「libretto W100」誕生秘話――なぜ2画面タッチパネルのミニノートPCなのか?完全分解&ロングインタビュー(2/6 ページ)

» 2010年10月12日 16時00分 公開
[前橋豪,ITmedia]
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開発は25周年記念モデルで最も遅いスタートに

90度回転させて縦位置にすれば、加速度センサーによって表示の向きが切り替わり、2画面を本のように見開きで使える。2画面を効果的に使うためのアイデアの1つだ

―― 2画面タッチパネルのミニノートPCはかなりのチャレンジだと思いますが、社内ですぐに開発の許可は出たのでしょうか?

三好 これも結構もめました。何しろ、わたしを含めて誰も現物を見たことがないので、本当に動くのか、果たして使い物になるのか、そもそもそこに市場があるのかなど、いろいろな意見や疑問が出てきて、すんなり製品化しようという流れにはなりませんでした。ただ、何とかそこを突破してしまえば、あとは比較的自由に作らせてもらえたのでありがたかったです。

高橋 ハードウェアの開発をする立場から見ても、タッチパネルの2画面をどう使えばいいのかは悩みました。25周年記念モデルとしては、一番最初にこの製品の構想が固まっていたのですが、製品化に向けたゴーサインが出たのは一番遅かったですね。それだけ、社内の説得に時間がかかったということです。

上條 確かに社内でも最初のアイデア段階では懐疑的な人が少なからずいましたが、実際に動く試作機を見ると、途端に食いつきがよくなるのは面白かったですね。それで開発のモチベーションが上がるというのはあったと思います。

三好 まさに、「百聞は一見にしかず」でしたね。

―― 25周年記念モデルで最も開発に時間がかかりそうなのに、スタートが一番遅かったというのは大変ですね。25周年記念モデルを4機種同時にリリースするにあたり、社内調整などの苦労はありましたか?

三好 各機種は別々に開発が進んでいったため、特に調整などの苦労はなかったです。もちろん、ほかの部隊がどういった新製品を開発しているのかは互いに把握していて、同じものにならないとは分かっていましたが、計画的に製品コンセプトを分けるような調整はしていません。

高橋 ほかにない製品やこれまでの進化系となるモデルなど、それぞれのチームが開発を進めていったら、結果的に内容が重ならない新機種が25周年記念モデルとして出そろったということです。

libretto W100と同時発表された25周年モデル。左から、OSにAndroid 2.1を採用したクラウドブックこと「dynabook AZ」、13.3型ワイド(1366×768ドット)液晶を搭載する2スピンドルモバイルノート「dynabook RX3」、薄型テレビ「REGZA」のエッセンスを採り入れた液晶一体型PC「dynabook Qosmio DX」

librettoだから小型軽量、しかもWindowsにこだわる

―― 開発では「持ち運べるフルスペックのマシン」が念頭にあったとのことですが、OSにWindows 7 Home Premium(32ビット版)を採用したことも、これと関係するのでしょうか?

三好 そうですね。我々はPCの事業部なので、長年Windowsとともに歩んできた歴史があります。同じく25周年記念モデルの「dynabook AZ」はOSにAndroidを初採用しましたが、こちらはlibrettoとして今まで培ってきて、ユーザーも使い慣れたWindowsのプラットフォームがベターと判断しました。

 2画面タッチパネルという個性的なスタイルではありますが、できることならそれ以外で導入のハードルは低くしたいという狙いです。ユーザーがこれまで親しんできたノートPCの使用感から逸脱したり、これ1台でデジタルライフスタイルを激変させてしまおうといった考えは、ユーザー視点では少しごう慢だとも思いました。

「Windows 95が動く世界最小・最軽量のPC」こと「Libretto 20」

上條 海外市場も含めて要望はさまざまですが、日本の開発部隊からすれば、librettoは「Windows 95が動く世界最小・最軽量のPC」として市場に投入したので、librettoというからにはフルのWindowsが動作しなくてはならないと考えていました。

―― 初代libretto(1996年発売の「Libretto 20」)まで話がさかのぼりましたが、昔からユーザーがlibrettoに求めるのはやはり小型軽量という点だと思います。libretto W100のサイズや重量の目標値は、やはり歴代のlibrettoを意識したのでしょうか?

三好 初代モデルよりは小さいのは当たり前ですが、開発初期のターゲットはサイズが200(幅)×120(奥行き)×20(高さ)ミリ、重量が約499グラムという値でした。これはルイ・ヴィトンのシティ・ガイドや旅行ガイドをイメージしたもので、だいたい新書2冊を重ねたくらいの感覚です。2画面タッチパネルに決める前から、これくらいのサイズがカバンに入れて持ち運ぶのに便利と思っていました。残念ながら、この値には到達していませんが、それはパフォーマンスに重きを置いたことが大きいです。

librettoはヒンジを180度開いた状態で202(幅)×246(奥行き)×12.5(高さ)ミリ。iPadは189.7(幅)×242.8(奥行き)×13.4(高さ)ミリだ

―― 液晶ディスプレイのヒンジを180度開いた状態では、iPadとほぼ同じ横幅と奥行きになりますね。マルチタッチ操作のデバイスとして、iPadのようなスレート端末は意識しましたか?

三好 違うカテゴリーの製品ということもあり、意識はしませんでした。iPadが発表された時点でlibretto W100のサイズはほぼ決まっていたので、まったくの偶然です。このサイズはマルチタッチのマシンとして使い勝手や携帯性を追求した結果ですが、海の向こうでも同じように考えていたというのはちょっと面白いですよね。

高橋 厚さについてもiPadは約13.4ミリ、librettoは開いた状態で約12.5ミリとなるので、1枚の板として見ると大体一緒になります。画面の表示領域も含めて、サイズ感が結構似ているのは意外でした。

開発過程のモックアップ。サイズは製品とほぼ同じだが、ヒンジの形状などが少しずつ異なる

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