モバイルバッテリーのシェアリングサービス「ChargeSPOT」を展開するINFORICHは、近年増加傾向にあるモバイルバッテリーの発火事故を受け、より安全な利用を促すことを目的に、「あんしん充電はじめよう!キャンペーン」を実施すると発表した。
このキャンペーンでは、ChargeSPOTを初めて利用する人を対象に、2025年8月8日から9月30日までの期間中、「30分未満なら無料で何度でも利用できる」ようにするという。
INFORICHによると、近年モバイルバッテリーの普及が進む一方で、非認証品の流通や誤った使用方法、不適切な廃棄を原因とする発火・発煙事故が全国で多発している。直近でも、充電中のモバイルバッテリーが発火し、けがなどの人的被害につながったケースが報道された。
2025年には、山手線の車内で発火事故が起きたことをきっかけに、モバイルバッテリーの正しい使い方や処分方法に改めて注目が集まっている。これについてINFORICH広報は、「以前から、自治体の焼却炉やごみ収集車などでの事故が報告されており、モバイルバッテリーの発火事故は2025年に始まった問題ではない」と話している。
こうした背景を受け、INFORICHは今後、安全性向上に向けた啓発活動を一層強化していく方針だ。「正しいバッテリーの扱い方」を広く伝えるとともに、「持ち歩くのではなく、必要なときに借りる」というシェアリングサービスの利点をアピールする考えで、これはモバイルバッテリーに触れる時間を短縮し、安全性を高めるという狙いもある。
INFORICH広報は、具体的な取り組みについては「まだ決まっていません」と前置きしつつ、「正しい廃棄方法についても検討を進めています」と説明。そのうえで、「自治体が情報発信に努めているが、十分に浸透していないのが現状。弊社としても、一般消費者に安全な廃棄方法を伝え、理解を深めてもらえるような取り組みができないか、現在社内で議論しているところです」と述べた。
INFORICHはニュースリリースの中で、「サービス開始当初から業界最高水準の安全設計と運用体制を重視し、事故の未然防止に取り組んできた」と強調。「全てのバッテリースタンドをリアルタイムで監視し、異常を検知した場合には迅速に該当バッテリーを回収・交換する体制を構築することで、高い安全性を保った運用を実現している」と説明している。
ChargeSPOTのモバイルバッテリーについても、INFORICHは安全性や品質への配慮を強調している。
リチウムポリマー電池とリチウムイオン電池の違いについて、INFORICHの広報担当者は「電解質の材質によるものです」と説明する。リチウムイオン電池が液体の電解質を使用しているのに対し、リチウムポリマー電池では固体またはゲル状のポリマーが用いられる。いずれも「リチウムイオンバッテリー」に分類され、Li-Po(リチウムポリマー)もその一種だ。
その上で、ChargeSPOTには「リチウムポリマーの中でも高品質のものを採用している」とアピールする。
【更新:7月30日9時58分】取材時に得たリチウムポリマー電池とリチウムイオン電池に関する情報をもとに、バッテリー構造の違いやChargeSPOTの採用部材について追記・補足を行いました。
モバイルバッテリーの発火事故を受けて、INFORICHだけでなく、さまざまな企業が安全性向上に向けた情報発信を行っている。
例えばエレコムは、自社のX(旧Twitter)アカウントを通じて、高温や衝撃に強い「ナトリウムイオンバッテリー」をアピール。モバイルバッテリー利用者による安全意識の再確認だけでなく、メーカーや販売元としての責任ある啓発活動を通じ、安全な利用の「きっかけづくり」が今後さらに求められるだろう。
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