「UltrabookをPCと呼ぶな!」──2012年のモバイルデバイスを巡る思惑IntelとMicrosoftの夢ふたたび(2/3 ページ)

» 2012年02月06日 16時00分 公開
[本間文,ITmedia]

PCベンダーが描く“収束”の姿とは

 2012 CESに参加したPCベンダーが、次世代のUltrabookで積極的にタッチインタフェースを採用したり、液晶ディスプレイが本体の裏側まで開いてタブレットデバイスのようにもなるコンバーチブルタイプを提案したりするのも、急拡大するタブレットデバイスを強く意識しているためと考えるのはそれほど無理なことではない。ここに、2012 CESで各PCベンダーが掲げる「コンバージェンス」(Convergence)、日本語でいうところの「収束」というキーワードに行き着く。

 Microsoftも、携帯デバイス市場への浸透を目指すのはIntelと同じだ。同社CEOのスティーブ・バルマー氏は、「Xboxからスマートフォン、タブレットデバイス、PCまで、一貫したユーザーインタフェースとしてMetroスタイルを提供する」と訴えている。あらゆるデバイスに共通の操作性やユーザー体験を提供することで、デバイス間の垣根をなくし、Windowsを標準プラットフォームの地位にしたい考えだ。Microsoftは、コンピューティングデバイスの収束をソフトウェアレベルで進めることで、Androidの普及が進むスマートフォンやタブレットデバイス市場を、Windows PhoneなどのWindows搭載デバイスに引き戻したい狙いがある。

Windows Phone 7を搭載したスマートフォンを手にするMicrosoft CEOのスティーブ・バルマー氏(写真=左)。Windows Phoneは、Windows 8でも採用するMetroスタイルのユーザーインタフェースを採用する。これにより、PCデバイスと一貫した操作性を実現すると説明するMicrosoftでWindows Phoneの開発を統括するデレク・シュナイダー氏(写真=右)

 そもそも、IntelとMicrosoftの両社は、これまでも“デジタル・コンバージェンス”の名のもと、家電とPCの融合を図ってきたが、Intelが2005年にアナウンスした「ViiV」(ヴィーヴ)など、その多くはPCの作法を家電に持ち込むアプローチで、成功を収められずにいた。しかし、今ではインターネットを介して利用できるコンテンツや情報サービスは家電でも充実し、スマートフォンはWebブラウジングやメール処理を行なうのみならず、高機能のアプリを実行できるまで“コンピューティング”性能を高めている。このことが、PCと携帯デバイスの垣根を低くし、IntelとMicrosoftに再び“収束”のチャンスを与えることになった。

Windows 8の登場はARM搭載デバイスにも利するのか

 むろん、QualcommやNVIDIAといった“ARM陣営”も、これを好機と捉える。2012 CESでは、業界関係者たちから「Netbookはタブレットデバイスに駆逐された」という意見を何度か聞いた。

 さらに、Microsoftが2012年に市場投入する予定の次期OS「Windows 8」がARMをサポートすることで、タブレットデバイスだけでなくノートPCのようなクラムシェルタイプで薄型のUltrabook対抗製品をARMベースで計画するベンダーも複数存在する。さらに、ARMベースのタブレットデバイスの低価格化も大きく進むといわれている。

 ASUSは、NVIDIAのクアッドコア(+省電力動作に特化した1基のコンパニオンコア)SoC「Tegra3」を搭載した7型ワイドディスプレイ搭載タブレットデバイス「Eee Pad MeMo ME370T」を249ドルで発売する計画を明らかにし、MarvellとOLPC(One Laptop Per Child)も、発展途上国の児童生徒向けに100ドル以下で提供を計画している7型ワイドタブレットデバイス「OLPC XO-3」を発表するなど、予想を上回るペースで低価格化が進みそうだ。

 これらARMを搭載する携帯デバイスが持つメリットは、ネットワークインフラが十分に整っていない発展途上国にも、携帯通信網を利用することでインターネット環境を提供できることだ。Qualcomm 会長 兼 CEOのポール・ジェイコブス氏は、「2015年にはスマートフォンの全出荷数のうち半数以上が発展途上国向けになるだろう」という予測を示している。スマートフォンやタブレットデバイスの市場は今後も急拡大を続け、高性能なSoCを投入することでスマートフォンやタブレットデバイスの高性能化を図り、それに伴って、コンピューティング性能も向上させていく意向だ。

Qualcamm 会長 兼 CEOのポール・ジェイコブス氏(写真=左)。2015年には、スマートフォンの全出荷数で、半数以上が発展途上国向けになる(写真=右)

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