問題の根本原因は、Xperia 1 VIIの製造プロセスの過程にあり、具体的には「基板の製造工程において、温度や湿度の影響を受けたことにより、基板に不具合が生じた」ことだという。スマートフォンの基板の製造過程では精密な熱管理が求められる。ソニーでは、温度や湿度の管理自体は行っていたが、その「管理体制が甘かった」(大島氏)ことから、今回の不具合に直結してしまった。
大島氏は次のように続ける。「製品の輸送中からユーザーの手元に至るまで、不具合はどの段階でも発生しうる。ただし、製造管理工程において温湿度の管理が適切に担保されていれば、その後の運送や使用の段階で不具合が発生することはないと考えている」
Xでは、製造工場が中国だったことも問題の一端なのではないか? という情報が出回っている。この点について大島氏は「今回、われわれは中国の外部協力工場で製造している」と、中国での製造を認めたが、「製造に関してはサプライチェーンの最適化も含め、工場に依存せず工程の変更や最適化を日々行っている。その中で、変更した工程に不備があったと考えている。直接的に工場が変わったことが原因というよりも、工程そのものの変化が原因であると認識している」とした。
同様の不具合は過去に起きていないというが、なぜこの問題を従来の品質保証プロセスで見抜けなかったのだろうか? 大島氏は、「本来は発見しなくてはいけなかった問題」と、率直に非を認めた。さらに、「やはり工程に変化があった段階で、変化した内容についてもっと深く踏み込み、材料の特性やばらつきなどまできちんと評価しておくべきだったと反省している」と補足した。
モバイルコミュニケーションズ事業部 事業部長の大島正昭氏。Xperia 1 VIIは「中国の外部協力工場で製造している」というが、「直接的に工場が変わったことが原因というよりも、工程そのものの変化が原因であると認識している」と話すソニーの主張を整理すると、ソニーとしては温度や湿度の管理自体は行っていたものの、その管理基準が甘かったことに加え、製造工程の変更も不具合につながってしまったというわけだ。
ソニーは二度と同じ過ちを繰り返さないため、具体的な再発防止策を策定し、既に実行に移している。大島氏はその内容を二つの柱で力強く説明した。
第一の柱は「総点検の実施」だ。今回の不具合に直接関連する温湿度管理の工程だけでなく、類似の工程、さらには製品の機能に影響を及ぼす可能性のあるあらゆる設定値に至るまで、Xperia 1 VIIの製造プロセス全体を徹底的に洗い直す総点検を行ったという。「今後の機種の製造においても、品質管理の強化を目的として、製品特性や状況に応じた点検体制を構築、運用していく」と大島氏は話す。
第二の柱が、より本質的な改善策である「製造工程におけるリスク評価体制の強化」だ。これは、まさに「工程の変化点」における評価の甘さという今回の失敗に直接対応するもので、製造工程に変更を加える際に、品質に影響を及ぼしうる潜在的なリスクをより多角的かつ厳格に検証・評価するための新たな管理体制を構築する。
ソニーはXperia 1 VIIの不具合を重大な事案と位置付け、製造工程などを見直し、厳格な品質管理を目指すことも明らかにした。品質向上に向けて、「総点検」と「製造工程におけるリスク評価体制の強化」を徹底するとしているこの新体制は、既にXperia 1 VIIの交換用製品や、販売再開後に製造されている製品の生産ラインから運用を開始しているという。大島氏は「今後の製造においてもこの体制を導入し、厳格な品質管理の実現に取り組んでいる」と語り、システムとして品質を担保する仕組みを確立したことをアピールした。
なお、ミッドレンジモデル「Xperia 10 VII」についても、改善後の体制のもと製造されており、大島氏は「安心してほしい」との考えを述べた。
この迅速な原因特定について「なぜ早く分かったのか」と問われると、大島氏は「総力を挙げて原因解析に努めてきた」と、品質保証部隊を含む技術者たちが、製造工程をゼロから洗い直すという地道な作業で原因にたどり着いたことを明かした。
大島氏は、「お客さまにとっては、これでも時間をかけすぎたと考えている」との姿勢を見せた。なお、ユーザーへの最初の情報発信は7月4日のキャリア各社と自社のWebサイトが最初で、その後にSNSなどでも発信したという。
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