先述の通り、政府は携帯電話の契約における本人確認方法を「ICチップのあるカードの読み取り」に一本化する方針で、特に非対面手続きではマイナンバーカード“のみ”許容する方向で検討が進められている。
この件について、携帯電話の契約実務を担当する店員はどう思っているのだろうか。複数の現役店員に話を聞いた。
マイナンバーカードへの(事実上の)一本化に賛成です。運転免許証と違って、年齢層問わず持てることが何よりのメリットです。(感覚的に)マイナンバーカードを持っているお客さまは多いので、これからは「マイナンバーカード持ってますか?」と聞くことで案内の簡略化が可能になると思います。
マイナンバーカードをお持ちでない方についても、(店頭では)運転免許証や在留カードのICチップの読み取りが必須になるとのことですが、イニシャルコストや手続き方法がどうなるかはさておき、偽造書類による不正契約のリスクを大きく軽減できる観点でデメリットはありません。
iPhoneでは、来年(2025年)の夏までにマイナンバーカードの情報を丸ごと格納できるようになり(参考記事)、Androidスマートフォンでも各種電子証明書以外の情報を格納できるように調整が進められていると聞いています。スマートフォンのマイナンバーカードで本人確認できるようになったら、携帯電話の回線契約や端末購入をもっと気軽にしてもらえるんじゃないかと期待しています。
(本人確認書類の)ICチップに設定された暗証番号を入力していただく運用にすれば、少なくとも券面だけを偽造した書類での不正契約は防げます。
「目視でどうにかできないのか?」という根性論を言う人もいますが、昨今の“ガワ”の偽造は本当に精巧で、特に運転免許証なんかは肉眼だけで偽造だと見破ることは非常に困難です。過去に「(契約に)偽造免許証が使われた」ということで、警察の方が来られたこともあります。こういうトラブルを未然に防ぐには、本人確認をマイナンバーカードに(事実上)一本化することは歓迎したいです。
ご覧の通り、少なくとも携帯電話ショップの店員の多くは本人確認書類のICチップ読み取り義務化を歓迎している。先述の通り、現在は本人確認書類のバリエーションが多く、キャリアによって取り扱いが異なるものもある。お客さまが適切な書類を「持っていない」あるいは「取得できない」という理由で申し込みを受理できないことも少なからずある。
その点、人口の約8割が交付申請を行い、4人に3人近くが保持しているマイナンバーカードを本人確認書類として“最優先”に据えることは、案内の簡素化やトラブルの回避、ひいては成約につなげやすくなると考えているようだ。
また、店員のコメントにもあるように、昨今の偽造された本人確認書類は、非常に精巧に作られている。実は筆者も、偽造された運転免許証で契約を受け付けてしまい、実務担当者として警察からの事情聴取に応じたこともある(その時は、主に偽造免許証を使った被疑者が契約時にどんな様子だったのかを聞かれた)。
しかし、偽造が精巧になっているとはいえ、本人確認書類のICチップを読み取り、所持者本人しか知り得ない暗証番号(パスワード)を入れてもらった本人確認をすれば、ほぼ全ての不正契約は防げる。そういう観点では、昨今の政府の動きは正しい方向性のように思える。
一方で、本人確認書類のICチップの読み取り、特にマイナンバーカードを本人確認書類の“主”に据えることに懸念を持っているスタッフもいる。
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