―― 最大の特徴となる2画面タッチパネルですが、なぜ7型ワイドで1024×600ドットというディスプレイサイズにしたのでしょうか?
三好 1つには、どこを取ってもNetbookを下回る仕様にしたくなかったという思いがあります。片側のディスプレイだけを見ても、Netbook未満の解像度という選択肢はありませんでした。
もう1つはその逆です。タッチ操作を考えると、あまり高解像度で表示が細かいと目的の場所にタッチにしくくなり、使いにくいだろうと考えました。2画面合計のサイズと解像度も考慮すると、7〜8型ワイドくらいの画面サイズが無難だろうということで、いくつかの液晶パネルを実際に試したところ、1024×600ドット表示ならば7型ワイド液晶でも十分な情報量があり、しかも細かすぎないという結論に至りました。
結果として、片側のディスプレイだけでは標準的なNetbookと同じ解像度になりましたが、このサイズと解像度の2画面はバランスがいいと思います。
―― ディスプレイのヒンジ部分もほかのノートPCとは大きく違っていますが、中身はどうなっているのでしょうか?
高橋 ヒンジの中を開けて見ると分かるのですが、右側は何本もケーブル(電源など)を通しているので、左側だけに2軸ヒンジを設けています。この2軸ヒンジで紙の本のように、上下のディスプレイが同時に違和感なく開閉できるようにしました。実は片方しかヒンジの中身がないわけですが、それを感じさせないように作ったのがポイントですね。
三好 本のように開閉できるヒンジにはこだわりました。商品企画から出した要望は、ヒンジを開いたときにフラットな1枚板になることです。そうなると、2軸のヒンジは必然でした。どちらかが90度開いてから、もう片方も90度開くような不自然なヒンジは勘弁してほしかったですし、開ける過程も美しく見せたかったので、この仕上がりには満足しています。
―― タッチパネルだけで文字入力が無理なく行える工夫として、ユニークなソフトウェアキーボードがあります。6種類ものソフトウェアキーボードを用意したのは、ここまでやるかと思いました。
三好 ハードウェアキーボードがないことで、使いにくいPCと思ってほしくはありません。フルキーボードを使いたい人でも、主要なキーだけ表示してほしい人でも、どんなニーズにも対応できるソフトウェアキーボードを突き詰めたら、6つになりました。これでも数は減らしたのですが。
上條 あまり種類が多すぎても迷ってしまうと思ったので、タイプがはっきりと違う6種類に絞りました。お気に入りのソフトウェアキーボードが決まっていたら、ほかのレイアウトは表示されないようにできる工夫もしています。
三好 ソフトウェアキーボードでもう1つ配慮したのはハプティクス(触覚情報)です。キー入力に合わせて、内蔵モーターでタッチパネルに振動を送って、入力した感覚がユーザーにきちんと伝わるようにしました。振動があるのとないのとでは、入力した感覚がだいぶ違います。正直にいうと、このキー入力に合わせた振動が実現できるまで、ソフトウェアキーボードの使い勝手に関しては少し不安でした。これでソフトウェアキーボードが使い物になるなと確信できましたね。
高橋 ソフトウェアキーボードの振動用モーターは底面側の右にあります。1つのモーターだけで、タッチパネル全体を均一に揺らすため、液晶ディスプレイのユニットからタッチパネル部分だけをほんの少しだけ浮かせたフローティング構造にしています。今回の開発で一番順調にいったのは、このソフトウェアキーボードの振動部分ですね。もう、それ以外全部で問題が起こったといってもいいです(笑)。
三好 最初は2つや3つモーターを内蔵するという話もありましたが、この構造によって1つで済んでいます。ただ、1つしかないモーターがどこに内蔵されているのか、ユーザーが分かってしまうような振動の仕方はやめてほしいと強くお願いしました。そのおかげか、左下のキーを押しても、右上のキーを押しても違和感がないはずです。
―― タッチパネルに注力される一方で、それ以外のハードウェアのポインティングデバイスを極力省いているのも印象的です。リブポイントのようなものを付けるという議論は開発中になかったのでしょうか?
三好 それはありました。実際に開発初期は入れる予定でしたが、使い慣れたリブポイントや小型タッチパネルのようなものがあると、そればかり使われてしまい、せっかくの2画面タッチパネルを否定することにもなりかねないので、思い切って省きました。積極的に2画面の好きなところをどんどんタッチしてほしいというコンセプトを追求した結果です。さらにいえば、実装して厚みが出るのを嫌った面もあります。
―― そのぶん、タッチ操作しやすいように独自のツールを数多く用意したり、Windows 7のウィンドウにも手を加えたりしていますね。
三好 はっきりいって、スマートフォンなどに比べると、Windows 7はタッチフレンドリーなOSではありません。libretto W100ではそれをとにかく補完したかったので、一般的なユーザーがマウスで無理なく操作できることを、タッチ操作で実現できないかと工夫しました。
例えば、ウインドウのタイトルバーに上画面と下画面を移動させるボタンや上下画面に表示させるボタンを追加したり、ウインドウの最小化/最大化、ウインドウの移動、サイズ変更といった操作が指でも簡単に行えるツールの「Easy Menu」を搭載しています。このEasy Menuは東芝が昔取得していた特許のストックを使ったもので、今回ようやく日の目を見ました。
上條 東芝では製品化されるものに限らず、継続的にアクセシビリティの研究を進めています。このEasy Menuのコンセプト自体は3年前に考えられていたものです。
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