パフォーマンスを重視したことで、ボディの発熱や騒音とともに気になるのがバッテリー駆動時間だ。ここでは、WMV形式の動画ファイル(640×480ドット/10Mbps)をデスクトップに置き、バッテリーが満充電の状態からWindows Media Player 11で全画面再生し続け、バッテリー切れでシャットダウンするまでの時間を計測した。使用したバッテリーは標準添付の6セルタイプ(10.8ボルト 5400mAh)だ。
type Zの電源プランは、SPEEDモード時が「高パフォーマンス」、STAMINAモード時が「VAIOスタミナ設定」だ。さらにVAIOスタミナ設定では、液晶ディスプレイの輝度を9段階のうちの下から5段階目まで下げた。高パフォーマンスの場合は輝度が最大だ。いずれの場合も放熱制御は「バランス」に設定している。
計測結果を見ると、輝度最大かつ高パフォーマンス設定のSPEEDモードと、輝度が約半分でVAIOスタミナ設定のSTAMINAモードでは、1時間〜1時間半程度の差が付いた。STAMINAモードでのバッテリー駆動時間は、VGN-Z90USが3時間14分、VGN-Z70Bが3時間46分となかなか健闘している。
公称のバッテリー駆動時間は、直販モデルで約7.5〜約11時間、VGN-Z70Bで約9時間をうたっており、これらと比べると相当短い結果となったが、今回のテストはかなり厳しい条件なので、もっと輝度を下げたり、省電力設定を見直して余計な機能をオフにするなど工夫すれば、駆動時間を延長できるだろう。
より長時間のバッテリー駆動を切実に求めるならば、スペアのバッテリーを用意したり、約155グラムの重量増と底面の奥が出っ張るのと引き替えに、直販モデルで約12時間〜約17時間、VGN-Z70Bで約13.5時間の連続駆動をうたうオプションの9セルバッテリー(8100mAh)を使うのも手だ。


type Zの省電力設定は豊富だ。標準の電源プランは「VAIO標準設定」「VAIOスタミナ設定」など、合計6種類を備えている(写真=左)。電源オプションの詳細設定画面には「VAIO省電力設定」タブが設けられ、画面の表示色数、メモリカードスロット/光学ドライブ/FAXモデム/IEEE1394の電源管理を細かく調整可能だ(写真=中央)。現在の電源設定と変更後の電源設定をグラフ表示で見比べられる独自の「省電力ビューア」を用意(写真=右)。バッテリーの充電量を満充電の約80%などに抑えることで、バッテリー寿命を延ばすことができる「バッテリいたわり充電モード」も持つフリーソフトの「YbInfo」を使い、バッテリー駆動時におけるシステム全体の消費電力も計測してみた。計測した状況は、アイドル状態で放置した場合、アイドル状態から無線LAN機能をオンにした場合、そこからDVD-Videoを再生した場合、DVD-Videoの再生をやめてWMVファイルのエンコードを実施した場合の4段階だ。システムにかかる負荷を段階的に増やしながら、消費電力の推移を見る。
電源プランや液晶ディスプレイ、放熱制御の設定はバッテリー駆動時間の計測時と同様だ。計測時の室温は約25度に設定した。
計測結果はバッテリー駆動時間の場合とほぼ同じ傾向だ。STAMINAモードと液晶ディスプレイの輝度を下げた設定を組み合わせることで、消費電力を半分以下に抑えられるケースも見られた。WMVファイルのエンコードでは、CPUやメモリの消費電力が多いVGN-Z90USがVGN-Z70Bよりかなり不利な結果となっている。
これまでのモバイルノートPCは、携帯性を優先する一方で、何かに妥協を求められるのが常だった。例えば、それはパフォーマンスや拡張性、画面サイズ、入力環境といったものだ。実際のところ、モバイルノートPCを持ち歩いているユーザーの多くは何かしらの不満を持ちつつも、心のどこかで「モバイルノートPCにすべてを求めるのは無理だろう」とあきらめてきたのではないだろうか。
しかし、今回type Zを短期間ながら触れてみると、ソニーが製品コンセプトとして掲げる「モバイルでも一切の妥協はしない」という理想の世界が、かなり高いレベルで実現されつつあることに、(少々おおげさかもしれないが)衝撃を受けた。
ソニーの開発陣がここまでtype Zを徹底して作り込むことができた背景には、パフォーマンスとモバイルの両立を目指した「VAIO type S(SZ)」や、日本のビジネスシーンに特化した「VAIO type G」、バイオノート505の流れをくむ「VAIO type T(TZ)」の開発といった技術の蓄積があることに加えて、2008年に入ってアップルの「MacBook Air」やレノボ・ジャパンの「ThinkPad X300」といった、薄型軽量かつ高性能な13型クラスのモバイルノートPCが続々と登場したことも無縁ではないだろう。
type Zは後発ということもあり、MacBook AirやThinkPad X300のようにスモールフォームファクタのCPUを使って薄型ボディに注力するのではなく、あえて最薄は追求せず、性能面で有利な通常電圧版のCore 2 Duo、13型クラスの高解像度液晶、外付けGPU、光学ドライブを搭載したうえで、小型化と軽量化を極限まで突き詰めて、最軽量時でMacBook Airより軽く仕上げてきた。こうしてできあがったtype Zには、ソニーのモバイルノートPC開発陣のプライドを感じる。
“エグゼクティブ向けモバイルノート”の看板通り、直販モデルでSSD RAID 0構成や高解像度液晶といった魅力的なメニューを選択すると、あっという間に30万円台後半や40万円を超えてしまうような高額になるが、Eee PCなどのNetbookがモバイルPCの価格破壊を行っているさなか、そのアンチテーゼともいわんばかりに、徹底した高級志向のモバイルノートPCを投入してくるとは天晴である。
予算に余裕がある幸福なユーザーにはSSD RAID 0構成を文句なくおすすめしたいが、実売価格26万円前後の店頭モデルVGN-Z70Bもバランスのよいスペックで買い得感がある。いずれにせよ、type Zは標準的なノートPCより高くつくが、これまでのモバイルノートPCでは決して味わえない世界がそこには存在する。入力環境など細部に課題はあるが、メインマシン並のパフォーマンスを携帯したいと望むユーザーであれば、高い満足度が得られるはずだ。
なお、2008年の後半には45ナノプロセスルールのスモールフォームファクタ版Core 2 Duoも投入される予定だ。これに合わせて、ソニーを含む各社が新型のモバイルノートPCを投入してくることだろう。この夏でノートPCのフラッグシップモデルを刷新したVAIOが、年末にかけてどのようにモバイルノートPCのラインアップを磨き上げてくるのか、type Zの高い完成度を見ると、今から楽しみでならない。
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