11インチMacBook Airを徹底比較そんなスペックで大丈夫か?(2/3 ページ)

» 2010年10月29日 17時30分 公開
[後藤治(撮影:矢野渉),ITmedia]

全モデルでSSDを採用し、高速起動を実現

 新型MacBook Airの基本スペックは、発表時の記事(アップル、8万8800円からの「11インチMacBook Air」)を参照してもらうとして、ここではポイントだけ触れていこう。

 今回のMacBook Airは、iPadの使い勝手を志向している。すなわち、使いたいときにすぐに使える高速な起動(スタンバイからの復帰)、どこにでも持ち運べる携帯性とバッテリー駆動だ。このうち、高速起動のポイントとなっているのは、同社がフラッシュストレージと呼ぶSSDの全面採用である。このフラッシュストレージは、軽量化を追求したモバイルPCではよく見られる外装のないタイプで、基板に直接実装されている。これにより、容積で90%の削減を実現、さらに耐衝撃性も確保したという。また、後述するが、SSDの世代が新しくなったことで、旧MacBook Air(MacBook Air Mid 2009)のSSDモデルに比べてどの程度性能が向上したのかも気になるところだろう。

 一方、11インチMacBook AirのCPUには、標準で1.4GHz駆動の超低電圧版Core 2 Duo(SU9400)が採用された。このため、スペック的にはNetbookの次世代機として登場したいわゆる“CULVノート”のカテゴリに属するという見方もできる。また、旧MacBook Air(MB940J/A)や新しい13インチMacBook Airに搭載される低電圧版の1.86GHz Core 2 Duo(SL9400)に比べると、TDPが17ワットから10ワットに削減された半面、2次キャッシュ容量が半分の3Mバイトになり、クロックも下がってしまった。旧モデルに比べれば、グラフィックスがGeForce 9400Mから、最大で2倍の性能を発揮するというGeForce 320Mに変わったため単純な比較はできないものの、CPU負荷の高いエンコードなどの処理では劣る部分もありそうだ。

CPU-Z(画面=左)とGPU-Z(画面=中央)の画面。CPUには超低電圧版のCore 2 Duo SU9400、GPUには統合型のGeForce 320Mが採用されている。ちなみにWindowsエクスペリエンスインデックスの結果は、最高がHDD(SSD)の6.9、最低がCPUの4.1だった(画面=右)

 これらを踏まえてMac OS XとWindows 7の両方でベンチマークテストを実施していこう。なお、Windows 7環境下のテストでは、あらかじめ作成したBoot Campドライバ(Version 3.1 Build 2645)を用いて、32ビット版のWindows 7をインストールし、定番ベンチマークテストのPCMark05、PCMarkVantage、3DMark06、FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3、CrystalDiskMarkを実行した。また、各テストの比較対象として、11インチMacBook AirのCPUとメモリ容量をアップグレードしたモデルと、最新のMacBook(MC516J/A)および15インチMacBook Pro(MC373J/A)、Windows機からはパナソニックの「Let'snote J9」と東芝の「dynabook RX3/T9M」、ASUSの「UL20FT」を挙げている。ただ、ソフトウェアのバージョンやドライバなど、環境が完全にそろっているわけではないので参考程度に見てほしい。各モデルの基本的なスペックは以下にまとめた。

比較で取り上げたモデル
製品名 MacBook Air (MC506J/A) MacBook Air(CTO) MacBook (MC516J/A) MacBook Pro (MC373J/A) Let'snote J9 standard dynabook RX3/T9M UL20FT
CPU Core 2 Duo SU9400 (1.4GHz) Core 2 Duo SU9600 (1.6GHz) Core 2 Duo P8600 (2.4GHz) Core i7-620M Core i3-370M (2.4GHz) Core i5-520M (2.4GHz) Celeron U3400 (1.06GHz)
メモリ 2GB 4GB 2GB 4GB 2GB 4GB 2GB
グラフィックス GeForce 320M GeForce 320M GeForce 320M GeForce GT 330M Intel HD Graphics Intel HD Graphics Intel HD Graphics
ストレージ 128GB SSD 128GB SSD 250GB HDD 500GB HDD 160GB HDD 128GB SSD 320GB HDD
液晶ディスプレイ 11.6インチ 11.6インチ 13.3インチ 15.4インチ 10.1インチ 13.3インチ 12.1インチ
解像度 1366×768 1366×768 1280×800 1440×900 1366×768 1366×768 1366×768
価格 10万8800円 12万8645円 8万8800円 18万9800円 12万円前後 24万円前後 5万9800円

