店頭発売から1カ月も経たないうちから気の早い話だが、Windows 7の初期セールスが好調と報じるニュースが多い。そのことを意識したのか、PDC09の2日目に行われたキーノートスピーチに登場したMicrosoft Windows & Windows Live部門担当プレジデントのスティーブン・シノフスキー氏もWindows 7の販売実績について同じような報告をするとともに、「こうした成功を収めることができたのも支援者やパートナーのおかげ」と感謝の念を述べている。
登場の早い段階から「完成度が高いようだ」と評価されていたWindows 7だが、その理由の1つが「ユーザーからのフィードバック」だという。2008年のPDC08で来場者に“プレ”β版が配布され、その直後には“本来の”β版を一般に配布した。さらに製品化直前候補版の「RC」(Release Candidate)を用意するという、“3段構え”でユーザーテストが実施された。
β版をこれだけ広く配布するのは異例のことで、筆者の記憶でもWindows 2000以来と思う。しかも、βテストの期間だけで1年近くかけている。ユーザーの報告を基に、β版に潜在していた数多くの問題やバグの改良を繰り返すことで、製品化されたWindows 7の完成度を十分に高めることが可能になった。
シノフスキー氏は、このようにして大規模に行われたβ版テストの成果をキーノートスピーチで説明した。 βテストに参加していたのはWindows 7に興味のある一般ユーザーのほか、PDCに参加する開発者やパートナーたちだ。彼らに配布されたβ版には、フィードバック送信機能のほか、アプリケーションやOS本体がクラッシュしたときにダイアログ形式で表示される「Windows Error Reports」(WER)といったエラー報告機能を備えていた。これらのような、簡単に不具合リポートを報告できる機能を実装することで、数多くの協力ユーザーからMicrosoftに不具合の報告が集まることが可能になった。
報告によれば、テスト期間中に送られたフィードバック件数が173万件に対して、WERの件数は1043万件に達したという。WERに基づくWindows 7のコード改修は4753件にも及んでいる。このことからも、ユーザーによるテストと報告がWindows 7を成長させたといえるだろう。
WERとともに収集されたデータには、ユーザーのマシンの設定情報や動作情報の一部が記録されている。その中で、遠隔集計(Telemetry)には興味深いデータが含まれていた。例えば、テスト期間中に接続が観測された外部デバイスは9万1521種類、プリンタは1万4057種類、アプリケーションが88万3612種類と、テストユーザーの環境は実に多彩だった。スタートメニューのクリック回数が6カ月間で5億1425万3176回、同じく、エアロスナップ/シェイクの利用回数が4644万7784回だったことも分かっている。ユーザーが利用しているスクリーンの解像度の分布もまとめられており、1024×768ドットと800×600ドットといった設定が全体の3分の2を占めていた。
Windows 7は、Windows Vistaのブラッシュアップを目指しただけでなく、マルチタッチや互換性を維持するXPモード、64ビットへのフル対応など、着目すべき新機能も多い。その一方で、これら機能を利用できるハードウェアが限定されるため、すべての機能を享受できるユーザーも少ないという問題もある。特にノートPCで顕著だ。
そこで、「Windows 7で提供される機能がすべて利用できるノートPCがあったらどうなるのか」というコメントともにシノフスキー氏が紹介したのが、コンパーチブルタイプ(タブレットPCスタイル)のAcer製ノートPCだ。Windows 7の機能をすべてサポートするとともに、UMTSやHSPAのワイヤレスWAN機能も搭載したモデルで、コンパーチブルタイプのタブレットPCながら薄いボディが特徴だ。
なんと、シノフスキー氏は「PDC09特別エディション」と名づけた、このWindows 7フル対応ノートPCを来場者全員に配布すると発表して、会場を沸かせた(ただし、報道関係者は対象外)。
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