが最大のライバルである楽天グループの楽天ポイントを導入するのは考えづらい。PayPayポイントもいわゆる共通ポイントではなく、PayPayという決済と密接にひも付いている。ユーザー数や流通額などの規模感や、これまでの経緯を踏まえると、dポイントしか選択肢がなかったというのが実情だろう。
このように見ていくと、Amazonのdポイント対応は、ドコモとAmazon、双方にとって足りないピースを埋め合える取り組みといえる。ドコモは弱点だったECを強化でき、Amazonも他社と同様、共通ポイントの送客効果を見込めるようになるからだ。
一方で、ポイント還元率が楽天市場やYahoo!ショッピングよりも低い水準にとどまっているのも、こうした座組だからといえる。ユーザー視点で見ると、どうしてもインパクトに欠けてしまう部分がある。田原氏は、ポイントの発行原資は「通常の加盟店と同じで加盟店が持つ」と答えていたことから、少なくとも基本となる1%分はAmazon側が負担しているとみられる。
dポイントの付与が1回5000円以上の注文に限定されていたり、1回につき100ポイントが上限だったりするのは、Amazon側が原資の負担を抑えるためと考えられる。田原氏は、「より多くの方にdポイントをためていただきたいため、5000円以上1%という設定になった」と語っていたが、これは広く薄くdポイントを配布するためだろう。自社や自社グループ内でポイント付与を完結させられる他社との違いといっていい。
その反面、dポイントはネットの加盟店も少なくない。取扱高が大きなサービスとしては「メルカリ」がある他、リクルートの「ホットペッパーグルメ」や「ホットペッパービューティ」「じゃらん」などで予約した店舗や宿泊施設を利用しても、ポイントをためることが可能。Amazonへの対応も、その一環になる。還元率の差には、こうした戦略の違いもありそうだ。
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