※記事初出時、スペック表に一部誤りがありました。おわびして訂正いたします

 まず、Mac OS X環境ではCINEBENCH R10とiTunesのエンコードにかかる時間を測定した。

 CINEBENCH R10の結果は、ほぼスペックに準じた格好だ。11インチMacBook Airの処理性能は、Multiple CPUのスコアが2954、仮にCTOでCPUを強化しても3408と、MacBookに遠く及ばない。iTuensによるエンコードテストの結果も同様で、処理時間はMacBookに対してほぼ1.5倍、Core i7を搭載するMacBook Proに対しては約2倍の時間を要しており、CPUに負荷がかかる処理でははっきりと差が出た。

CINEBENCH R10(画面=左)とiTuensエンコードテスト(画面=右)の結果

 MacBook Airの最安モデルとMacBookの価格はちょうど8万8800円と同じだが、光学ドライブを持たないAirが勝っている部分は(人によってはデザインと)小型かつ軽量な点だ。ほぼ2倍の重量差がある両モデルだが、例え価格が同じでも、メインマシンとして使う1台目のMacとして購入する、あるいは2キロを超えるノートPCの持ち運びが苦にならないという人なら、MacBookのほうをオススメしたい。もっとも、実際に試用した感触では、Mac OS Xでの操作はMacBook Airでも非常に快適で、特に重い印象はなかった。ただ、高解像度の写真を編集するときなどはレインボーマークが出ることもあり、内蔵GPUがメインメモリから256Mバイト共有する点、後からメモリを増設できない点も考慮すると、メモリ容量は4Gバイトにしたほうがよさそうだ(価格も+1万80円で10万円以下に収まる)。また、仮想環境での利用を考えているならメモリの増設はほぼ必須だろう。

 続いてWindows 7環境下でのベンチマークテスト結果を見ていこう。

 PCMark05は、総合スコアのPCMarksで5000前後と、超低電圧版CPUを採用しながらまずまずの結果を残している。これはCPUやメモリのスコアが低い半面、描画性能の高いGeForce 320Mと高速なSSDが総合力を底上げした形だ。特にグラフィックスのスコアは、Core i世代のCPUに統合されたIntel HD Graphicsを搭載するシステムに比べて圧倒的に高い。MacBook Proでは15インチモデルでCore i世代に移行したが、これはディスクリートGPUの搭載が前提になっており、排熱設計や消費電力の関係からこのパスが選べないMacBook Airでは、(やや時代遅れながらも)Core 2 Duoの採用は仕方のないところなのだろう。なお、HDDのスコアはやはり飛び抜けて高いが、同じくSSDを搭載する東芝のdynabook RX3/T9Mには負けている。一方、PCMarkVantageはSSDの底上げにより総合スコアでMacBookを上回った。また、個別のスコアをみるとCPUを1.4GHzから1.6GHzにアップグレードした差が出ているのが分かる。

PCMark05(画面=左)とPCMarkVantage(画面=右)の結果

 3DMark06とFINAL FANTASY XI Official Benchmark 3も結果も、GeForce 9400Mから最大で2倍以上高速化したというGeForce 320Mの性能(というよりもIntel HD Graphicsの非力さ)が目立つ結果となった。もっとも、最新の3Dゲームをストレスなく楽しめるかといわれるとかなり微妙で、Intel HD Graphicsを利用するシステムはほぼ無理、GeForce 320Mでも軽めの3Dゲームなら楽しめるといったところだ。なお、普段使いでは非常に静音性の高いMacBook Airだが、システムに高い負荷がかかる3Dベンチマークプログラムの実行中は、ファンが搭載されている本体奥から風を切る音が聞こえた。深夜の自室など静かな環境ではやや気になる音量だ。また、内部の熱が排気される液晶ヒンジ部の奥にあるスリット付近は熱くなりやすい。ただし、熱を発する各パーツはすべて背面側に寄せられているため、ほぼバッテリーで占められているパームレストやキーボードはほとんど熱を帯びなかった。

3DMark06(画面=左)とFINAL FANTASY XI Official Benchmark 3(画面=右)の結果

 次に新型MacBook Airで最も重要なポイントとなっているSSDの性能を測るためにCrystalDiskMarkを実施した。結果は、旧MacBook Airに比べて2倍以上高速化しているのが分かる。このモデルではすでに初代機のParallel ATAからSerial ATA接続に変更されているが、それでも大幅な性能向上である。ほぼ3年前とはいえ、初代MacBook Airで64GバイトのSSD(+12万1800円!!)を選択したユーザーはめまいがしそうだ。

CrystalDiskMarkの結果。dynabook RX3に比べると、MacBook Airはリードが速く、ライト速度で劣る。書き込みが速いのは東芝製SSDの特徴

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