日本HP「HP ENVY110」は、“ルックス至上派”を満足させるか?2011年末プリンタ徹底検証(5/5 ページ)

» 2011年12月29日 18時30分 公開
[榊信康(撮影:矢野渉),ITmedia]
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印刷/コピーの速度を検証する

 次は印刷速度の検証だ。ここでは、PCからのA4モノクロテキスト印刷、A4カラーチャート&テキスト印刷、L判写真印刷、メモリカードからのL判写真ダイレクトプリント、カラーコピーなどの作業を行い、それぞれの所要時間を計測した。

 測定方法は、PCからの印刷ではプリンタが用紙を引き込むと同時に計測を開始し、用紙を排出すると同時に計測を終了している。ダイレクトプリントやコピーなどのスタンドアロンの作業では複合機自体の処理性能も重要になるため、スタートボタンを押すと同時に計測を開始した。

印刷/コピー速度のテスト結果
設定 出力時間
A4モノクロ(PCから印刷) 普通紙1枚
はやい 6秒7
標準 13秒7
A4カラー(PCから印刷) 普通紙5枚
はやい 34秒5
標準 2分13秒9
L判(PCから印刷/フチなし) アドバンスフォト用紙 1枚
標準 40秒3
高画質 45秒5
最大dpi 1分32秒4
L判(メモリカードから直接印刷/フチなし) アドバンスフォト用紙 1枚
標準 54秒
A4カラーコピー 普通紙1枚
標準 39秒8
A4カラー(PCから自動両面印刷) 普通紙5枚
はやい 48秒7
標準 2分23秒9

 A4モノクロテキストは、普通紙に対してJEITAのプリンタテストパターン「J1.DOC」を印刷した。印刷品位の設定は標準モードとはやいモードの2種類を用いている。結果を見ると、他社の売れ筋機種より少々遅いが、ストレスを感じない速さだ。最低画質のはやいモードでも印刷品質は問題ないレベルだが、13秒程度であれば標準モードを普段使いにしてもよいだろう。

 A4カラーチャート&テキストでは、普通紙に対してJEITAの「J9.DOC」(5ページ)を印刷している。印刷モードはモノクロテキストと同様に、標準とはやいを試した。標準モードはかなり高品位の出力が得られるものの、印刷時間が2分以上かかってしまう。はやいモードでも他社製品の標準モードと同等かそれ以上の出力品質が得られるので、こちらを常用するのがベターだろう。この品質で34秒5は高速といえる。

 L判写真印刷では、アドバンスフォト用紙のL判に対して、最高画質から3段階の設定(最大dpi/高画質/標準)で印刷を行った。最大dpiモードと高画質モードは約30秒の差が開いたが、よく見ると、最大dpiモードのほうがより自然な階調が描けている。A4などの大きめなサイズならば、最大dpiが合うはずだ。ただし、L判ならば高画質モードで十分きれいと思う人が多いだろう。45秒5という印刷時間は標準から少し遅い程度だが、L判1枚で1分を切っているので、ストレスは感じない。標準モードはさらに5秒ほど速いが、色彩の面で高画質モードがおすすめだ。

 メモリカードからのL判写真ダイレクトプリントは、印刷品質の設定が固定されているようなので、標準設定の印刷速度のみを計測した。結果は54秒とまずまずのスコアだ。画質も大きな不満はない。

 標準設定での普通紙カラーコピーの速度は40秒弱だった。1枚のカラーコピーにしてはかなり時間がかかっているが、そのぶんだけ品質は高い。ドラフトモードならば、印刷時間は16秒8で済むので、状況に応じて使い分けるとよいだろう。

 自動両面印刷ではJEITAのJ9.DOC(5ページ)を再び利用し、はやいモードと高速モードの2段階で印刷速度を測定した。A4カラー印刷のスコアと比較すると、はやい、高速とも10秒程度の違いしかない。はやいモードは両面印刷の速度としてはかなり高速で、ためらわずに使用できるだろう。

L判フチなし写真印刷のコストは1枚あたり約22.9円

 公称のランニングコストは、L判写真が1枚あたり約22.9円(インクと写真用紙のコスト)、A4カラーが1枚あたり約12.9円(インクのみのコスト)と少し高めだ。これは前述の通り、インクカートリッジが3色一体型であることと、何よりもプリントヘッド一体型のためだろう。

 この測定に用いられたインクカートリッジは、増量タイプの「HP 121XL」(ブラックは2982円、3色カラーは3486円 ※いずれもHP直販価格)とのことなので、標準タイプのカートリッジではもう少しコストが上がるだろう。L判写真印刷に使ったのはアドバンスフォト用紙の300枚パック(1491円)なので、用紙1枚あたりの単価は497円となる。

動作音は比較的静か

 ボディが薄くて堅牢なためか、振動はかなり抑えられてる。ギアやトレイの駆動音など、印刷時の用紙搬送の音はわりと響くが、総合的には競合機種よりやや静かだ。それでも深夜や静粛性が求められるシーンでは、それなりに気を使う。

 試しに、環境騒音31.5デシベル程度の室内で本体の30センチ手前に騒音計を設置し、A4普通紙カラー印刷中の動作音を測定したところ、45〜55デシベル程度と比較的静かだった(給紙や排紙の瞬間は少し騒音レベルが上がる)。操作パネルや排紙トレイが自動的に開閉する動作の騒音は小さく、気にならない程度だ。

 他機種が備えているような静音モードは用意していないが、標準でここまで静かならば使っていて騒音が大きいと感じるケースは少ないと思われる。

まとめ――そぎ落として手に入れたスリムボディの誘惑

 ENVY110は、国内メーカーにありがちな“ほぼ全部入り”を前提に何でもかんでも詰め込むというコンセプトとは違った独特の個性を備えている。そぎ落とす部分と重視する部分をキッチリと分けることで、ENVY110でなければ得られない存在価値を獲得しているのは大きな強みだ。

 単純にプリントエンジンやスキャンエンジンの性能、給紙機構などを見れば、ほかに上回る製品はあるが、これほどスタイリッシュなスリムボディは比肩する製品がない。自動で開閉する操作パネルや排紙トレイ、タッチパネルによる直感的な操作、自動両面印刷、そしてプリンタを情報端末として運用できる積極的なモバイル/クラウドサービスの実装といった魅力も兼ね備えている。

 日本では住宅事情からプリンタの置き場所に困るケースが多く、毎日頻繁に使わない複合機がリビングや自室でじゃまだったり、威圧的だったり、インテリアに対してチープに見えたりするのは避けたい、という人は大勢いるだろう。こうした一般的なユーザーの多くが感じている不満点をかなり解消してくれるだけあって、潜在需要に大きな刺激を与える可能性がある1台といえる。

 価格はHPの直販価格で2万9820円、ショップによっては2万円台半ばまで価格が下がっている。プリンタとしてのスペックを考えると割高だが、ENVY110ならではのメリットをどう評価するかで安いか高いかの判断は変わる。この価格であれば、省スペースや見栄えのよさで自宅に置きたくなる人も少なくないだろう。


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