楽天モバイルといえば、複雑な料金プランをいくつも用意せず、「ワンプラン主義」を貫いていた。しかし、新料金プランの登場によって、事実上その“ワンプラン体制”は終わりを迎えた。
10月以降は、段階制プランである「Rakuten最強プラン」の一択ではなくなり、通信とエンタメを融合させた新料金プラン「Rakuten最強U-NEXT」が加わり、音声通話込みの料金プランは二者択一になる。
Rakuten最強プランは、3GBまでは月額1078円(税込み、以下同)、3GBから20GBまでは2178円、20GB超過後は3278円という3段階制が特徴だ。Rakuten最強U-NEXTは、月額4378円で、家族割引(110円引き)を適用すると月額4268円となる。
ワンプランの撤廃理由については、楽天モバイルが「ワンプラン」を撤廃してまで、U-NEXTセットの新料金プランを提供する理由という記事で解説しているので、ここではあえて触れず、ユーザー視点でメリットと注意点を解説するとともに、知らなければ損する落とし穴も整理する。
まずはRakuten最強U-NEXTの特徴とメリットから紹介しよう。
最大の特徴は、通信サービスにU-NEXTの動画・電子書籍サブスクリプションを組み合わせた“エンタメバンドル”型プランである点だ。U-NEXT単体では月額2189円で提供されているサービスが、Rakuten最強U-NEXTでは通信無制限プランと一緒に4378円で利用できる。
しかも、楽天マガジンや楽天ミュージックといった既存のデジタル特典をそのまま利用できる上、海外ローミングやRakuten Linkなど、通信サービスの基本機能もそろっている。10月には、U-NEXTの「サッカーパック」から一部の試合を追加料金なしで視聴できるようになる予定だ。
つまり、既にU-NEXTを使っているユーザーや、U-NEXTの「コンテンツの豊富さ」に魅力を感じる人にとっては、通信料金とエンタメ利用料の“二重コスト”を一本化できるメリットがある。
動画サービス内における見放題コンテンツは32万作品を超えている。雑誌などが読み放題なのも魅力の1つだ。画像は楽天モバイルが「ワンプラン」を撤廃してまで、U-NEXTセットの新料金プランを提供する理由という記事から引用楽天モバイルとU-NEXTを個別に契約した場合、トータルでいくらになるのだろうか。Rakuten最強プランで20GBを超えた際の月額料金は3278円、U-NEXTの月額プラン(2189円)となるため、合計で5467円の出費になる。これに対し、Rakuten最強U-NEXTは個別契約よりも1089円お得になる計算だ。
一方で、Rakuten最強U-NEXTには見落とされがちな注意点も多い。
とりわけ、新プランの加入者向けに実施されている「最大968ポイントを4カ月間還元するキャンペーン」に関しては、事前に確認すべき条件が多数存在する。対象となるのは、「キャンペーン期間中に初めてRakuten最強U-NEXTを申し込むユーザー」であり、既にU-NEXTを過去に利用していた場合や、他の楽天モバイルのキャンペーンを同時に利用している場合は対象外となることがある。
楽天モバイルは10月の提供開始に先立ち、6月23日から先行キャンペーンを実施している。Rakuten最強プランとU-NEXTを契約すると、楽天ポイント968ポイントが最大4カ月間還元され、U-NEXTは初回31日間無料で視聴できるため、初月は月額2200円で両サービスを利用できる実際に得するか損するかは、ユーザーの使い方によって大きく変わってくる。例えば、「先行キャンペーン」と呼ばれる一時的な特典が適用されている期間中なら、Rakuten最強プランの高速通信(20GB以上で月額3278円)にU-NEXT(月額2189円)を追加しつつ、U-NEXTから通常付与される1200ポイントと、さらに楽天モバイル独自のキャンペーンポイント968ポイントを獲得できる。これら2つのポイントを合わせれば実質3299円で済む計算になるため、個別契約よりもかなりお得に見える。
ただし、これはあくまでキャンペーン期間にU-NEXTからの1200ポイントが付与されるプランを選択した場合の話だ。これに対し、Rakuten最強U-NEXTという名前で正式に提供されているセットプランでは、毎月4378円を支払うことになるものの、U-NEXTからの1200ポイントが付与されないという注意点がある。つまり、実質的には特典の面で損をしていることになり、キャンペーン利用時と比較すると、毎月1079円も高い出費になる。
一方で、楽天モバイルとU-NEXTをそれぞれ個別に契約した場合は、通常通りU-NEXTからの1200ポイントが付く。楽天モバイルで月20GB以上を使って3278円、U-NEXTに2189円を払いつつ、1200円相当のポイントを使い切れば、実質的な支払いは4267円に収まる。これは、Rakuten最強U-NEXT(4378円)よりも111円安くなる計算だ。つまり、「U-NEXTの1200ポイントを毎月使い切る」ユーザーにとっては、Rakuten最強U-NEXTよりも、個別契約の方が安くなるという逆転現象が起きる。
このように、Rakuten最強U-NEXTというプランが“最強にお得”かどうかは、単純に料金表を見るだけでは判断できない。キャンペーンの有無、ポイントの付与対象かどうか、さらに自分がそのポイントをしっかり使い切れるかどうか、といった“使い方”に左右されるため、ユーザー側のリテラシーが問われるプラン構成だといえるだろう。
最後に、これからRakuten最強U-NEXTの契約を考えている人が最も気を付けるべき点に触れたい。それは「料金表示」だ。楽天モバイルは、発表会やプレスリリースにおいてRakuten最強U-NEXTを「月額4268円」として繰り返し紹介していたが、これは最強家族プログラム(家族割引)適用時の価格であり、通常価格は4378円である。
この家族割引は、楽天モバイルユーザー同士(親戚や事実婚、同性パートナーを含む)でグループを組まなければ適用されないため、実際には多くのユーザーが4378円を支払うことになる。にもかかわらず、通常価格を併記しないまま「安く見える価格」を全面に押し出した見せ方は、結果的に誤解を招くだろう。
これは通信業界全体において長年繰り返されてきた問題でもある。例えば、KDDIが2020年12月にAmazonプライムをセットにした「データMAX 5G with Amazonプライム」を発表した際にのセット割引を「最安値」でアピールした際も、割引適用条件の分かりにくさが批判された。KDDIに限らず、割引後の金額のみを大きく表示し、混乱を招くことはよくある。
通信業界においては、料金そのものよりも、「いかに分かりやすく伝えるか」「誤認を与えないか」が信頼構築の鍵となっている。楽天モバイルが本当に“最強”を名乗るのであれば、ユーザーに誤解を与えることなく、「料金の見せ方も最強に分かりやすい」プランへと成長してほしいところだ。
楽天モバイルがU-NEXTの“特例プラン”で見据える黒字化 楽天カードのデータ増量でエコシステムも強化
楽天モバイルが「ワンプラン」を撤廃してまで、U-NEXTセットの新料金プランを提供する理由
楽天モバイル、月額4268円からデータ使い放題+U-NEXTがセットの「Rakuten最強U-NEXT」発表
楽天モバイルが初の四半期黒字化 値上げは「考えていない」、2025年内に1万局以上の基地局追加へ
楽天モバイルの料金プランは値上げ? 「現時点で考えていない」と三木谷氏、その理由も語るCopyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.