一方で、楽天モバイルは、こうした見方に対して真っ向から反論する。2月14日に開催されたキャンペーンの発表会で、値下げについて問われた楽天モバイルの共同CEO、鈴木和洋氏は「一部では官製値下げと言われているが、(楽天モバイルがMNOとして新規参入してから)5年で通信業界に適正な競争が起きたと思っている」とコメント。値下げは、「経済合理性の結果だと思っている」と語り、「プラン料金の変更は検討していない」と明言した。
電気などのコストについては、消費電力を減らす工夫で削減しているという。鈴木氏は「AIを使って電気量をシミュレーションしたり、使っていない機器をスリープにすることで、うまく電気代を削減する。そういった形を取ることで、20%の電気代削減は可能だと思っている」と話す。値上げを示唆した他社に対しては、「決算発表を見ても、非常に大きな営業利益を上げているので、日本の通信市場全体としてはまだまだ下がる余地がある」という。
実際、楽天モバイルは契約者数の獲得が進み、2024年末にはMVNOとの合算で830万契約を突破。ARPUも順調に上昇しており、2024年度第4四半期には、エコシステムへの貢献分も含めて2856円に上昇している。楽天モバイルの料金プランは、データ使用量が一定のしきい値を超えた際に料金が上がる段階制を採用している。そのため、ヘビーユーザーの獲得を増やせば、値上げに頼らずとも、ARPUを上げられる可能性がある。
楽天グループの代表取締役会長兼社長の三木谷浩史氏も、「ヘビーユーザーの(若い)方々が、どんどん楽天モバイルを使用するようになっている」と語っており、2025年度の方針には、「データ通信をさらに使ってもらう」ことが挙げられている。低料金を維持しつつ、獲得したユーザーがさらにデータ通信を使うことで、値上げに頼らずとも通年での黒字化を果たせるというのが三木谷氏の見方といえる。
ただ、鈴木氏は料金のステップが上がるしきい値の変更については、「いろいろなシミュレーションを常にしている。将来、変更する可能性がないとはいえない」と含みを持たせた。3278円で無制限という売りは残しつつ、3GB超20GB以下を3GB超10GB以下などに変えていけば、事実上の値上げはできる。また、全体のデータ使用量が上がっていけば、3段階にしている必然性も薄くなる。他社のように、3GB以下とそれ以上という2段階に設定すれば、ARPUを上げられる可能性もありそうだ。
楽天モバイルが低料金で若年層の獲得を増やしているため、他社が値上げに踏み切りづらい側面もある。その意味では、同社がキャスティング・ボートを握っているとみることもできる。一方で、料金値下げで設備投資が抑制されてきたのも事実。結果として、5Gのエリア拡大に時間がかかるなど、ネガティブな要素も目立ってきた。宮川氏の「せっかく世界で一番だった通信が、今やただ安いだけの国になってしまった」という指摘は重い。
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