今回、複数の店員に話を聞く中で、ICチップの読み取りによる本人確認に懸念を抱く声もあったので紹介する。
なぜかマイナンバーカードを極端に嫌っている人っていますよね。なぜそこまで嫌うのか、理由まではちゃんと聞いてないので分かりませんが、まだ持っていないという人も一定数います。
一応、政府方針としては対面手続きの場合は運転免許証や在留カードも許容する方向するとのことですが、無理に本人確認方法をマイナンバーカードに一本化してしまうと、理由があってマイナンバーカードを持ちたくない人や持てない人は手続きできなくなります。そういう人でも受け付けられる基準や仕組みを用意すべきだと思います。
マイナンバーカードを主たる本人確認書類とするのはいいとして、運転免許証を含む他の書類をどこまで使えるようにするのかという議論はきちんとすべきだと思います。現状の政府方針は「マイナンバーカードか運転免許証のどっちかなら持ってるだろ」「外国人なら在留カードを持ってるから何とかなる」という考えが透けて見えてしまって、ちょっと乱暴な感じを受けてしまうんですよね……。
現状でも、昔と比べると本人確認書類として使える書類は絞られてきていますが、さらに絞ってしまうと本人確認できなくなるお客さまが結構出てしまうのではないかと不安です。
先述の通り、マイナンバーカードは運転免許証を「持っていない人」「持てない」人でも取得できる、貴重な本人確認書類だ。しかし、店員の話にもある通り、何らかの理由で「持たない」選択をする人や、主に受け取り方法がハードルになって「持てない」という人もいるのは事実だ。
このままでは、マイナンバーカードや運転免許証(または在留カード)を持っていない人は、携帯電話にまつわる契約手続きを行えない――通信手段へのアクセシビリティーを考えると、解決すべき課題の1つとなるだろう。
今回聞き取りを進める中で、複数の店員からICチップの読み取りで“期待”していることがあるという声もあった。
マイナンバーカードを含めて、ICチップを読み取るということは氏名や住所の情報を取得できます。制度の議論次第な面はあると思いますが、ICチップの読み取りを顧客管理システムに統合する方向性なら、お客さまの名前や住所の情報にICチップの情報を入力できるようにしてほしいと思っています。
店舗の業態や配備される端末にもよるのですが、お客さまの名前や住所を端末に“手入力”しなければいけない場合があります。名前や住所には普段あまり使わない漢字が使われることがあって、入力に時間が掛かってしまうことがあるんですよね。あと、「ハイフン」と「長音記号(伸ばし棒)」を間違えてしまうことも防げます。
人が入力するからこその手間やエラーが減らせるのであれば、業務的に楽になる部分が多いんですよね。
お客さまの名前や住所は、契約時に必ず間違いがないかお客さま自身にも確認してもらっています。なので間違えることはめったにないはずなのですが、それでも後から「間違えていた」ということで訂正の手続きを取ることがあります。
契約が済んだ後に「ご契約ありがとうござます」という手紙が届くことがあると思うんですが、あれは契約者の住所や氏名に誤りがないことを確認するためのプロセスでもあります。手紙が届かなかった場合は、不正利用を抑制する観点から回線の利用を停止します。万が一、誤入力で手紙が届かず利用停止となったら、間違いなく大クレームです。
マイナンバーカードで顧客情報の入力を省略できれば、このような間違いによるトラブルを防げます。契約を担う店員としては大歓迎です。
現状では「本人確認をする際に、書類のICチップを読み取る」という方針は決まっているものの、読み取った情報を契約情報の入力補助に流用できるようにできるようにするかは決まっていない。
ただ、マイナンバーカードや運転免許証、在留カードのICチップには“正しい”氏名や住所の情報が格納されていることを考えると、煩雑になりがちな「お客さま情報の入力」の省力化につなげる観点で情報を流用したいと考えるのはある意味で当然といえる。
利用者目線でも、ICチップに格納された氏名と住所の情報を使えば、手続きをスムーズに終えられる上、氏名や住所の間違いによるトラブルを回避できるのでメリットは大きい。
世間をにぎわせている「携帯電話契約時のマイナンバーカードによる本人確認」だが、少なくとも店舗側は歓迎する声が多い。一方で、お客さま(契約者)視点に立つと、マイナンバーカードの「どんな情報が利用されるのか分からない」という漠然とした不安というのは感じられる。
あくまでも筆者個人の意見にはなるが、携帯電話契約時のICチップ読み取りの必須化は、手続きの簡略化や本人確認の確度を高めるという点で非常によい施策だと考えている。
だが、「どうしてもマイナンバーカードを持ちたくない」という人が極端に手続きが面倒になってしまったり、一切の手続きができなくなってしまったりしないようにする工夫や制度設計、マイナンバーカードを活用した本人確認について“正しい情報”をしっかり伝えつつ、“誤った情報”の流布を抑える啓発活動などにも、同時に力を入れてほしいと思う。
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