今までは「災害時などにTurboNASのデータが失われないように」という観点で考えてきたが、逆に「災害時などにサービスを継続できないほかのサーバの代替とする」という運用も考えられる。
一般的に、極力継続すべきサービスはWebサービス(場合によっては通常と異なる緊急用サイト)、メールサーバが最たるものだろう。基幹業務等については難しいものの、対外的、あるいは社員間での連絡用に確保しておきたいこれらのサービスが利用できるだけでも状況はかなり違う。
TurboNASにはデフォルトでWebサーバ機能が搭載されており、さらにQPKGを導入することでWebメールもサポートしたメールサーバ機能を追加できる。もっとも、データセンタが完全にサービスを提供できない事態はかなり深刻な状況であり、完全な代替として運用するにはDNSの制御など、インフラの知識を必要とする。ダイナミックDNSなどと組み合わせて通常時とは異なる「緊急時に使用するドメイン」で運用するなど、柔軟に対応すべきだろう。
以上、災害時のリスク対策としてTurboNASのさまざまな機能を見てきたが、実はこれらの機能のすべてが最初から用意されていたわけではない。ファームウェアのバージョンアップによってあるものは少しずつ機能拡張していき、またあるものは鳴り物入りではなばなしく登場した。しかもバージョンアップはいまだに続いている。
次回のバージョンアップでは「ファームウェア3.5」がリリースされる。これは小数点1ケタが上がるメジャーバージョンアップに近いバージョンアップであり、さまざまな機能拡張が含まれる。その中でもTurboNAS登場以来最大のインパクトといっても過言ではない新機能だと思われるのが、QNAPウイルス対策ソリューションだ。
QNAPウイルス対策ソリューションは、オープンソースのClamAVウイルス対策ツールキットをベースにしたウイルススキャンソフトであり、指定されたスケジュールに従いバックグラウンドでスキャンを実行する。しかもウイルスデータベースの更新サービスは無償で提供される。
TurboNAS上のストレージにクライアントPCからアクセスできる以上、クライアントPCにインストールしたセキュリティソフトを使ってウイルススキャンすることは可能だ。だが、それは「TurboNASだけを立ち上げておけばよい」というメリットを損なってしまう。また、専用アプライアンスであるために対応セキュリティソフトが販売されていないという問題もあった。
今回のQNAPウイルス対策ソリューションは、これらを解決する重要な新機能だ。「サーバにはセキュリティソフトを導入すること」という社内セキュリティガイドラインによってNASキットを見送ってきたオフィスにも導入することが可能になる。次回はこの野心的なバージョンアップの詳細について見ていくことにしよう。
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