オレゴンの拠点で超巨大な“クーラーユニット”と最新マザーボードに遭遇するIntelの拠点にはリスもやってきます(2/3 ページ)

» 2010年10月08日 16時00分 公開
[鈴木淳也(Junya Suzuki),ITmedia]

Intelの心臓部「データセンター」へ突入せよ

 Intelの研究開発拠点やデータセンターが存在するヒルズボロには、山あいに家や小規模なオフィスビル、ショッピングモールが点在している。夏の一時期に暑いことを除けば涼しい、あるいは寒い気候で、晴天より雨や曇天のことが多い。最近、Facebookがオレゴン州内に大規模データセンター建設を発表したことが話題になったが、「冷却」という観点からいえばデータセンター設置に適した土地柄といえる。特に開発拠点が存在するIntelにとっては、大規模データセンターを置くのに最も適した土地といえる。

 デザイン部門の用途においては、通信タイミングやレスポンスにシビアなアプリケーションを使っている。このことも、デザイン部門が属する開発拠点の近くにデータセンターを設置しなければならない理由となる。なお、Intelの開発拠点はイスラエルや米テキサス州などにも存在しており、これらの拠点の近くにもデータセンターを設置する必要がある。Intelの大規模データセンターは1カ所に集約できず、ある程度世界に散在せざるを得ない理由がここにある。

 ヒルズボロにある大規模データセンターは2階構造で、1階部分が電源(UPS)や送風システム、2階部分がサーバルームとオフィスになっている。2階のサーバルームで発生した熱い空気を水パイプで冷却して1階に落とし、送風システムで1階の電源室に送りつつ、それが吹き抜け構造となっている2階部分に到達して再びサーバを冷やす。サーバには前方から風が入って後方に吹き抜ける構造になっており、ここで暖まった空気は仕切りのある部屋に集約され、先ほどの冷却システムを通過して1階へ到達する。空調装置を使わずに建物を2階構造にするだけでデータセンター全体を冷却する仕組みは珍しい。

 熱い空気を冷やすのに使う水パイプは、外部の冷却装置を使って冷却してからそのまま循環させている。電源効率を含めて再生利用率が高い構造になっている。イスラエルのハイファにあるデータセンターでは、サーバで発生した熱を給湯システムに活用するなど、“熱”も再利用している。

データセンター1階にあるUPS。ここで電源の安定化や非常時の電源供給を行う(写真=左)。データセンター2階にあるサーバラック。サーバは列に沿って並べられており、別の列のサーバラックと正面が向かい合い(写真=中央)、同様に背面側は別の列の背面と向かい合う(写真=右)。正面と背面の間は薄い板で仕切られて隔離されている。このレイアウトによって、冷却された空気はサーバ正面から本体内部を抜けて背面に排気され、その隔離された小部屋に熱い空気が集まる仕組みになっている

サーバルームの床には多数の穴を設けて、1階と吹き抜けになっている。この仕掛けによって2階建てのデータセンタービルそのものが冷却ユニットとして機能する(写真=左)。サーバを通過して熱くなった空気は天井から排出され、水が通っている冷却パイプで冷やされて1階に戻される。1階の電源ルーム横に送風機が設置されていて、ここをものすごい勢いで風が吹き抜ける。この空気が1階の天井を抜けてサーバルームへと送られて、データセンター内部の空気は循環する(写真=中央)。冷却用の水は、通常の水と同程度の温度まで冷やされた状態で循環している(写真=右)

 データセンターで使う電力は、普通のオフィスビルのように外部から“引き込んで”使っている。自力で電力をまかなうための発電機などは用意しない。サーバにはUPS(無停電電源装置)を接続しているので、停電などで電力の供給が停止しても、ある程度の時間は運用可能だが、それでも「通常状態で5分程度」が限界だという。瞬断などには対応できるが、周辺一帯を巻き込んだ大規模停電には対応できない。

 コリンズ氏によると、これは「コスト重視」の結果であり、24時間365日稼働できる信頼性より必要最低限の動作機構を優先したためと説明している。多くの顧客を抱える外部に向けたデータセンターとは異なり、Intelのデータセンターはあくまで内部利用のための仕組みであることが、この決定に大きく影響しているそうだ。

 Intelのデータセンターでは、4年周期でシステムを更新する。おそらく、データセンター全体を同時に更新するのではなくサーバルームのブロックごとに時期をずらして更新すると思われる。2009年の更新では性能と電源コストの両面で大きく改善されたという。定期更新で置き換えられた旧システムで使っていた古いサーバラックや1Uボティは、後日、別な施設に寄贈される。ハードウェアも再利用の対象なのだ。

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