11インチMacBook Airが発表されたとき、よく耳にした最も大きな不満の1つにバッテリー駆動時間の短さがあった。11インチモデルが最大5時間、13インチが7時間と、ノートPCとしては標準的とも言えるバッテリーライフだが、バッテリーが本体に組み込まれているため、スペアバッテリーを持ち歩くこともできず、完全にモバイル用途に特化した製品としてみれば少し不安ではある。また、なによりMacBookは最大10時間、MacBook Proは最大8〜10時間となっており、バッテリー駆動時間が最も重要視されるモバイルPCのラインアップが一番短いというのも確かに釈然としない(17インチMacBook Proのバッテリー駆動時間が最大8〜9時間というのも何かの冗談のようだ)。そこで実際はどの程度バッテリーが持つのか、Mac OS XとWindows 7の両環境で実測してみた。
Mac OS Xでは画面輝度を最高にしたうえで、1分間のQuickTimeファイルを全画面で連続再生し、バッテリーが切れるまでの時間を手動で計測。Windows 7環境下では、海人氏作の「BBench 1.01」を利用して、画面輝度を中間(16段階中8に設定)、10秒おきにキーボードを押下、60秒ごとに無線LAN(IEEE802.11n)によるインターネット巡回(10サイト)を行う設定でテストしている。
結果は、かなり厳しめの条件で実施したMac OS X環境で2時間24分、実際の使用を想定したWindows環境下では約3時間46分となった。比較として挙げたMacBookやMacBook Pro、dynabook RX3/T9Mと比べるとやはり短い印象だ。メールを書いたりWeb閲覧を行う程度の負荷であっても、1日中外出して使うのはやや厳しいかもしれない。ただ、新型MacBook Airは、スタンバイ状態で最大30日間バッテリーが持続するという特徴を持つ。使用していないときの消費電力は非常に低いため、電車や飛行機の移動など細切れの時間で外出先でも作業を続ける、といった用途なら悪くはなさそうだ。特にSSDを採用したことで起動やスタンバイからの復帰が非常に速い点はメリットの1つだろう。
実際にMac OS Xの起動時間を手動で計測してみたところ、電源ボタンの押下からデスクトップが表示されるまでの時間は平均14.2秒、システムの終了が平均1.6秒、スリープが1秒〜10秒スリープからの復帰が1秒前後、再起動が平均15.5秒となった。スリープにかかる時間は場合によってかなり開きがあるが、通常は液晶ディスプレイをパタンと閉じるだけなのでユーザーが気にすることはない。そして、次に液晶を開けばほぼ瞬時に使える状態になる――例えば、電車の中で何か面白いアイデアを思いつき、カバンからすっとMacBook Airを取り出して液晶を開けば、目の前にはそのアイデアを形するための道具がすべてそろっている、というのは非常に快適だ。これまでPCの起動の遅さにイライラさせられていた人は、1度MacBook Airを使うと手放せなくなるかもしれない。
以上、新たにラインアップへ加わった11インチMacBook Airを見てきた。かつては使う人を“選ぶ”ような近づきがたさもあったMacBook Airだが、8万8800円から購入できるこの11インチモデルの登場で一気に親しみやすいモデルに生まれ変わっている。特にこの円高の時期に、日本人好みのモバイルPCがアップルから登場したことは、2キロを超える13インチMacBookやMacBook Pro(人によっては15インチMacBook Pro)を“モバイルPC”として持ち歩き、ともすればWindowsユーザーの揶揄(やゆ)の対象となっていた筆者のようなMacユーザーにとっては留飲の下がる思いだ。モバイルPCに厳しい選別眼を持つ日本のユーザー視点から見ても、Macに“本当のモバイルPC”と胸を張っていえる製品が登場したことを喜びたい。
とはいえ、CPU性能やSSD容量、バッテリー駆動時間などから13インチモデルとどちらを購入しようか迷っている人もいると思う。追って13インチMacBook Airのレビューを掲載する予定だ。
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