9月9日(現地時間)に米カリフォルニア州サンフランシスコで開催されたAppleの音楽イベント。iPod nano、iTunes 9の紹介ときて、最後はいまやAppleのメインプロダクトとなったiPhone、iPod touch、そして残りのiPod製品群についてリポートしていこう。
今回のイベントは、スティーブ・ジョブズ氏の登場が冒頭の話題をすべてさらってしまった感があるが、全Appleプロダクトの中でiPhoneがトップバッターとして紹介されたのも興味深いところだ。スマートフォンの販売数としては異例のスタートダッシュを切ったiPhoneだが、発売から2年少々で3000万台を突破するなど、いまだ好調を保っている。iPhone成功の秘けつの1つはApp Storeの存在だが、この携帯アプリストアが登場してからまだ1年と少し。この間に7万5000のアプリが登録され、18億ダウンロードを達成したという。こうした流れを加速させるためか、イベントで最初に発表されたのが「iPhone OS 3.1」のリリースだった。
数多くの新機能を備えて登場したiPhone 3.0と比較して、3.1はバグフィクスや機能ブラッシュアップのマイナーバージョンアップが中心となっている。そのうちの数少ない新機能の1つがApp Storeに追加されたGeniusだ。iTunes MusicにおけるGeniusが音楽ライブラリ解析から適切な楽曲を推薦してくれる一方で、App StoreのGeniusは手持ちアプリから判断してお勧めのアプリを紹介してくる。定番アプリを知ったり、これまで気付かなかった有用アプリを発見するための新しいナビゲーションの1つと考えればいいだろう。
Ringtoneも従来の煩雑さから解放されて使いやすくなっており、4大メジャーレーベルが用意する3万の着信メロディをiTunes Storeから直接購入できる。1つのRingtoneあたり1.29ドルだ。まだ多くの細かい変更点があるので、3.0ユーザーはぜひアップデートで確かめてみてほしい。
イベントの前半パートではジョブズ氏が中心となってプレゼンテーションを進めていたが、後半はApple上級副社長のフィル・シラー氏(Phil Schiller)にバトンタッチしてiPod製品群のアップデートについて紹介を行っている。シラー氏はまずiPod販売の伸びについて言及し、継続的な成長が続いていることを強調するとともに、世界シェアで73.8%と圧倒的な状態にあることを誇示した。もちろん、この分野のライバルであるMicrosoftのZuneについて触れることも忘れていない。
最近のiPod普及の中心的存在となりつつあるのがiPod touchだ。iPhoneの3000万台には及ばないものの、2000万台の販売でAppleの収益に大きく貢献している。touchの魅力はiPodであると同時に、マルチタッチ入力やPDA的要素などを多数盛り込んだポケットコンピュータである点が挙げられる。
PCと遜色ないSafariに始まり、電子メール、地図、アドレス帳など、インターネットに接続したり、PCやMacと同期することでより使い勝手が増す仕組みになっている。もう1つ大きいのはApp Storeの存在で、ここを通してiPhone同様に次々と新しい機能を組み込み、より便利に利用できる点が特徴だ。
だが正直、これだけでは物足りないという気もする。せっかくのエンターテイメントデバイスなのだから、もう少し遊びの部分もあっていいだろう。そうしたなか、最近Appleが前面に押し出しつつあるのが携帯ゲーム機としてのiPod touchだ(広告キャンペーンについては後述する)。
シラー氏のデモではソニーのPSPと任天堂のニンテンドーDSを引き合いに出し、touchならではのメリットを強調する。また、同氏はソフトウェアの値ごろ感や入手性についても触れ、ソフト(アプリ)の数やラインアップの面でも有利だと主張する。ラインアップを厳選して販売する専用ゲーム機とtouchをソフト数と値段だけで判断するのは安直な気もするが、いわゆる同人ゲーム的なものでさえ手軽に登録してリストアップされる柔軟性がApp Storeの魅力でもあり、ベクトルは違えど新しい携帯ゲーム機の世界を開拓していくことになるのかもしれない。
さて、iPod touchのアップデート内容だが、現行の8Gバイトモデルが229米ドルで、これをどう変更していくのだろうか。シラー氏は過去のiPod miniの話題を引き合いに出し、249ドルだった製品を199米ドル(1万9800円)に引き下げたことで販売台数が倍以上に伸びたことがあると語る。この200ドルという境界がマジックナンバーだとすれば、iPod touchもまたこれを踏襲すればいいというのが同氏の考えだ。そこで新モデルでは、ストレージ容量を据え置きで価格だけ引き下げてきた。
残りの16Gバイトモデル(299米ドル/2万9800円)と32Gバイトモデル(399米ドル/3万9800円)は逆に値段を据え置き、容量をそれぞれ32Gバイトと64Gバイトへ倍増することで対応した。またこの上位2モデルは容量の変更だけでなく、処理速度が50%高速になっているという。Open GL ES 2.0にも対応している。Appleでは詳細を明かしていないものの、iPhone 3GSと同様にiPod touch上位モデルでもCPUやメモリで差別化しているものとみられる。
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